なぜ冬に「ノロウイルス食中毒」が流行るのか?

ノロウイルス食中毒の原因のひとつ「生牡蠣」。(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

食中毒が一番多い季節は「冬」

 12月27日、札幌市保健所は「ノロウイルス食中毒警報」を発令し、食品の管理などに注意を呼びかけている。前日26日に札幌市中央区の飲食店2店でノロウイルスによる食中毒があったと発表、他にも14~27日の2週間のあいだに、札幌市だけでノロウイルスによる食中毒が疑われる届け出が22件あった(参考記事:読売新聞 2018年12月28日)。

 意外と思われるかも知れないが、食中毒が最も多いのは夏ではなく冬だ。厚生労働省が発表した統計資料「平成29年食中毒発生状況」で、平成27年~29年の3年間の月別発生数を見ると、年間で事件数や患者数が多いのは12月~3月の冬場で、一年全体を通して半数ほどが冬に発生しており、逆に食中毒のイメージが強い夏場の7月~9月は、一年の中で少ない季節になっている。「食中毒は冬が本番」なのだ(参考資料:厚生労働省ホームページ)。

低温乾燥に強い「ノロウイルス」

 食中毒の原因と知られているものには、カンピロバクター、サルモネラ菌、大腸菌などの細菌が多いが、冬場はウイルス性の食中毒が多発している。細菌は高温多湿を好んで増殖するため「細菌性食中毒」は夏場に多く発生するのに対して、ウイルスは低温や乾燥した場所でも生息出来るため「ウイルス性食中毒」は冬場に増加するのだ。

 冬場に多いウイルス性食中毒の中でも、ノロウイルスによる食中毒は発生数が群を抜いている。ノロウイルスは微細なインフルエンザウイルスよりもさらに小さく、感染力がとても強いウイルスなので、感染規模も拡大しやすい。12月に入ってからもノロウイルスを原因とする食中毒事件が多発。9日には神奈川県箱根のホテルで42人、12日には東京都大田区の小学校で20人、27日には埼玉県東松山市の社員食堂で16人など、今年もノロウイルスが全国各地で猛威をふるっている。

牡蠣の生食を極力避けよう

 ノロウイルス食中毒の事例のうち、約7割では原因食品が特定出来ていない。それはウイルスに感染した食品取扱者を介して食品が汚染されているケースが多いからだ。まずは食品を扱うレストランや調理者などの高い衛生管理意識が望まれる。消費者も信頼のおける飲食店を利用するようにしたい。

 それでも感染源として気をつけるべき食材は「牡蠣」だ。厳密に言えば、牡蠣に限らずアサリやハマグリ、シジミ、赤貝などの「二枚貝」がノロウイルスを保有していることで知られているが、ノロウイルスは熱に弱いため加熱されているものから感染することはまずない。生食する可能性が非常に高い二枚貝が牡蠣ということなのだ。

 牡蠣には「生食用」と「加熱用」があることは知られているが、この違いは海域や洗浄方法、さらに剥き身の保有菌数の違いである。河口から離れていて下水などの影響が少ない海域で育てられ、水上げ後にしっかりと洗浄殺菌がされ、腸炎ビブリオや大腸菌などの細菌数が少ないものが生食用として市場に出る。そういう意味では加熱用よりも生食用の方がノロウイルスに関しても安全性は高いと言えるが、それでもノロウイルスを摂取する可能性は極めて高いと言わざるを得ないのだ。

ノロウイルスの食中毒を防ぐために

 冬場に急増するノロウイルス食中毒だが、私たちがしっかりとした知識を持っていればそのリスクを減らすことが出来る。あらためて、ノロウイルス食中毒にならないためのリスク回避方法をおさらいしておきたい。

・牡蠣を食べる場合は、生食(あるいは生に近い蒸牡蠣)を避けて十分加熱されたものを食する。厚生労働省のガイドラインでは、中心部が85℃~90℃で90秒以上の加熱が推奨されている。

・食事の前やトイレの後などの手洗いを徹底する。接触感染の場合はトイレのドアノブなどでも起こり得る。

・信頼の出来る飲食店で食べるようにする。

 また、ノロウイルスだけではなくカンピロバクター食中毒も非常に多い。こちらの記事でカンピロバクター食中毒についても触れているので参考にして欲しい。何かと外食が多くなりがちな年末年始、正しい知識を持って食中毒のリスクを回避して頂きたいと切に願う。

【関連記事:レバ刺しでまた発生 カンピロバクター食中毒を防ぐには