博多初のつけ麺専門店が惜しまれつつ閉店へ

惜しまれつつ閉店する『博多元助 薬院店』。博多初となる濃厚豚骨魚介つけ麺。

福岡初のつけ麺専門店『博多元助』

『博多元助』休業の知らせは、福岡のラーメンファンに衝撃を与えた。
『博多元助』休業の知らせは、福岡のラーメンファンに衝撃を与えた。

 豚骨ラーメンの本場である福岡の人たちに、東京のつけ麺を食べて欲しい。まだつけ麺が知られていなかった2008年に、そんな想いでオープンした福岡初のつけ麺専門店『博多元助 薬院店』(福岡市中央区薬院2-2-2)が、店舗や設備の老朽化と原材料費の高騰などの理由により、27日に惜しまれつつ閉店する。

 『博多元助』は福岡を中心として、国内外にも多数店舗を展開する『博多一幸舎』(運営:株式会社ウインズジャパン)が手掛けるつけ麺専門ブランド。現在国内ではつけ麺専門店の薬院店と鶏白湯専門店の大濠公園店(福岡市)の2店舗を運営。海外ではオーストラリアに6店舗展開している。低加水で硬い食感の極細麺を用いる博多ラーメン店が、多加水でもちもちとした太麺という博多ラーメンとは真逆の存在であるつけ麺になぜ挑戦しようと思ったのか。

 「当時、福岡は豚骨細麺の文化で、それ以外のラーメンがほとんどありませんでした。東京に行った時に色々なラーメンを食べた中でつけ麺に衝撃を受けて、このつけ麺を福岡の人にも食べてもらいたい、そんな想いでつけ麺専門店を開業しました」(博多一幸舎・博多元助店主 吉村幸助さん)

麺につけダレをかけるお客さんも

『博多元助』店主の吉村幸助さん。最終営業日には自ら厨房に立つ。
『博多元助』店主の吉村幸助さん。最終営業日には自ら厨房に立つ。

 今でこそ豚骨ラーメン以外のラーメンを提供する店も増えてはいるが、『博多元助』が創業した2008年当時の福岡は「豚骨以外はラーメンではない」というほど豚骨一辺倒の場所だった。そんな中で誰も食べたことがないつけ麺を出す。しかも一幸舎の一メニューとしてではなく、つけ麺専門店として新しいブランドを立ち上げる。元祖や先駆者には常に苦労がつきまとう。

 「お客様のほとんどがつけ麺という食べ物を知らないので、なぜ麺とスープが別なのかとか、なぜ麺がこんなに太いのかなど、毎日質問されては説明していました。つけ麺なのにつけダレを麺にかけられる方も多く、それらを根気強く説明し続ける毎日でした。福岡はうどん文化の場所なので、ざる蕎麦文化を持つ東京との違いを強く感じました」(吉村さん)

博多ラーメンと違って太麺のつけ麺は茹で時間も長い。
博多ラーメンと違って太麺のつけ麺は茹で時間も長い。

 「元祖博多つけ麺」を謳う『博多元助』のつけ麺は、鶏ガラと豚骨の濃厚な動物系スープに、煮干しや節に野菜などを使って炊き上げた濃厚豚骨魚介のつけダレと、小麦の香りと甘さを前面に押し出し、もっちりとした食感を持つ自家製の太麺。そんな「元祖博多つけ麺」は、博多ラーメンしか知らなかった福岡人に驚きと衝撃を与えた。さらに全国的にもいち早くカウンターにIHヒーターを導入し、つけダレを熱々にしながら食べるという新しいつけ麺の楽しみ方も提案した。

最終営業日は創業当時の味を再現

『博多元助』最終営業には多くのファンが詰めかけた。
『博多元助』最終営業には多くのファンが詰めかけた。

 豚骨ラーメンの聖地博多に、濃厚豚骨魚介つけ麺という新たな文化を定着させた『博多元助』。鶏白湯専門店として営業している大濠公園店や、海外店舗などでは『博多元助』の屋号は存続するが、博多初のつけ麺専門店として創業した『博多元助 薬院店』は11年の歴史にいったん終止符を打つ。

 最終営業日の26日と27日は、店主自ら厨房に立って創業当時のレシピを再現したつけ麺を一杯500円で提供している(各日限定100杯)。11時のオープン前から多くのファンが詰めかけ、長年愛され続けた「元祖博多つけ麺」との別れを惜しんでいた。

 2013年のオープン以来、福岡屈指の人気を誇るつけ麺専門店『麺や兼虎』(福岡市中央区)の店主、益成兼太郎さんも最終営業日に駆けつけた。「同じつけ麺屋として、博多元助さんのつけ麺と吉村大将をリスペクトしています。閉店の報せを聞いて心からお疲れさまでした、と思いました」(麺や兼虎店主 益成兼太郎さん)

 多くのファンや同業者の支持を受けて来た『博多元助』の閉店。店主の吉村さん自身の思いも特別なものがある。「今後はまだ何も決まっていないのですが、私にとっても思い入れのある店ですので、福岡初のつけ麺専門店としていつの日か必ず戻って参ります。またいつか皆さまに会える日を楽しみにしております。11年間御愛顧いただき誠にありがとうございました」(吉村さん)

※写真は筆者の撮影によるものです。