4つの柱がある「Go Toキャンペーン」

 新型コロナウイルス感染症の影響によって、観光客やオフィスワーカーの移動が激減し、飲食業や観光業、エンターテインメント業などが多大な影響を受けている。そんな業界を救うための「需要喚起」を目的とした官民一体の施策「Go Toキャンペーン」が、7月22日よりスタートしている。

 政府による「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の一環として、2020年度補正予算案の中から1兆6794億円が旅行、飲食、イベントなどの需要喚起事業として「Go Toキャンペーン」に充てられることになっている。具体的には「Go Toトラベル」(観光)、「Go Toイート」(飲食)、「Go Toイベント」(エンターテインメント)、「Go To商店街」(商店街)の4施策が実施される予定だ。

 実施時期の前倒しや巨額な業務委託費の問題などで「Go Toトラベル」に注目が集まっているが、飲食業界が注目しているのが農林水産省が主導する「Go Toイート」キャンペーンだ。感染予防対策に取り組んでいる飲食店と、食材を供給する農林漁業者を応援することが目的となっている(参考資料:農林水産省HP)。

「Go Toイート」キャンペーンとは

プレミアム付食事券やポイント付与で消費行動を喚起する(画像:農林水産省HP)
プレミアム付食事券やポイント付与で消費行動を喚起する(画像:農林水産省HP)

 次に予定されている「Go Toイート」キャンペーンは「プレミアム付き食事券の発行」や「オンライン予約者へのポイント還元」を支援することで、感染予防対策に積極的に取り組んでいる飲食店の需要を喚起し、食材を供給する農林漁業者も同時に支援することを主眼とした施策だ。

 「Go Toキャンペーン」全体の事業規模1兆6794億円のうち、「Go To Eatキャンペーン」に振り分けられているのは約2,003億円。「プレミアム付き食事券事業」に767億円、「オンライン飲食予約事業」に767億円、業務委託費が上限469億円ということになっている。具体的には事前に登録した店舗で利用できる25%のプレミアムがついた食事券(10,000円で12,500円分など)の発行や、グルメサイトなどで予約した場合に1人あたり最大1,000円分(ディナー時。ランチタイムは500円分まで)がポイントにて還元される仕組みになっている。

 気になるキャンペーンのスタート時期だが、現在事業者の公募期間中(8月7日まで)で、契約が月末と予定されているため早くて8月末、実際には9月からのスタートとなるだろう。食事券の販売などは準備が整った地域から始まり、オンライン予約によるポイント付与は「状況を踏まえて開始時期を検討」とされている(農林水産省:7月21日現在)。

飲食店へのメリット供与は当分先になる

 飲食店としては、このキャンペーンに参加することで来客数の増加による売り上げ増が見込まれるが、「新型コロナウイルスの感染予防対策に取り組む事業者を支援する」という目的があることから、業界ガイドラインに沿った対策を施した上で、その取り組み内容を掲示することがキャンペーン参加の条件となっている。しかも取りまとめの事業者が確定していない現段階では、飲食店はキャンペーンへの参加表明すら出来る状況にない。

 21日から始まっている事業者(オンライン飲食予約サイト事業者、食事券発行事業者、実績確認事業者等)の公募だが、当初の予定は17日であったにも関わらず、都内などの感染者増加によって公募開始が遅れた経緯がある。参加を希望する飲食店は、この公募で決まった事業者に登録して参加する形となっているが、その仕組みが周知されているとは言い難い。

 本来この「Go Toキャンペーン」は「感染症流行収束後」に実施される施策だったはずだが、収束が見込めない現状において半年間もの長期にわたる消費行動の冷え込みによる各業界の救済という喫緊の課題を解決するべく、出来るところからスタートしたというのが実情だろう。すでにスタートしている「Go Toトラベル」に関しても、22日からスタートしているのは「旅行、宿泊代金の支援」に限定されており、地域共通クーポンの配布はまだ始まっていない。しかも東京を目的地としたり、東京からの発着に関しては支援の対象外だ。

 この「Go Toトラベル」では、9月に予定されているクーポン配布までは、旅行代金の2分の1に相当する額のうちの7割分(旅行代金の最大35%)だけが支援される形であり、その旅行先にある飲食店で使えるクーポンの恩恵はいまだ受けられていない。飲食業にとっては現段階では何もメリットが無い状態のままなのが「Go Toキャンペーン」の実態なのだ。

疲弊した飲食店が耐えられるのか

 この一連の「Go Toキャンペーン」は、これまでにない予算規模の取り組みであり、事業者選定を含めて時間がかかることは止むを得ない部分も多々あるだろう。しかしながら、キャッシュフローがそもそも少ない飲食業にとって、この数ヶ月のタイムラグは死活問題だ。キャンペーンの恩恵を受ける前に資金がショートして廃業に追い込まれる店が今後続々と出てくることは想像に難くない。

 旅行などの移動を奨励するキャンペーンと、移動を制限する収束戦略という相反する二つの施策の狭間で揺れるのは、私たち消費者であり飲食店を営む事業者だ。ここ最近の感染者数増加によって、再び営業自粛要請を出すという動きもニュースで散見されはじめている。旅行業や飲食業などを対象にした時限的な軽減税率の導入など、シンプルでスピーディーな施策も併用して経済の回復スピードを早めていただきたいと切に願う。このままでは疲弊した飲食店が持たない。