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超破格で規格外!前代未聞の究極ラーメンに博多が沸いた日

山路力也フードジャーナリスト
一日限りで提供された「佐賀牛と黒トリュフのラーメン」

「豚骨カプチーノ」の人気店が創業8周年イベントを開催

今月創業8周年を迎えた『博多一双 博多駅東本店』(福岡市博多区)。「豚骨カプチーノ」が人気だ。
今月創業8周年を迎えた『博多一双 博多駅東本店』(福岡市博多区)。「豚骨カプチーノ」が人気だ。

 豚骨ラーメンの聖地、福岡博多で人気を集めているラーメン店『博多一双』(運営:株式会社EVORISE/代表取締役:山田晶仁)が、11月27日に創業8周年を迎えた。2012年、博多駅東に創業以来、地に足をつけた着実な店舗展開を進め、現在福岡市内に3店舗を運営。濃厚な豚骨スープの上に脂泡を浮かべた個性的な「豚骨カプチーノ」と呼ばれるラーメンが評判を集め、どの店も連日行列を作る人気店となっている。

 「これまで周年だからと特別なことをしないで来たのですが、ラーメン職人として新しいものも作ってみたいと思い、『一日だけ俺のやりたいことをやらせて欲しい』と社員たちにわがままを言って、去年より周年のタイミングでイベントをやらせて頂いています。日頃のお客様への感謝の気持ちを形にすべく、原価を気にせずに一双らしく楽しくて振り切ったラーメンとイベントにしています。」(博多一双店主 山田晶仁さん)

昨年11月の創業7周年イベントで提供された「松茸ラーメン」
昨年11月の創業7周年イベントで提供された「松茸ラーメン」

 2019年11月には、創業7周年を記念したイベントを初めて開催。豚骨を封印して作り上げた「松茸ラーメン」は、大量の松茸を刻んでミキサーにかけてペーストにして鶏清湯とブレンドしたスープに特注麺を合わせたもの。さらにアワビを使った炊き込みご飯と、自家製のシャーベットもセットにして日本酒やドリンクも飲み放題。そのラーメンのクオリティもさることながら、これだけの高価な食材を使って品数も出して一人2,000円という価格設定はラーメンファンを歓喜させ、同業者を唸らせた。

原価無視、採算度外視で作り上げた「感謝の一杯」再び

『博多一双』創業8周年イベントで提供された「佐賀牛と黒トリュフのラーメン」。
『博多一双』創業8周年イベントで提供された「佐賀牛と黒トリュフのラーメン」。

 そして一年後の2020年11月28日、『博多一双』創業8周年を記念して、一日限りの周年イベントが再び開催された。今年は「佐賀牛と黒トリュフのラーメン」に「ポルチーニ茸のご飯」「季節のデザート」さらに振る舞い酒として京都伏見の『澤屋まつもとultra』をはじめ、生ビールやハイボールも飲み放題で価格は昨年と同じ2,000円。今年も原価無視、採算度外視の周年イベントとなった。前売チケットは即日完売と今年もプラチナチケットとなった。

 イベントだけで使われる金の丼に入ったラーメンからは、黒トリュフの豊潤な香りが立ち上がる。そして丼の真ん中には佐賀牛が折り重なるように積み上げられ、スープの表面には削りたての黒トリュフがたっぷりと浮いている。「和牛のチャーシュー麺をイメージしました」(山田さん)と語るだけあり、一杯のラーメンに乗せられている肉のボリュームはなんと100g。厳選した佐賀牛の赤身肉を低温調理したものを高温の油で「揚げ焼き」にすることで、余計な水分が飛ばされて旨味がギュッと凝縮され閉じ込められている。

 さらに豚鶏ベースの清湯スープの上には佐賀牛と黒トリュフの油が浮かべられることで、旨味と香りが強調され味覚だけでなく嗅覚も刺激した。福岡の人気製麺所『製麺屋慶史』がこのラーメンだけのために作り上げたオリジナル細麺は、しなやかさと歯応えがあり存在感も十分。また「ポルチーニ茸のご飯」はしっかりソテーして旨味を閉じ込めたポルチーニがたっぷり入り、ラーメンのスープを入れればお茶漬け感覚で二度楽しめた。「季節のデザート」は安納芋と和栗の優しい甘さがインパクトのあるラーメンの締めにピッタリ合っていた。

作り手も食べ手も楽しんだ「夢のラーメン」

この日のイベント用のユニフォームでお客さんを出迎える山田晶仁さん(左)と弟の章仁さん。
この日のイベント用のユニフォームでお客さんを出迎える山田晶仁さん(左)と弟の章仁さん。

 一般的にラーメンの原価率は20%〜30%程度と言われているが、このラーメンは黒トリュフだけで軽く一杯あたり2,000円は超えるという。まさに原価無視、採算度外視、常識外れづくめのイベント。山田さんは「今日来られないお客様から『もう一日やって欲しい』と言われたのですが、赤字がとんでもなくなってしまうので一日しか出来ません」と笑う。

 原価を気にせず美味しさを追求したラーメン。それは作り手にとっても食べ手にとっても「夢のラーメン」だ。このイベントでプラチナチケットを手に入れることが出来たのは約150人。その誰もがスープを飲み干して笑顔になって店を後にした。

 「今年はコロナ禍がある中でもお客様には足を運んで頂き、今日のイベントも開催することが出来て感謝しかありません。いつも応援して頂いてる皆様に感謝の気持ちを込めた精一杯のおもてなしがしたいという思いでこのイベントを開きました。また9周年に向けて『最強のご当地ラーメン』である博多ラーメン、豚骨ラーメンを極めていきたいと思います」(山田さん)

※写真は全て筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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