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渋谷で話題のフライ専門店『タルタルNUMA』 人気を集める3つの理由とは?

山路力也フードジャーナリスト
揚げたてのフライを食べられる新感覚のレストラン(画像:タルタルNUMA)。

渋谷センター街にオープンしたフライ専門店

2022年4月、渋谷センター街にオープンした『タルタルNUMA』。
2022年4月、渋谷センター街にオープンした『タルタルNUMA』。

 2022年4月、渋谷センター街のど真ん中に一軒のフライ専門店がオープンし、早くも話題を集めている。店の名前は『タルタルNUMA』(東京都渋谷区宇田川町30-1 蓬莱屋第三ビル2F)。完全予約制のとんかつの名店『とんかつ成蔵』店主、三谷成藏さんが料理を監修し、数々の人気レストランを手掛けている『株式会社Edge』が運営する。

 「弊社と三谷さんとの出会いは、今から4年前の『とんかつ成蔵』が高田馬場から南阿佐ヶ谷に移転をする前の頃でした。その後、何年かお店のほうに食事に行かせていただいておりましたが、昨年テレビ番組の企画で一緒に仕事をさせて頂く機会があり、それを機に『何か新しいことを一緒にできないか?』と考えるスタートになりました」(株式会社Edge 代表取締役 髙田 賢介さん)

揚げたてのフライを一品ずつ提供するスタイル

店内に入ると近未来的でスタイリッシュなカウンターがお出迎え。
店内に入ると近未来的でスタイリッシュなカウンターがお出迎え。

 2階にある店内に入ると、近未来的でスタイリッシュなカウンター席が目に飛び込んでくる。従来のとんかつ専門店などにはなかった光景だ。そして、カウンターの中には揚げ物をあげるための揚げ場があり、全ての席が揚げ場を囲むカウンター席になっている。

 オーダーは卓上に設置されたタブレットで行う。メニューは3種類のフライにおかわり自由の炊きたてご飯と味噌汁、キャベツ、ピクルスのセットとなっているが、天ぷら専門店のようにフライは揚げたてを一品ずつ提供する。さらにセットには含まれない食材のフライなどは追加でオーダーすることが出来る。

 従来のとんかつ専門店では、ミックスフライなど異なる食材のフライは盛り合わせで出てくることが一般的だ。しかし、フライは食材ごとに揚げる時間や温度も異なり、さらに時間が経てば美味しさが失われていく。そこで『タルタルNUMA』では、揚げたてを一品ずつ出していくスタイルにした。そのための全席揚げ場前のカウンター席になっているのだ。

『とんかつ成蔵』直伝のフワフワで真っ白な「粉雪衣」

驚くほどにフワフワで真っ白な衣「粉雪衣」は、『とんかつ成蔵』直伝の技によって生まれる。
驚くほどにフワフワで真っ白な衣「粉雪衣」は、『とんかつ成蔵』直伝の技によって生まれる。

 店舗やシステムなど、従来のとんかつ店などとは一線を画する新しいスタイルの店だが、驚くべき革新性はそのフライそのものにある。『タルタルNUMA』のフライはどれも色が白味がかっていて、驚くほどにフワフワとした柔らかな食感。これは料理を監修した『とんかつ成蔵』店主、三谷成藏さん直伝の「揚げ方」に秘密がある。

 『とんかつ成蔵』の代名詞とも言えるのが真っ白な衣の「白いとんかつ」。素材に対して低温でじっくりと火を入れる揚げ方は、従来の揚げ物とは全く違った『とんかつ成蔵』独自のアプローチ。今までになかった全く新しい「火入れ」のスタイルで揚げたフライを、より多くの人によりカジュアルに提供したいという思いから、今回の『タルタルNUMA』は生まれたのだ。

通常のフライとは違う新たな世界観のフライ

通常の茶色いフライと粉雪衣のフライはこれほどまでに色が違う(画像:タルタルNUMA)。
通常の茶色いフライと粉雪衣のフライはこれほどまでに色が違う(画像:タルタルNUMA)。

 「三谷さんの低温でじっくりと火を入れる揚げ方は、通常の揚げ物とは全く違った世界観の調理法です。私たちはこの粉雪のように白くサクッとした食感の衣のことを『粉雪衣』と名付けました。『とんかつ成蔵』の『粉雪衣』をまとったフライと、みんなが大好きなタルタルソースをフィーチャーして、ご飯と共に楽しめるお店があったら喜ばれるのではないかと発想し、今回『タルタルNUMA』をオープンいたしました。

 わずか14席の三谷さんの『とんかつ成蔵』は、月間にご案内できる人数が1000名様ほど。三谷さん自身も、もっとたくさんの方に自分のスタイルの料理をお楽しみ頂きたいという想いが強くあられ、ただオーナーシェフでお店にたっている以上なかなか一人で展開していくのは難しいという状況でした。

職人の勘でやっていたことを数値化する難しさ

とんかつの名店として知られる『とんかつ成蔵』。
とんかつの名店として知られる『とんかつ成蔵』。

 また当社としては、コロナ前はなるべく都心で大箱のハレの場でお越しいただく中高価格帯のレストランやバーを中心に展開をしてまいりました。しかしコロナ禍で2店舗の閉店をした経緯もあり、アフターコロナに合わせた展開の方向性として、日常の食の中でちょっと特別感を感じられる料理をメインにした新しい業態を創りたいと考えていたため、意気投合して今回のプロジェクトがスタートいたしました」(株式会社Edge 代表取締役 髙田 賢介さん)

 「『とんかつ成蔵』の特徴である『白いフライ』を沢山の皆様に召し上がっていただきたくて、今回のコラボ店舗を作らせていただきました。料理を再現する上で難しかったのは、白いフライを継続的に提供する事と、衣の剣立ちをさせるための衣の付け方、揚げる時間などをマニュアル化する所でした。僕自身マニュアル化をしたことがなく、これまでの経験から勘でやっていたので、それを数値化することが難しかったです」(とんかつ成蔵 店主 三谷成藏さん)

タルタルソースの沼にどっぷり溺れる白いフライ

すべて植物性の材料から作ったヴィーガンタルタルソースはたっぷりと(画像:タルタルNUMA)。
すべて植物性の材料から作ったヴィーガンタルタルソースはたっぷりと(画像:タルタルNUMA)。

 揚げたての白いフライに合わせるのは、グラスにたっぷりと入ったタルタルソース。一般的なフライに添えられてくるタルタルソースよりも明らかに量が多いが、これはたっぷりとタルタルソースを使って欲しいという思いから。オリジナルのタルタルソースの開発には時間がかかったという。

 「『とんかつ成蔵』とは別の業態になるように、とんかつ以外のフライをメインに立てるべく『揚げ物+タルタルソース』の組み合わせを提案する店にしました。フライにタルタルソースの組み合わせは皆さん大好きだと思うのですが、タルタルソースの量が少ないと感じているのではないかと思い、たっぷりのタルタルソースと一緒に揚げ物を楽しめるレストランにしようと思いました。

 さっぱりと楽しめる粉雪衣のフライにマッチするタルタルソースの開発は難航いたしました。せっかくフライが軽く仕上がっているのに対して、通常のタルタルソースではしつこすぎたのです。色々と試行錯誤をした結果『刻んだ卵を入れない方が良いのでは』と試したところ、しつこさがなくなり軽くなったので、ベースのマヨネーズも豆乳ベースでつくったヴィーガンマヨネーズにして、フライにピッタリと寄り添う、すべて植物性の材料から作ったオリジナルの『ヴィーガンタルタルソース』が完成しました。たっぷりの量をつけても食べ飽きない、美味しいタルタルソースを楽しんでいただければと思います」(株式会社Edge 代表取締役 髙田 賢介さん)

揚げたてのフライを提供出来るように全ての席が揚げ場に面したカウンター席に。
揚げたてのフライを提供出来るように全ての席が揚げ場に面したカウンター席に。

 「目の前で揚げたてのフライを一つずつ」「名店譲りのフワフワで真っ白な衣」「たっぷりつけても飽きないタルタルソース」。これまでの常識を覆す斬新なフライ専門店『タルタルNUMA』。オープンしてまだ2ヶ月ほどだが、早くもSNSを中心に話題を集めている。今回の渋谷での成功を足がかりに、今後は首都圏への出店や派生させた別ブランドの展開も視野に入れているという。

※写真は筆者によるものです(出典があるものを除く)。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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