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「温かいラーメンを食べて欲しい」 熱海のラーメン店主の土石流災害への想い

山路力也フードジャーナリスト
『麺匠うえ田』(熱海市)ではラーメンなどの無料提供を開始した(写真:麺匠うえ田)

コロナと災害で大打撃を受けている熱海

熱海の温泉街で人気のラーメン店『麺匠 うえ田』(熱海市)。
熱海の温泉街で人気のラーメン店『麺匠 うえ田』(熱海市)。

 記録的な豪雨の影響により、静岡県熱海市で3日に大規模な土石流災害が発生、熱海市民をはじめ多くの人が被害を受けている。熱海の温泉街でラーメン店『麺匠 うえ田』(静岡県熱海市渚町8-1)を営む郷家光広さんもその一人だ。

 「熱海の温泉街はコロナの影響と今回の災害で相当なダメージを受けています。駅前アーケードや熱海銀座などは閑散としており、観光客の方々はほとんどいません。ニューフジヤホテルさんが被災者の方達の避難所になっています。私の場合は幸いにも店舗や自宅は無事でしたが、車が二台廃車になりました」(麺匠 うえ田 店主 郷家光広さん)

 住む家を流されたり、避難勧告によって家に戻れない人も少なくない。ボランティアなどで熱海に入っている人もいる。そんな人たちのためにラーメンを振る舞いたい。郷家さんは即断して、4日から熱海在住の人や災害支援で熱海に来られている人たちを対象に、店舗にてラーメンやご飯物を無料で提供している。

東日本大震災での恩返しをしたい

被災者の方達へのメッセージ(提供:麺匠 うえ田)
被災者の方達へのメッセージ(提供:麺匠 うえ田)

 ラーメン、つけ麺類はトッピングもOK。餃子やご飯物も注文出来る。熱海在住の人や災害支援で熱海に来られている人たちが対象となるが、静岡県内でも沼津市など被害が大きな地域の人たちには提供したいと語る郷家さん。なぜ今回、このような行動に出たのだろうか。

 「私の故郷は宮城県なのですが、2011年の東日本大震災で身内も多数の被害を受けました。その時、全国各地の皆様に助けて頂いて人の暖かさに触れ、そこから立ち上がって今があります。あれから10年が経った故郷はまだ復興途中ですが、その御恩を返すべくこれまで全国で災害がある時には出来る範囲内ではありますが、色々と支援活動を続けさせて頂いてきました。スタッフたちもその思いや活動を知っていますので、今回熱海が災害となった時に当然のごとく『熱海の皆さんに召し上がって頂こう!』ということになりました」(郷家さん)

「遠慮なんていりません」

言い出しにくい人のために店頭に置かれた手作りのプレート(提供:麺匠 うえ田)
言い出しにくい人のために店頭に置かれた手作りのプレート(提供:麺匠 うえ田)

 「スタッフに言い出しにくいこともあるかと思い、店頭にオーダー用のプレートを作りました。またウェブ上に『熱海土砂災害ラーメン無料クーポン』も設置しましたので、熱海の方には遠慮なく使って頂けたらと思っています」(郷家さん)

 利用された地元の人たちからは激励や感謝の言葉をもらったり、募金や差し入れなども届けられているという。また、全国各地のラーメン店や業者などからも支援や協力の申し出があり、今後は地元の災害支援本部や自治体と相談しながら炊き出しなども考えているという。

 「被災者の皆様、ご家族の皆様。心よりお見舞い申し上げます。わずかばかりではありますが、もし機会がありましたら是非食べにいらして下さい。遠慮なんていりません。よろしくお願いします」(郷家さん)

※写真は筆者の撮影によるものです(出典があるものを除く)。

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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