3月1日、ヘリテージ財団のデミント所長は、ウクライナについての声明を発表した。一言でまとめると、「今こそアメリカはグローバル・リーダーシップをとるときであり、脆弱な声明は、相手の攻撃性を高めることになるだけだ。それは歴史が証明している」という内容だ。

ヘリテージ財団は、知られたことだがレーガン政権とはつながりが深い。ヘリテージ財団は、冷戦以後、東から独立した国々の国つくりをサポートしてきた。競争に重きを置く小さな政府と、アメリカと関係を構築しての強い軍事は、それらの国々にとっては、一党独裁のソ連から決別できる道標であった。

そのため、現在でもヘリテージ財団内のロシア関連の研究には力をいれている。その思いを持ったアメリカ人も多く存在し、ロシア関連研究への寄付も圧倒的に多い。

デミント所長の声明にとどまることなく、ヘリテージ財団では、大雪で政府機関が閉鎖した翌日、マイナス8度という歴史的寒さにもかかわらず、3月4日〈火曜日〉、「ウクライナ:次の一手」というフォーラムを急きょ、開催した。

モデレーターは、国際部すべてを総括するジム・カラファノ、スピーカーは、カラファノの前任でレーガン政権時代の国務省の次官補をつとめたキム・ホルムス、そして軍事政策を専門とする外交政策研究所のクリストファー・グリフィンと、ブルッキングス研究所で安全保障を担当するマイケル・オハンロンだった。

ホルムスは、「現在のアメリカはイラクとアフガンのトラウマを抱えた時代であり、力の均衡に対する認識が定まっていない」との懸念を示し、今こそ、アメリカのグローバル・リーダーシップを示さなければならない」と主張した。ホルムスはまた、現在も安定のためにハード・パワーつまり軍事力が重要であることを示す事件だ、と語り、「オバマ政権は国際問題よりも国内問題に重きを置くが、そのことが世界にアメリカのリーダーシップについての誤解を与えている可能性がある」とし、ウクライナの対応で、アメリカはグローバル・リーダーシップについての認識を構築する必要があるとした。

続くグリフィンは、「アメリカ国民はアメリカ政府は、ロシアにウクライナに侵入することとを止めさせるべきで、そのためにはウクライナの国境の強化が必要だと考えている」とし、ヨーロッパと一緒にNATO軍を強化し、プーチン大統領にウクライナへの侵入は多大なコストがかかることを知らしめるべきだ」と語った。

さらに、グリフィンは、「将来的にはわが同盟国がこういう危機に陥る可能性がある。それを避けるためにも、オバマ大統領は、われわれは常に同盟国とともにおり、同盟国に脅威を与える存在には容赦はない、ということをしっかりと宣言すべきだ」と明言した。

ブルッキングス研究所のオハンロンは、「私は、オバマ政権の対応は、他の人が思っているほど悪くないと考えているが、それはオバマ政権が間違いを犯していないというわけではない。」とし、「アメリカは世界に関与していることをしっかりと知らしめるべきだ」とただした。その上で、オハンロンは、オバマ大統領は軍事力は世界に誇示するために使うのではなくウクライナの平和のためにつかわなければならない。」とした。

3人が共通して主張したことは、中国とイランのような国々が、今回のアメリカの対応を注意深く観察している、ということであった。アメリカがここでリーダーシップを見せなければ、こういった国々が隣国に手を広げていく可能性を暗に懸念していた。

ウクライナへのアメリカとヨーロッパの対応を見ると、冷戦の構図は残るがその対応は冷戦時代とは全く変わっている、ということをまざまざと感じる。

冷戦時代と異なり、経済関係が深まる中、制裁という言葉が軍事力に直結しなくなっている。アメリカとドイツが足並みを揃えてロシアに経済制裁を加えようという動きを目にすると、ロシアのマーケットは暴落した。それを受けるかのように、プーチン大統領は、軍事介入についての言葉を弱めている。

上記のフォーラムでも最後の質問はウクライナの経済の復興であった。ヘリテージ財団で自由経済指標の総責任者のキム・ホルムは、「ウクライナは自由経済になったといっても共産主義特有の汚職を根絶できていない。そこの改善が必要だ」とした。

ヘリテージ財団のウクライナに侵攻したロシアに対するアメリカ政府への政策提言のほとんどは経済制裁についてである。オバマ大統領との大きな違いは、NATOに対して「いつでも支援する準備はできている」というメッセージを強く送る、ということである。ヘリテージ財団のブライアン・スラッテリーは、ウクライナに面する黒海に駐留する米軍を強化するということが一番現実的だと説明してくれた。

ちなみに、これは、アメリカが軍事力に後ろ向きであること言うことを意味しているのではない、という。石油とガスの輸出国になったアメリカは新しい力を得たのである。そのため、アメリカが行う経済制裁は以前よりも力を持つようになったとも考えられるのだ。

3月5日のウォール・ストリート・ジャーナル、6日のニューヨークタイムズは、ロシアの輸出のほとんどがエネルギーであり、ウクライナへのガスの供給を止めたとしたら、ロシア経済もダメージを受け、アメリカが将来エネルギーの輸出を増やせる、と前向きに捉えている。

日本から見るとウクライナとロシアは遠い国のように思われるが、フォーラムでしばしば言及されたように、アメリカの対応を中国は注視している。

また、サイバーアタックも新しい事象である。現在、ウクライナではニュースサイトの書き換えを試みるハッカーが溢れ返っているとの報道がある。ただ、軍事施設やエネルギー施設に関わる決定的なサイバーアタックが見られていないことは救いである。

これからの安全保障は、軍事力、経済力、エネルギー力そしてサイバー力と、幅が広くならざるを得ない。

5月11日、私がモデレーターで「アジアの宇宙政策 日米協力」についての公開フォーラムをヘリテージで行います。

http://www.heritage.org/events/2014/03/space-policy