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WEリーグ INAC神戸を浦和レッズ後援会がサポートするのはなぜか

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
2021年9月に開幕した第1回WEリーグ(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 日本初の女子プロサッカーリーグとして昨秋に開幕した「2021-22 Yogibo WEリーグ」。このほど優勝を決めたばかりのINAC神戸レオネッサが、2万人の集客を目指して5月14日に東京・国立競技場でホームゲームとして開催するWEリーグ第21節・三菱重工浦和レッズレディース戦で、浦和レッズ後援会が試合運営のサポート役として一肌脱ぐことになった。

■INAC神戸の“目標”は2万人の集客

 INAC神戸は昨年9月のWEリーグ開幕時から好調を持続。独走状態になり、今月8日のノジマステラ神奈川相模原戦で勝利を収め、リーグ2試合を残して優勝を決めた。

 兵庫県神戸市に本拠を置くINAC神戸が今回、国立競技場でホームゲームを行うことになったのは3月。ヴィッセル神戸のホームゲームとの兼ね合いで、本拠地であるノエビアスタジアム神戸が使えないことが理由だった。

 INAC神戸は近隣でも会場探しをしたが条件の良い場所が見つからなかった。そこで、今回は相手が皇后杯優勝の浦和レッズレディースということで、女子クラブで初となる国立競技場での開催を決めた。

5月8日のノジマステラ戦で2得点を挙げてリーグ優勝を決める立役者となったINAC神戸レオネッサの田中美南
5月8日のノジマステラ戦で2得点を挙げてリーグ優勝を決める立役者となったINAC神戸レオネッサの田中美南写真:森田直樹/アフロスポーツ

■「国立競技場には“憧れのスタジアム”になってほしい」

「WEリーグ全体の盛り上げにもつなげたい」というINAC神戸の心意気に突き動かされたのが、対戦相手である浦和レッズレディースを後援する「浦和レッズ後援会」の新田博利専務理事だ。

 新田氏は浦和レッズのクラブ職員だった2005年、さいたまレイナスを引き継ぐ形で浦和レッズレディースを立ち上げた時に責任者を務めるなど、女子サッカーへの造詣も愛情も深い。

「国立競技場は東京オリンピック開催でつくられた。サッカー専用ではなく陸上トラックがあるのは残念だが、サッカー界としても『いつかあそこでやりたいと』いう憧れのスタジアムになってほしい。そういう願いがあります」と語っている。

 WEリーグは1試合平均の集客の目標を「5000人」と掲げてきたが、現状は遠く及ばず、1試合平均1500人前後。新田氏は「われわれも一緒になってWEを盛り上げないといけない。国立競技場に来てくれたお客さんに気持ちよく試合を見て貰い、リピーターになって貰わなければ」と危機感を見せている。

浦和レッズ後援会の新田氏(撮影:矢内由美子)
浦和レッズ後援会の新田氏(撮影:矢内由美子)

■浦和レッズ後援会のスチュワードが運営に協力

 Jリーグでは通常、試合運営をサポートするスタッフを「ボランティアスタッフ」と呼ぶことが多いが、浦和は「スチュワード」と呼んでいる。登録しているスチュワードは約110人。その中から試合ごとに参加者を募り、浦和レッズや浦和レッズレディースのホームゲームの運営をサポートしてもらっている。サポート内容はチケット確認や座席の案内、インフォメーションでの各種案内や、迷子、忘れ物などの対応、車椅子観戦者の誘導など。

 浦和レッズは昨年度の天皇杯決勝で国立競技場での試合を経験しているが、その試合の主催は日本サッカー協会だった。浦和レッズがホームゲームとして国立競技場で試合をしたことはまだなく、後援会のスチュワードにとっても今回の国立競技場でのサポートは魅力的だった。「国立競技場でやるなら参加したい」という声が多く、今回は普段の1・5倍の約30人が名乗りを上げたそうだ。

「フットボールファミリーの一員としてWEリーグ全体を盛り上げたい。スチュワードにとって今回の経験はいずれ浦和がホームゲームを開催する時のための糧にもなる」と思いをはせる新田氏。国立競技場での女子初の試合を心待ちにしている。

三菱重工浦和レッズレディースのエースストライカー菅澤優衣香も国立競技場での試合を楽しみにしている
三菱重工浦和レッズレディースのエースストライカー菅澤優衣香も国立競技場での試合を楽しみにしている写真:アフロスポーツ

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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