進化し続ける「個性派カレー」の美味しさと美しさ

『カレーの惑星』(下北沢)の「2種盛カレー」。美しくて、美味しい。

「自由」を手に入れたカレーたち

スパイスカレーブームを牽引する『SPICY CURRY 魯珈』(新大久保)と『旧ヤム邸 シモキタ荘』(下北沢)
スパイスカレーブームを牽引する『SPICY CURRY 魯珈』(新大久保)と『旧ヤム邸 シモキタ荘』(下北沢)

 カレーの世界の進化が止まらない。インドで生まれてイギリスを経由して日本に入ってきたカレー文化。カレー粉やルーを使った欧風カレーをベースに独自の進化を遂げて来た日本のカレーだが、本場インドや東南アジアなどのカレーも入ってきてそのバリエーションは一気に広がりをみせた。

 そしてここ数年急増しているのがオリジナリティある新たなカレーたち。複数のソースを合いがけにして、その混ざった味を楽しませるのがトレンドになっている。その中でもルーを使わずにスパイスを独自に組み立てて作る「スパイスカレー」は、作り手ごとの個性が現れたものばかりで、店の数だけ味があると言ってもいいほど。「スパイスカレー」の全国的なブームによって、カレーは今まで以上に「自由」を手に入れた。

伊吹島で出会ったイワシをカレーに

『プネウマカレー』(高田馬場)は自家製アンチョビが隠し味
『プネウマカレー』(高田馬場)は自家製アンチョビが隠し味

 早稲田通りから入った路地にある、8席の小さなカレー専門店『プネウマカレー』(東京都新宿区高田馬場1-17-10)は、2017年のオープン以来人気を集めている店だ。店主の長谷薫さんは大のカレー好きで、十年以上にわたりカレーの研究を続け、イベントでの出店などを経てついにこの店を開いた。自分の食べたいカレーを自分の好きな空間で出したいという思いがこの店には詰まっている。

 タマネギをしっかりと炒めてトマトの酸味も生かし、10種類以上のスパイスを独自でブレンドして作るオリジナルのカレーソースの隠し味は「自家製アンチョビ」。長谷さんが伊吹島のイワシ漁を手伝った縁で出逢った新鮮なイワシをアンチョビにして、タマネギを炒める時に使うことで個性的で深みのある味わいを生み出している。

店長が変わるとカレーも変わる店

『カレーの惑星』(下北沢)は美しいカレーと古い商店のギャップが楽しい
『カレーの惑星』(下北沢)は美しいカレーと古い商店のギャップが楽しい

 個性的なカレー店が集まる街、下北沢で注目を集めている人気店が『カレーの惑星』(東京都世田谷区北沢3-34-3)。下北沢一番街商店街の一角にあったカメラ店の跡地にあるこの店の外観は、カメラ店時代の看板をそのまま掲げているユニークなもの。しかし店に一歩入ればリノベーションされたカフェのような作りで、スパイスの香りが広がるカレー店。

 この店のユニークなところは、店長が変わるとカレーもガラッと変わるところ。店としてのカレーではなく、作り手である店長の想いや感性が反映されたカレーを出している。2017年からお店に立つ店長の青木知衣さんは、カレー店などで修業した経験はまったくない。「分かりやすく美味しくハッとするような。私の感性で作るカレーをお出ししています」と語る青木さん。先入観のない自由な発想から生まれたカレーの数々は、どれも美しく、そして驚きがあるものばかりだ。

人気ラーメン店主が挑む本気のカレー

『Spice Curry & Cafe scent』(西早稲田)は人気ラーメン店が経営する
『Spice Curry & Cafe scent』(西早稲田)は人気ラーメン店が経営する

 学生とオフィスワーカーが行き交う街、西早稲田に2018年オープンした話題の店が『Spice Curry & Cafe scent』(東京都新宿区西早稲田2-11-13)。オーナーの山口裕史さんは、同じ西早稲田の人気ラーメン店『らぁ麺やまぐち』の店主。ラーメンと同じくカレーも大好きで、趣味でカレーを作って楽しんでいたが、カレー熱が高じてついに専門店をオープンさせた。

 「日本人の味覚に合うカレーを作りたかった」と語る山口さん。ベースとなる鶏スープは『らぁ麺やまぐち』と同じものを使用。そこに十数種類のスパイスを独自に配合して合わせていく。さらに羅臼昆布など和出汁をブレンドしたカレーなど、オリジナリティあふれるカレーは常時3〜4種類あるが、オススメはその中から2種類が選べる「2種あいがけ」。食べ進めていくにつれて2つのカレーが混ざっていって、異なる旨味と香りが一体になっていく楽しさがある。

 今、東京のみならず、個性的で自由な発想から生まれたオンリーワンのカレーは全国各地でも増殖している。既存のジャンルやカテゴリにあてはめることが出来ないカレーの数々。今までに出会ったことのない、未知の味との遭遇をぜひ楽しんで頂きたい。

※写真は筆者の撮影によるものです。