レバ刺しでまた発生 カンピロバクター食中毒を防ぐには

食中毒のリスクを減らすためには正しい食品知識が必要だ(ペイレスイメージズ/アフロ)

茨城で2人が食中毒、1人は呼吸困難の重体に

「レバ刺し」はリスクが高過ぎる料理。食べるのは諦めた方が身のためだ。
「レバ刺し」はリスクが高過ぎる料理。食べるのは諦めた方が身のためだ。

 茨城県は6日、古河市内にある飲食店『はたがやレバー古河店』で牛レバ刺しなどを食べた2人が食中毒症状を訴えた、と発表した。2人の便からは食中毒の原因菌である「カンピロバクター」が検出された。うち1人は「ギラン・バレー症候群」と診断を受け、今も体の麻痺や呼吸困難が起きるほどの重体で入院している(参考記事:朝日新聞 2018年12月7日)。

 また食中毒である。またレバーである。そしてまたカンピロバクターである。1983年に新たな食中毒菌として指定されたカンピロバクターは、厚生労働省によれば平成29年の発生件数が320件あり、食中毒全体(1,024件)の32%と件数で最多だった。さらにギラン・バレー症候群の約40%がカンピロバクター感染症が原因となっており、麻痺性疾患との関連も看過出来ない極めて重要な病原菌と言えるだろう。

 カンピロバクター食中毒では原因となるものを食べてから約2~5日で、下痢、嘔吐、腹痛、発熱などの重篤な症状を起こす。一般的には食中毒の症状が出てもその多くは自然に回復するが、特に小さい子どもや高齢者では脱水で重症になることもある。また、前述したようにギラン・バレー症候群を引き起こすと手足の麻痺や呼吸困難に陥り、最悪の場合は死に至る。

リスクの高い店、リスクの高い食材を回避する

 しかしながら、カンピロバクターでの食中毒を防ぐことはさほど難しいことではなく、十分な加熱調理と二次汚染防止を徹底すれば比較的容易に防ぐことができる。食中毒予防の原則は「菌を食材につけないようにする」「菌を増やさないようにする」「菌を殺す」という3原則だが、これは飲食店側の予防措置であり私たち消費者にはコントロール出来ない領域である。私たちが出来ることは「リスクの高い店に行かない」ことと「菌を保有しているリスクの高い食材を回避する」ことの2点。これでカンピロバクターでの食中毒への罹患率は圧倒的に低くなる。

 まず「リスクの高い店に行かない」。今回の事件はいわゆる「チェーン店」で発生している。『はたがやレバー』の本店は東京都渋谷区にあるが、レバ刺しの禁止後に低温で加熱したレバーを提供して人気を集めた店である。ホームページ上でも「生レバーをじっくり低温加熱し、あの懐かしい食感を再現しました。幻のレバー刺し(低温殺菌)ご賞味あれ!」との表記があり、主力商品として力を入れていたことが分かる(参考資料:はたがやレバー ホームページ)。

 事故を起こした『はたがやレバー古河店』では、今回のレバ刺しについて厚生労働省が定める低温殺菌(63度で30分加熱)をしたとしているが、果たしてチェーン店でどこまでその調理オペレーションや食中毒予防の意識が浸透していたかは疑問である。無論、個人店よりも高い衛生管理意識を持っている飲食チェーンも多いことは言うまでもないが、その一方で本部の目が行く届かない例も少なくなく、本部の意識や施策が伝わり辛いのも多店舗展開のチェーン業態にはよくあることだ。作り手の顔がしっかりと見える、信頼のおける料理人が厨房に立つ店の方がリスクは避けられるだろう。

 そして「菌を保有しているリスクの高い食材を回避する」。これはもう簡単なことで、しっかりと加熱されていないレバーを食べなければ良いということだ。カンピロバクターの主な生息場所は「ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、イヌ、ネコ、ハトなどの動物の消化管内」。この中で私たちが食べる可能性が高いのは牛、豚、そして鶏だろう。そして牛肉、豚肉に関しては厚生労働省から生食の禁止が通達されているので、今一番気をつけるべき食材はズバリ「鶏肉」だ(参考資料:厚生労働省ホームページ)。

鶏の生食はあまりにもリスクが高過ぎる

焼鳥店などで提供される「鶏レバー」も十分な加熱が必要だ。
焼鳥店などで提供される「鶏レバー」も十分な加熱が必要だ。

 鶏はそもそもカンピロバクター菌を保有している率が極めて高い動物だ。もちろん生息しているのは鶏の腸管内なのだが、食肉処理の際に腸管が破れるなどして鶏肉部分にも付着し、中でも内臓肉を汚染しやすい。流通している鶏肉の2割~8割にカンピロバクター菌が付着していたという調査もある。

 鹿児島には鶏肉の表面を火で軽く炙って食する『鶏たたき』という郷土料理がある。鹿児島県では2000年に「鶏刺しの文化がある鹿児島では、安全確保のために衛生基準が必要」として独自の生食用鶏肉ガイドライン『生食用食鳥肉の衛生基準』を制定した。そして2018年5月、鹿児島県はそのガイドラインを改訂し、対象から肝臓と砂肝を除外した。

 改訂の理由は「肝臓からのカンピロバクター検出率が高く、現状では微生物コントロールが困難で生食の安全性が担保できない」ため。県の担当者は「調査したほとんどの鶏の肝臓から、カンピロバクターが検出された」と話す。同じく鶏肉の生食文化がある宮崎県でも同様のガイドラインが設置されているが、カンピロバクター食中毒の事例は後をたたない(参考記事:朝日新聞 2018年7月7日)。

 また、菌が表面に付着しているだけならば表面を焼いたりトリミングすれば回避出来るのだが、調査によると肝臓の中からもカンピロバクター菌が検出されている。これはいくら表面を良く焼いても、どんなに衛生面に留意していたとしても避けられないことを意味する。現在国が食品衛生法によって牛や豚の生食を禁止しているのも、腸管出血性大腸菌やカンピロバクター菌が肝臓内部から検出されているためだ。カンピロバクター菌の保有が極めて高い鶏に関しても、いずれ国が規制するのは時間の問題だろう(参考資料:厚生労働省ホームページ)。

カンピロバクター食中毒は防ぐことが出来る

 カンピロバクターによる食中毒は死に至ることもあり、非常に危険で怖い。しかしながらしっかりとした知識を持っていればそのリスクを極力回避することが出来る。あらためて、カンピロバクター食中毒にならないためのリスク回避方法をおさらいしておきたい。

・牛、豚、鶏など家畜の内臓肉は極力避ける。

・家畜の内臓肉を食べる場合は、しっかり加熱されたものを食べる。

・現段階で規制のない「鶏肉」の生食は極力避ける。

・特に「鶏レバー」の生食は絶対に避ける。

・信頼の出来る飲食店で食べるようにする。

 これらのリスクを知らないで食べて、食中毒になってしまうのは実に不幸なことだ。そして知った上で食べて、食中毒になってしまうのは愚かなことだ。命を賭してまで食べるべき食材、料理などこの世の中にはどこにもないはずだ。正しい知識を持って食中毒のリスクを回避して頂きたいと切に願う。

※写真は筆者の撮影によるものです(出典があるものを除く)。