コロナ禍で「放置」だった新入社員の5月病に注意 モチベーション維持に必要なケアは?

(写真:アフロ)

ゴールデンウィーク明けは「五月病」に注意が必要です。

特に社会人生活のスタートとコロナ禍が重なってしまった今年の新入社員は、例年以上の不安やストレスにさらされています。

彼らが心身の不調やモチベーションの低下に陥らず、「この会社でがんばっていこう」と思えるようになるためには、どんなケアが必要でしょうか。

■「今の会社で働き続けたい」の裏にある新入社員の気持ち

4月に新入社員3,128名が回答したアンケート調査によると、「今の会社で働き続けたい」という割合が59.1%でした。過去5年は「今の会社で働き続けたい」は減り続け、「そのうち転職したい」の割合が増え続けていたのですが、今年はその増減が逆になりました。

出典:ラーニングエージェンシー「2020年度新入社員のキャリアに対する意識調査」
出典:ラーニングエージェンシー「2020年度新入社員のキャリアに対する意識調査」

昨年までの傾向は、売り手市場で就職した新入社員たちの「強気」を反映していたのでしょう。

今年の新入社員も売り手市場での就活を経験しましたが、入社直後から経済の状況が急激に悪化、内定取り消しや解雇、企業の業績不振などのニュースが増えています。そのことが彼らの気持ちにも大きな影響を与え、攻めよりも守りの姿勢にさせていると考えられます。

■入社式中止、研修のオンライン化で足りなくなっているもの

入社式や集合研修が中止され、社会人生活がテレワークで始まった新入社員も多いでしょう。

前述の調査を実施した教育研修会社のラーニングエージェンシーによれば、今年、同社の新入社員研修を予約していた1,124社のうち、約80%にあたる891社がオンラインでの研修に切り替えて実施したそうです。

お辞儀や名刺交換、電話応対などの練習を画面越しに指導。(画像提供:ラーニングエージェンシー)
お辞儀や名刺交換、電話応対などの練習を画面越しに指導。(画像提供:ラーニングエージェンシー)

研修のオンライン化は、大人数の集合研修よりもきめ細かい個別対応が可能になるなど、うまくやれば多くのメリットがあります。

しかし入社後数ヶ月というのは、通常なら同期との仲を深めていったり、先輩社員たちが仕事をする姿を見たり、会社に通うことやオフィス空間に慣れていったりすることで、会社への帰属意識が高まり、そこで働いていく自分のイメージが具体的になっていく期間です。その点では、研修の中身だけでなく、研修の前後や合間に体験することも非常に大事なわけです。

単に研修をオンライン化し、それ以外の時間は放置状態では、「学生から社会人へ」という気持ちの切り替えがしづらいだけでなく、「自分がこの会社で働いているイメージがわかない」ということから不安やモチベーションの低下を引き起こしかねません。

■会社の動きが伝わってこないと必要以上に不安に

また、多くの会社で業績が悪化していることが報じられる今、在宅勤務で会社の動きや雰囲気があまり伝わってこない状態だと、「うちの会社は大丈夫なのか」「この先どうなってしまうのだろう」と必要以上に不安になってしまうでしょう。

以下は、今年3月に4月入社予定者を対象とした調査で挙がった、具体的な不安の内容です。緊急事態宣言が出る前の段階から、社会人としての船出が厳しいものになると予想していることがわかります。

〇消費者の自粛ムードの影響を受ける事業が大半を占めるため、内定取り消しや、入社後のボーナス減などの影響を受けないか、心配である。

〇就職先の業界が、特に打撃を受けている業界であるため、多くのイレギュラー対応がありそうで不安。そして先輩方が忙しく、後輩の面倒を見る余裕がないのではないかという不安もある。

〇世界経済が日に日に悪くなり、働いても売上が伸びず本来の評価を受けられないのではないかと思うから。

〇会社の業績悪化による給与や賞与などへの悪影響に対して不安を感じます。

出典:ディスコ「キャリタス就活 2020 学生モニター特別調査結果」

実際に入社してみて、不安が軽減されるのかますます高まるのかは、会社側の対応次第です。

経験したことのない状況に翻弄されているのは既存の社員や経営者も同じで、新入社員のケアをしている余裕がないかもしれません。

しかしここで手をこまねいていては、メンタル面での不調者が出たり、会社に対するエンゲージメントの低い社員が増えるなど、後にひびくダメージが生じる可能性が高いです。

テレワーク環境下であっても会社からのメッセージを伝える機会や、新入社員が他の社員とコミュニケーションを取れる機会をなるべくたくさん作るとともに、新入社員の疑問や不安を把握してそれを解消する努力をすべきでしょう。

■前向きに働く気持ちを持ち続けてもらうためのポイントは

昨年度の新入社員480人を対象とした意識調査によると、4月に入社した時点で「今の企業・団体でずっと、または当面は仕事を続けたい」と考えていた人は73.6%でした。しかし入社半年後には、そのうちの23.2%がすでに離職しているか転職意向を持っていました。

入社半年後まで変わらず「今の企業・団体で仕事を続けたい」という意向を持ち続けている人は、「担当業務のこと以外も含めて相談している(していた)」 と回答した割合が56.8%なのに対し、転職意向に変化または離職済みの人は22.0%と、大きな差がありました(全国求人情報協会「2019年卒新卒者の入社後追跡調査」より)。

ここからわかるのは、せっかく「この会社で働き続けたい」という思いを持って入社しても、担当業務外のことも含めて相談できる相手がいるかどうかという職場の人間関係が、職場への定着を左右するということです。

例年であれば、連休明けには配属が決まって身近な上司や先輩ができる新入社員が多いでしょう。そこで相談しやすい相手が見つかるかどうかは運次第というところもあります。

ところが、今年は配属の時期を遅らせる企業もありますし、配属が決まっても在宅勤務が続けば、「隣の席の先輩と自然に仲良くなる」といった機会が自然に生まれることはなかなか望めません。むしろ誰もが余裕がなく、新人が放って置かれる危険性が高いでしょう。

こういうときは、新人ひとりひとりにメンターを指名してオンライン上でも頻繁に相談にのるようにする、部内の人たちとの雑談の時間を作る、上司が1対1の面談の時間を頻繁に取るといったしかけを、人事部や配属先部署で作る必要があります。新入社員は「ここで何を言っても、聞いても大丈夫」という心理的安全のある状態にはなっていないでしょうから、無記名のアンケートなどで不安や悩みを聞き、経営者や人事部から新入社員全員に対して回答を発信するといったことも有効ではないかと思います。

オンラインで研修は受けたもののなかなか実務につけず、「自分がこの会社にいる意味があるんだろうか」と感じてしまう新入社員も多いはずです。ぜひ、「来てくれてありがとう。一緒にがんばろう」というメッセージを折に触れて伝え、未曾有の事態を一緒に乗り越える仲間に育てていきましょう。