アメリカの最も影響力の強いシンクタンクの一つに数えられるシンクタンクでの上級研究員として勤務して、日本に戻ってきて驚いたことは、日本のアメリカの捉え方である。なんというか、アメリカ政治の現場の前提と日本で語られるアメリカでは乖離があり過ぎるのだ。

私は、幸運なことに、日本人初めてどころか、イギリス人とカナダ人以外初めて、外国人としてアメリカ人の上級研究員と同じ待遇で勤務していたため、毎週の定例会議や安全保障などすべてのEメールリストに登録され、アメリカ人研究者だけが知り得る情報にを毎日、アクセスしていた。まさに、アメリカ人が考える政治の本当のところ、を毎日、見聞していた。

この3年間の経験をもとにして、「アメリカの今」を話すと「目からうろこ」「にわかには信じられない」「刺激的」という言葉が返ってきた。私にとっては共和党、民主党関係なくアメリカ人との会話では当然のことだっただけに、最初は、なぜ、そういう反応なのか、まったくわからず、気づくのに半年ほどかかってしまった。気が付いてみたら、なんと、アメリカに対する前提が全く違っていたのである。

私が驚いたのは、とりわけ以下の2つが日本の共通理解になっていたことである。

1つは、オバマ大統領は弱い大統領と理解されていることである。

2つ目は、アメリカは弱い国になったと理解されていることである。

オバマ大統領の業績を考えると、「弱い」という言葉は当てはまらない。国民皆保険の導入、同性婚賛成、キューバ、イランとの国交回復は、アメリカの前提を根本的に変えてしまう政策である。これだけ大きなことをやっているのだから、共和党からだけではなく味方の民主党からも批判を受けるのは当然のことといえる。共和党は、オバマ大統領がアメリカの価値を根本から変えてしまった業績に恐怖すら感じているほどである。レームダックの大統領が数十年と国交を断っていた国と国交回復はできないし、共和党がオバマ大統領に「権限乱用」と批判している。「権限乱用」という言葉はレームダックされた弱い大統領に向けられる言葉ではないどころか、余程、強力な相手に使う言葉である。 

弱い国、強い国の概念もアメリカでは変化している。冷戦の終焉と国ではなくイスラム過激暴力グループの台頭、アメリカが先導する技術の進歩、そしてシェール・ガス開発の成功と環境が大きく変化するに伴い、アメリカが目指す「強さ」の定義が変化している。日本には、「共和党が政権だったら今と違っていた」という期待があるようだが、共和党内部を観察すると、環境の変化に合わせて共和党も大きく変容している。「共和党だったら」と聞くたびに、未だ、アメリカに幻想を持っている人は多いんだな、と感じてしまうほど変化している。

2016年大統領選挙は、上記の前提で見ると理解しやすい。

もし、オバマ大統領がジョージ・W・ブッシュ大統領の二期目のように本当に人気がなかったら、同じ民主党のヒラリー・クリントンが大統領候補者として注目を集めることはない。しかし、彼女は、トップ走者として注目を集めている。オバマ大統領には文句はあっても、大きな流れはそのままで良いと思っている人が多いことを示している。

一方、共和党は未だ混乱する。候補者の乱立は、共和党が社会の流れを掴めていない結果である。しかも候補者の顔ぶれを見ると、冷戦時代の強いアメリカを志向する候補者は見られないどころか、いずれも国内政治趣向で、オバマ大統領やヒラリーのようにどこかマイノリティの要素を持っている(これについては前回の記事で書い)。共和党の候補者が、大統領になる道は、予備選挙と本選挙を通じて、共和党が目指す強いアメリカの再定義に成功することである。2016年大統領選挙で共和党が勝利すれば、それは今までの共和党ではなく、今の新生共和党のはずである。

こんなことを、今週の水曜日4月22日午後10時からのBS日テレの深層ニュースで話したいと思っています。ご意見があれば、コメントにお願いします。それまでに勉強します。