緊急事態宣言再発令から3週間 飲食店経営者のリアルな叫び

緊急事態宣言に基づく緊急事態措置で飲食店は窮地に追い込まれている

緊急事態宣言再発出から3週間

 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、二度目となる「緊急事態宣言」が発出されてから3週間が経った。新年早々の1月8日から埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の1都3県で、14日からは栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県の7府県が対象となり、2月7日まで11都府県で緊急事態宣言下による緊急事態措置が取られているが、7日で解除になるかどうかは不透明だ(参考資料:内閣官房「新型コロナウイルス感染症対策ホームページ」)。

 昨年4月に続く二度目の緊急事態宣言。特に今回は「飲食を伴うものを中心として対策を講じ」るとし、「飲食につながる人の流れを制限する、飲食店に対する営業時間短縮要請」がなされている。具体的には「飲食店やカラオケボックスなどへ、営業時間の短縮(営業は20時まで、酒類の提供は11時から19時まで)」が要請され、原則として要請に応じた飲食店などには1日6万円の協力金が支払われる。

緊急事態宣言下においても通常営業を続けている『ラ・ボエム白金店』(白金台)
緊急事態宣言下においても通常営業を続けている『ラ・ボエム白金店』(白金台)

 秋口から上向きになっていた飲食業界だったが、感染拡大が収まらずに年始の書き入れ時に再度の緊急事態宣言の発出で、再び窮地に追い込まれている。そんな中、『ラ・ボエム』や『権八』『モンスーンカフェ』などのレストラン約40店舗を運営している『株式会社グローバルダイニング』では、7日に代表の長谷川耕造氏が自社ホームページ上で「飲食で19時までの飲食の提供、20時までの営業では事業の維持、雇用の維持は無理」とした上で、時短営業要請には現時点では応じないという姿勢を明らかにした(参考資料:株式会社グローバルダイニングホームページ)。

 今回のコロナ禍によって、飲食業界では閉店や廃業が相次ぎ、雇用も守れなくなっているのは事実。さらに食材の生産者をはじめとする取引業者や流通業者にもダメージを与えており、その経済的損失は膨大だ。今、飲食店経営者はどういう思いで日々の営業を行っているのか、リアルな声を聞いてみた。

『Zect byLm』:オフィス街という有利な場所が一転不利な場所へ

フィレンツェ料理のトラットリア『ZeCT byLm』(小川町)は移転も視野に入れている
フィレンツェ料理のトラットリア『ZeCT byLm』(小川町)は移転も視野に入れている

 東京神田小川町でイタリアン『ZeCT byLm』(東京都千代田区神田小川町1-7)を営む藤枝勇さんは、国や自治体の対応について一定の評価をした上でこう語る。

「現時点では一番数の多い小規模な個人店への救済にはなっているかと思いますが、今後『家賃支援給付金』や『雇用調整助成金』がどうなるのかが気になります。当店の場合、政府からの給付金と東京都からの協力金合わせて昨年末でちょうど無くなってしまいました」

 協力金など飲食店への救済措置については、ありがたいと思う反面で複雑な思いもあるという。

「飲食ばかり優遇されているという報道が大きくなってきました。暴利を貪る店が協力金で『焼け太り』しているのは、同業から見ても気持ち良いものではありませんが、一般的には利益率が低いのが飲食業界です。来店されるお客様で誤解されていそうな方には、誠実に説明していこうと思っています。政府にはその場凌ぎではなく、もっと長い目で『持続化給付金』のような政策をとって貰いたいです」

 現在は時短要請に応じつつ、3名からの貸し切り営業を行うなど不特定多数の客が集まらない工夫や、新たにテイクアウト用のデザートや弁当などを販売しながら営業を続けているが、不安も隠せない。

「小川町というオフィス街は平日に有利な場所だったのですが、テレワークなどによって人がいなくなり一転して不利な立地となってしまいました。今後はランニングコストの少ない場所への移転や業態変更なども考えています」

『CITTA' ALTA』:次世代に外食文化を残していけるように

イタリアンの枠を超えた『CITTA' ALTA』(春日)は外食文化の衰退を憂慮する
イタリアンの枠を超えた『CITTA' ALTA』(春日)は外食文化の衰退を憂慮する

 東京小石川の住宅街で創作イタリアン『CITTA' ALTA』(東京都文京区小石川3-1-24)を営む茂呂岳夫さんは、時短営業による問題点を語る。

「当店は通常ですと19:00に一斉スタートでコース料理をお出ししているのですが、時短営業要請に従い閉店時間を20:00に変更したため、17:30に前倒ししてスタートしています。このため特に平日の予約が激減し、平日に比べ予約が入りやすい祝祭日も平時の2/3程度の席数で営業していることもあり、お客様の人数は非常に少なくなりました。個人的には横並びに20:00で閉店にするよりは、平米あたりの滞在可能人数を制限する方が効率が良いように感じますが、全店舗をコントロールするのは非常に難しいので感染拡大防止のための手段としてある程度は理解できます。しかし、時間を変更しての営業はオペレーション的にも大変で、来店いただいたお客様にも時間を気にしながら滞在していただくことになってしまい、心苦しい思いもあります」

 国や都の対応については複雑な思いを持っている。

「今回の緊急事態宣言が飲食店への対策が重点的になっている事に関しては、明確なエビデンスが無い中で特定業種のみ実質的な営業制限をかける事に納得がいかない部分はあります。一言に飲食店といっても様々な営業形態があり、今回の対策により受ける影響は店舗よって大きな違いがあると思います。特に今回の緊急事態宣言中に積極的疫学調査の縮小が指示されたことは、保健所の機能を保つためという理由があるにせよ、飲食店への対策を重点的に行なった施策への結果を出すための手段ではないかとの疑問を抱いてしまいます。しかし、補償に関しては特に私のような個人経営の小規模飲食店にとっては大変ありがたいものであり、協力金の一律給付による不公平感などの問題はあると思いますが、時短営業などを行うハードルは非常に下がりました」

 協力金などにより個人店は潤っているのではないか、という世論やメディアの論調に対しても伝えたい思いがあるという。

「メディアでは個人経営の飲食店が協力金等により不相応な利益を得ているような印象が持たれる報道がなされています。休業中の人件費が0、諸経費が1/10といった極めて稀な店舗を何故か2店舗合算した協力金を収入として計上し『1ヶ月に300万円以上の純利益』となる事例として挙げる等、恣意的な報道も見られます。またネット上では『小さい店は喜んで店を閉めてる』『非課税の協力金で儲けている』といった偏見や誤解のあるコメントが散見されます。確かに店舗の規模によっては協力金等により、通常時より利益があがった月がある場合もあるかもしれません、しかしながら、これは限られた期間における事であり、今までそしてこれからの売り上げ減少に頭を悩ませ、工夫し努力をしているお店がほとんどで、喜んでいるということはないでしょう。また、補助金や協力金などは『雑所得』にあたり課税対象です」

 茂呂さんは次世代の外食文化を担う子供たちへの影響を懸念している。

「私自身、このような状況で子供を連れて外食する機会も減っておりますが、ほとんどのご家庭でも外出の機会自体が減っていると思います。子供の頃、外食に出かけるのは特別なイベントで、私が飲食店を続ける原動力にもなっています。お客様との会話でも昔食べに行ったお店の良い思い出を伺うことも多いです。飲食店に限ったことではありませんが、不要不急とされる業界全体で収束を願いながらも取り組むことは多いと思いますが、まずは個々が事業を継続することが大袈裟に言えば『次世代への文化の継承』に繋がると考えて頑張ります」

『麺や ふくろう』:何が最善策なのか「やるも地獄やらぬも地獄」

自家製麺のラーメンが評判の『麺や ふくろう』(馬橋)は新たなビジネスモデルを模索する
自家製麺のラーメンが評判の『麺や ふくろう』(馬橋)は新たなビジネスモデルを模索する

 千葉松戸でラーメン店『麺や ふくろう』(千葉県松戸市西馬橋1-5-10)を営む青木忍さんは、町全体の落ち込み具合をこう語る。

「昨年11月に古参のスナックでクラスターが発生して以来、当店に限らず町全体が落ち込み続けており、さらに今回の第3波と緊急事態宣言で相当落ち込んでいる状況です。宣言が発出されて以降は外を歩いている人の量も減りましたし、20時以降はほとんどの店が閉まるためゴーストタウンに見えてしまうほどです」

 飲食店への重点的な施策については疑問を感じている。

「すでに感染対策を講じてお客様にも協力をして頂けている中で、実際飲食店での感染率はそこまで高いとは思っていません。確かに大きな括りでは飲食店での感染が発生しているのかもしれませんが、実際に発生している場所のしっかりとした情報収集とターゲティングをきっちりと絞れれば、ここまで大きな要請をする必要性はなかったのではないかと思います。『ランチタイムも危険』という発言がありましたが、感染リスクに時間帯が関係ないというのは理解していますし、その上で時短営業のままでは商売にならないとオープン時間を前倒しして、なんとか店を存続出来るようにしていますが、そういう発言をされてしまってはその努力が報われないと感じますし、それを言うなら最初から時短ではなく休業要請のみにするべきだと強く感じました」

 今回のコロナ禍によって「人との繋がりを考えていく大きな機会となった」と語る青木さんだが、今後どうしていくかは白紙状態だという。

「今のところ時短営業をしていますが、どこまで来店を望めるかは難しいところです。衛生的なリスクを考えてしまうとテイクアウトやデリバリーなどには手を出せない為、新たなビジネスモデルなどを確立していかなければとあれこれ思案を巡らせている所です。今回の新型コロナウイルスは、新しい生活様式の提唱のみならず、我々飲食業界にとってもテイクアウトや通販、デリバリーなどの新たな販路拡大への革新的な要素もあるとは思っています。しかしながら、個人店レベルでやれる事は限られますし、新たな販路拡大をするという事はそこへ資金も投入しなくてはならず、投入するという事はそれを回収出来るという明確な判断が出来なければ安易に手は出せません。どれが最善なのかと判断していくのは正直難しく、やるも地獄やらないも地獄と正直思わざるを得ません」

『焼とりの八兵衛』:人の心が変われば商売も変わる

福岡と東京で店舗を展開する『焼とりの八兵衛』は2年後の市場を見据えている
福岡と東京で店舗を展開する『焼とりの八兵衛』は2年後の市場を見据えている

 福岡、東京、ハワイで店舗展開している『焼とりの八兵衛』(運営:株式会社 hachibei crew 本社:福岡県糸島市)では、前回の緊急事態宣言時に全店舗休業し、今回も東京は休業して福岡の店舗は20時までの時短営業の対応をとっている。代表取締役の八島且典さんは休業した理由を「今ではなく2年後を見据え」てのことだと語る。

「借入の返済も始まり、家賃や税金など色々なことが変わっていくでしょう。その中で一番変わるのは『人の心』です。人の心が変われば商売も変わります。今何かを新しく始めるのではなく、その時の状況に応じて構築していかなければ危険です。前回の緊急事態宣言の時には休業して、スタッフを鍛えることに重点をおいて教育セミナーなどをたくさんやりました。今回も休業中に東京のスタッフを鍛えます。全ては2年後を考えています」

『KINTAN』:従来の外食のビジネスモデルが変わった

焼肉をはじめステーキやしゃぶしゃぶなどを手掛ける『KINTAN』は中食へも積極的に進出を開始した
焼肉をはじめステーキやしゃぶしゃぶなどを手掛ける『KINTAN』は中食へも積極的に進出を開始した

 東京、横浜で焼肉を中心にステーキ、しゃぶしゃぶ、肉割烹など店舗ごとに異なるコンセプトやブランドを掲げて19店舗展開する『KINTAN』(運営:株式会社カルネヴァーレ 本社:東京都目黒区中目黒)も、時短営業と休業で対応する。代表取締役の鳴坂竜一さんは当初通常営業を継続するつもりでいたが方針を一転させた。

「通常営業を継続する方針は、社員とお客様から感染者が一人も出ていないという事実に依拠していました。しかし、年明けに店舗社員から陽性反応が出ました。感染経路は不明ですが、社員がコロナウイルスに感染した事実を重く受け止めました。いかなる理由であれ、自社の社員から感染者が出た以上は、感染拡大防止に協力するのが筋だと考えて、当初の方針を一転させる決断をしました」

 鳴坂さんは政府や自治体の対応に対しては一定の評価をしつつ、不公平感も覚えていると語る。

「飲食以外の業態や業種も大変苦しい中で、十分な補償だと私は考えます。特に『雇用調整助成金』や危機関連補償は活用させて頂き、困難な時期を何とか乗り越えることが出来ました。しかし弊社は税務関連法令等を遵守し、適切な納税義務を履行しており、本来的に税金が補償に使われるならば、納税額に応じた制度にすべきと思います。ただ、納税を正しくしているメリットとしては赤字決算だと税金還付があり、これは大いに助かります」

 『KINTAN』ではテイクアウトやオンラインストアでの販売にいち早く注力してきた。今回のコロナウイルスによって従来の外食のビジネスモデルが変わったと鳴坂さんは指摘する。

「コロナの影響で『顧客が来店してこそ価値が生まれる』という、従来の外食のビジネスモデルが変わりました。きちんと顧客のニーズを見極めて体験価値を届ける。同時に選ばれるお店、ブランドであり続けるための工夫がこれからはより一層必要不可欠だと感じています。昨年12月はテイクアウトだけで月商1800万円、オンラインで月商650万円と、1つの事業として成長しました。今年は外食から中食に進出して、駅ナカや百貨店などにサテライト店舗を積極的に展開していきます」

※写真は筆者によるものです。

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