今絶対に食べておくべき 福岡のうどん「個性派」3軒
福岡はうどん発祥の地だ
福岡はラーメンの街として知られているが、実はうどんの街でもある。博多祇園山笠発祥の寺としても知られる『承天寺(じょうてんじ)』(福岡市博多区)には、今も「饂飩蕎麦(うどんそば)発祥之地」の石碑がある。宋(現在の中国)に修行僧として渡った聖一国師が、1241(仁治2)年に那津(現在の博多港)に帰国した際に、教典と共に持ち帰った「水磨の図」に描かれていたのが「挽臼による製粉の技術」。これによりうどんや蕎麦などの食文化が大衆に広まったと言われている。
福岡のうどんは地元の人たちの生活に根付いた「日常食」。誰もが自分の好きな行きつけのうどん店を持っている。店それぞれに個性がある福岡のうどんではあるが、出汁の美味しさを味わうために他県のうどんと比べて「柔らかい」のが共通した特徴。また「ごぼ天(ごぼうの天ぷら)」や「丸天(魚の練り物を揚げたもの)」などの具材が乗るのも福岡ならでは。
その土地に長く根付いた食文化を、一つの料理を通じて体感する。これこそが地方での食べ歩きの醍醐味だ。今回は個性豊かな福岡のうどんを食べ歩く上で、全国的にも珍しい個性的なうどんを提供している店を3軒ご紹介したい。
創業70余年の老舗が作る鶏白湯うどん『因幡うどん』
創業は1951(昭和26)年と、70年以上もの歴史を持つ老舗うどん店が『因幡うどん』。因幡町(現在の天神一丁目付近)の商店街に店を構えたのが最初で、現在は市内外に9店舗を構えている。北海道羅臼産天然昆布や長崎島原産の煮干しなどの天然素材の出汁は、優しくもあり奥深い旨味を蓄えたもの。そこにもっちりとした食感を出すために足踏みした自家製麺を合わせている。
2017年にオープンした『因幡うどん 福岡空港店』(福岡市博多区大字下臼井767-1 福岡空港国内線ターミナルビル2F)限定で提供されているのが「博多鶏うどん」。水炊きのような鶏白湯に自慢の天然出汁をブレンドしたユニークな逸品。ラーメンのようにも見えるビジュアルながら、スープを啜れば鶏の味わいと共に広がる天然出汁の旨味。うどんと水炊きの華麗なる融合は、新たな福岡のうどんの潮流を生み出しそうな一杯だ。
豪快なカルビぶっかけ『えびすやうどん博多』
福岡県宮若市のうどん店『元祖えびすやうどん』の二代目が、母親のうどんを広めたいと、2013年に博多の地で独立開業したのが『えびすやうどん博多』(福岡市博多区住吉2-16-8)。福岡県産小麦を100%使用した自家製平打ち麺と、北海道羅臼産天然昆布と数種類の削り節で取った出汁で、開店前から行列が出来る人気店になっている。
数あるメニューの中でも圧倒的に人気を誇るのが「カルビぶっかけうどん」。福岡産醤油で甘辛く煮て、香ばしく炙った九州産国産牛の中落ちカルビがゴロゴロと入る贅沢な逸品。水でキュッと締めた自家製麺はもっちりしつつもどっしりとした食感。旨味と甘味がある国産牛カルビに、母直伝の深みあるカエシと福岡鞍手町産の濃厚な「味宝卵」とともに混ぜながら食べると、博多うどんの新境地を体感出来るはずだ。
こってり濃厚背脂醤油うどんの新店『肉ト麺 マクロ』
2022年1月にオープンしたばかりの話題店が『肉ト麺 マクロ』(福岡市中央区高砂2-8-7)。新潟出身の店主が作る燕三条背脂ラーメンが人気を集めたダイニングバー『macllo』が、移転を機にうどんと鉄板焼肉の店へと業態変更。大通り沿いに置かれたコンテナを利用したユニークな作りの店で再スタートを切ったが、その看板メニューがオリジナルの「背脂醤油うどん」だ。
うどんは新潟の近藤製麺にオーダーしたオリジナルのものを使用。ギュッと詰まったコシの強い食感のうどんに合わせるスープは、甘めの溜まり醤油がしっかりと効いた真っ黒なもの。ウルメイワシをベースに北海道利尻産昆布や魚節などの魚介スープと、老鶏と香味野菜のダブルスープ。鶏肉がゴロゴロと入り、仕上げには大量の背脂がガッツリと振りかけられ、柚子と岩海苔がアクセントになっている。インパクト十分の新感覚うどんが誕生した。
今回ご紹介した3軒は、いずれも他にはなかなかない個性的なうどんを出している店ばかり。「ごぼ天」「丸天」だけではない、新たな福岡のうどんの世界を是非とも体感して欲しい。
※写真は筆者によるものです。
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