【緊急提言】『緊急事態宣言』全面解除を受けて、飲食店はどう変わっていくべきなのか?

「新しい生活様式」のすべてが定着するわけではない(写真:アフロ)

『緊急事態宣言』が全面解除

 政府は5月25日、新型コロナウイルスに関する『緊急事態宣言』について、宣言を継続中だった東京・神奈川・埼玉・千葉・北海道を対象から外して全都道府県での解除を発表し、4月7日の発令から約二ヵ月の自粛期間はようやく全面解除となった。

 これに伴い、各地方自治体は飲食店への営業自粛要請を段階的に解除。例えば東京都ではモニタリング指標をもとに4段階の緩和ステップが設定されている。主に酒類を販売出来る時間や深夜営業時間の拡大緩和がポイントになっている。

 またソーシャルディスタンスを始めとする、いわゆる「三密」対策や、マスク着用、アルコール消毒などの施策は、政府が提言している「新しい生活様式」に沿った形での営業が求められる事となる。

 2ヶ月近い長期間の外出自粛と、自治体からの営業時間短縮や休業の要請もあり、飲食業界はこれまでにない大打撃を受けている。資金がショートした個人店の廃業も相次ぎ、大手ナショナルチェーンのレストランや居酒屋も大量閉店を余儀なくされた。

 今の時代、刻一刻と状況は変わる。緊急事態宣言が39県で解除された段階での見解として、これからの時代に即した新しいスタイルの飲食店の形に変化すべき、という意見を寄稿させて頂いたが(参考記事:【緊急提言】『緊急事態宣言』解除後の新たな時代に求められる飲食店の姿とは?)、基本的な考え方は変わらないものの、飲食業においては想像していたほどの変革は起こらないのではないかとも感じている。

便利なものは残り不便なものは廃れる

 「コロナ前とコロナ後で世界が変わる」とは、良く言われる言葉だ。もちろん時代は常に変化しており、今回のコロナショックによって私たちの意識や生活様式が変化する事は間違いないが、当初想像していたほど飲食における変化は少ないのではないかと予想している。端的に言えば、テイクアウトやデリバリーが主流になることも無ければ、ソーシャルディスタンスが定着することも無い。遅かれ早かれいつしか以前のような形に戻るはずだ。

 正直なところ、緊急事態宣言下においても、解除した今であっても、コロナ前とほぼ変わらない形で営業している店がある。そしてそういうお店に関しては、客足の影響もそれほどは酷くない。実際に足を運んでみると、予約の取れない人気店は変わらず混んでいるし、ロードサイドのラーメン店などは行列が出来ていたりもする。むしろ、今回ダメージを受けている店のほとんどは、自治体の自粛要請に従って営業時間を短縮したり、席を間引いて客席を減らしている店だ。

 「正直者はバカを見る」という形になる事は決して望ましいことではなく、正直者がバカを見ないように、自粛を要請した側が手厚いサポートをすべきだと思うが、ここで注目したいのは店側ではなく客側の意識である。三密対策は感染拡大防止の観点のみならず、客に安心感を与えるポイントになると思っていたが、そこを気にしない客も一定数いることを、通常と同じように営業している店の賑わいが証明した。今回の事で私たちの衛生意識が一気に高まり生活様式も変わると予想していたが、どうやらそこまで多くの人ではないようだ。

 当然ながら、人間は快適さや便利な変化にはすぐ慣れて受け入れていくが、不快さや不便さを伴う変化に対しては受け入れ難い。キャッシュレス決済やデリバリーの快適さを知った私たちは、きっとこれからも新しい生活様式として取り入れていくだろうが、対面出来ない食事やビニールシートやアクリル板の仕切り、マスク常時着用などの不快な変化については必ずすたれていく。「新しい生活様式」のすべてが定着していくわけではないのだ。

「新しい生活様式」は形骸化する

 インバウンドの見通しが立たない現在、コロナ前の客足に戻る事はしばらくない。2021年に延期された東京オリンピックの開催に関しても流動的だ。より少ない客数で利益を上げられる仕組みに変えていくことは、当面の間必須になることは変わらないが、現状の衛生管理対策が売上を損なうと判断された場合や、コロナウイルスの情報やエビデンスが積み上げられる中で、対策自体が過剰に感じられた場合は、恐らく「新しい生活様式」は一気に形骸化する。

 また、これから夏になれば現在の対策では対応出来ない事態になる。例えば現在ドアや窓を開放して通気換気をしてきた路面店などは、虫の侵入を防ぐために別の対応が必要となるだろう。そうなると現実に即した基準なりガイドラインが提示されるだろうが、それぞれの店でも対策を今から考えておかねばならない。

 現在の「新しい生活様式」に縛られる事なく、あくまでも科学的な根拠と世界の動向と照らし合わせ、高い衛生管理意識に基づいて感染拡大防止に留意しながらも、飲食店はポジティブな変化は残しつつ、出来る範囲でいつでも元通りの営業に切り替える準備をしておくべきだ。「新しい生活様式」はいつかは「古い生活様式」になるのだ。

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