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絶対に食べておかねばならない 福岡の長浜ラーメン「基本」3軒

山路力也フードジャーナリスト
魚市場で働く人たちのために生まれた「長浜ラーメン」。

博多ラーメンと長浜ラーメンは違う

「長浜ラーメン」は博多漁港に面する長浜で60年以上にわたり愛されてきた。
「長浜ラーメン」は博多漁港に面する長浜で60年以上にわたり愛されてきた。

 福岡のラーメンと聞いて誰もが思い浮かべるのが「博多ラーメン」だろう。白濁した豚骨スープに、硬めの細麺を替え玉で楽しむ。そして日本国内のみならず、海外にも博多ラーメン店が進出しており、海外ではラーメン=豚骨ラーメンというイメージが定着している。博多ラーメンは日本を代表するラーメンの一つと言って良いだろう。

 博多ラーメンが日本はもとより海外にも知られているのに対して、同じ福岡の豚骨ラーメンである「長浜ラーメン」はあまり知られていない。名前は知っていても博多ラーメンとの違いは分からないという人も多いのではないだろうか。都内などでは「博多長浜ラーメン」と看板を掲げている店もあり、博多ラーメンと長浜ラーメンは同じと思われている場合もある。

 しかし、博多ラーメンと長浜ラーメンは元来別のラーメンだ。長浜ラーメンとは博多漁港に面する長浜で生まれたラーメンのこと。長浜の魚市場で働く人たちの支持を受けて人気を集め、長浜には多くのラーメン屋台が軒を連ねるようになり、観光客なども足を運ぶようになった。

長浜ラーメンとしてのプライド

長浜以外の場所で「長浜ラーメン」を謳う店も数多い。
長浜以外の場所で「長浜ラーメン」を謳う店も数多い。

 競りなどで忙しく時間がない魚市場の人たちのために、素早く提供出来るように麺を細麺にして茹で時間を短縮したり、細麺だと伸びやすいため麺一玉の量は少なくしてお替わりが出来る「替玉」方式を考案するなど、長浜ラーメンから現在の博多ラーメンに取り入れられたスタイルも少なくない(関連記事:正しく理解しておきたい「長浜ラーメン」の基礎知識)。

 長浜ラーメンの特徴を博多ラーメンが取り入れたことにより、博多ラーメンと長浜ラーメンの区別は曖昧になっているが、店名やメニュー名に長浜ラーメンを謳う店は、長浜だけではなく福岡市内にも数多くある。博多ラーメンと長浜ラーメンの区別が曖昧になっているからこそ、長浜ラーメンを出しているという矜持を店名にも掲げているのだ。

 その土地に長く根付いた食文化を、一杯のラーメンを通じて体感する。これこそが地方でのラーメン食べ歩きの醍醐味だ。今回は博多ラーメンとは一味違った、長浜ラーメンを理解する上で、真っ先に食べておくべき老舗の3軒をご紹介しよう。

細麺と替え玉の発祥『元祖長浜屋』(1952年創業)

長浜ラーメン発祥「元祖長浜屋」。細麺、替玉などはこの店から始まったと言われている。
長浜ラーメン発祥「元祖長浜屋」。細麺、替玉などはこの店から始まったと言われている。

 細麺や替玉、替肉を生み出した長浜ラーメンの元祖が、1952(昭和27年)に創業した『元祖長浜屋』(福岡県福岡市中央区長浜2-5-25)である。地元福岡では「ガンソ」「ガンナガ」などと呼ばれて親しまれている、博多っ子にとってはソウルフードのような存在の店だ。屋台で創業して後に長浜で路面店を二店舗構えたが、2010年に長浜エリアの道路拡張に伴い本店と支店を統合して現在の店舗を開業した。

 あっさりとした豚骨スープは、朝でも夜中でも毎日でも食べられるライトな味わい。豚骨は濃厚というイメージを持つ人からすれば、驚くほどに軽くて食べやすいことに気づくだろう。注文時に麺の茹で加減や油の量などの好みを伝えることが出来る。「カタ」(麺硬め)「ベタナマ」(油多め麺超硬め)などの符丁が言えるようになれば一人前。

屋台の雰囲気を今も残す『長浜屋台 一心亭本店』(1945年創業)

屋台で創業して70余年の歴史を持つ老舗『一心亭本店』。ラーメン以外の屋台メニューも豊富。
屋台で創業して70余年の歴史を持つ老舗『一心亭本店』。ラーメン以外の屋台メニューも豊富。

 長浜の那の津通りに面した場所に店を構えているのが、1945(昭和20年)に創業した『長浜屋台 一心亭本店』(福岡市中央区長浜1-4-22)だ。前述した『元祖長浜屋』とともに、長年福岡の人たちに愛され続けている老舗。長浜屋台を店名に掲げ、ラーメン以外にも「おでん」「とん足」「酢もつ」などの屋台メニューも並ぶ。

 比較的ライトな味わいの長浜ラーメンの中でも、しっかりと乳化した濃度あるスープが特徴的で、豚頭や豚足を長時間しっかりと炊いた深みのある味わいのスープに、独特な食感を持つ低加水の細ストレート麺が合わせられている。屋台メニューとお酒を楽しみ、締めでラーメンをサッと食べるのが最高の楽しみ方。

居酒屋のように楽しめる店『やまちゃん』(1986年創業)

地元客から観光客、外国人客まで幅広い客層に愛される『やまちゃん 天神店』。
地元客から観光客、外国人客まで幅広い客層に愛される『やまちゃん 天神店』。

 屋台での創業は1986(昭和61)年と、35年にわたり愛されている店が『長浜屋台 やまちゃん』だ。屋台は2014年に惜しまれつつも閉店してしまったが、1992年に長浜から程近い舞鶴に開業した「天神店」(福岡県福岡市中央区舞鶴1-4-31)や、2011年に開業した「中洲店」(福岡県福岡市博多区中洲2-4-18)で、屋台と変わらぬ味を楽しむことが出来る。

 長浜の屋台ラーメンらしい、飽きの来ない豚骨スープの味わい。屋台の雰囲気を残すカウンターには鉄板もあり、ラーメン以外のメニューも豊富に揃う。福岡ならではの串焼き「豚バラ」や、鉄板を使った炒め物などを色々と楽しんだら、時にはラーメンにまで辿り着けないことも。2002年には東京銀座にも進出(銀座店:東京都中央区銀座3-11-10)しているので、東京でも伝統の味を楽しむことが出来る。

 今回ご紹介した店は、いずれも長浜ラーメンを語る上で欠かすことが出来ない店ばかり。福岡でラーメンの食べ歩きをする時には、まずこの3軒を食べて長浜ラーメンのアウトラインや博多ラーメンとの違いを体感して欲しい。

※写真は筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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