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大津祐樹と酒井宏樹がeスポーツイベントを開催したのはなぜか

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
ウイルス感染対策を施して開催された「ウイイレまつり2021」(撮影:矢内由美子)

 Jリーグのオフシーズンである昨年末から年明けにかけて、サッカー元日本代表FW大津祐樹(ジュビロ磐田)と日本代表DF酒井宏樹(浦和レッズ)が運営する「Football Assist」が、大学生を対象に「ウイイレまつり2021」を開催。全国から約200チーム(1チーム1~3人)が参加する盛況ぶりを見せた。

 まずは12月下旬にオンラインで「ファーストステージ」の対戦を行い、勝ち残った4チームが年明けの1月7日、都内に集合。「ファイナルステージ」と称して準決勝と決勝を行った。

 Jリーグのオフ期間に現役選手が子供たちを対象としてサッカー教室を開催することは珍しくないが、今回は「ウイイレ」。大津と酒井はなぜeスポーツの大会を開催しようと思ったのか。

ファーストステージはオンラインで試合をしたが、上位4チームのみが参加したファイナルステージは初めて対面で試合を行い、大いに盛り上がった(提供:フットボールアシスト)
ファーストステージはオンラインで試合をしたが、上位4チームのみが参加したファイナルステージは初めて対面で試合を行い、大いに盛り上がった(提供:フットボールアシスト)

 背景にはやはり「コロナ禍」がある。全国の大学生は新型コロナウイルスの影響で20年春から学生生活が一変。対面授業がなくなり、学生同士でリアルなコミュニケーションを取る機会が激減した。

 一方、柏レイソル時代にチームメートだった大津と酒井は、現役選手の強みを生かしながらスポーツの価値を最大化させるという理念を胸に2人で会社を設立し、16年には少年サッカースクールを開校。20年1月には大学生を支援するプロジェクトを発足させていた。

 ところがまもなく訪れたコロナ禍により、イベント開催ができなくなった。このほどやっと実現した「ウイイレまつり2021」について大津は、「これまで、コロナ禍で大学生が楽しめる場がなかなかなかった。大学生の支援をするうえで、実際に会えるということで貴重なイベントをできたと思う」と語った。

 eスポーツを開催したことについては、「スポーツの価値を考えるとリアルなサッカーはもちろんですが、eスポーツもまた、多くのスポーツファンが共通して盛り上がれる」と、狙いについて説明する。

大津祐樹(右)と酒井宏樹(右から3人目)や、ゲストの那須大亮(右から2番目)もウイイレ対戦を見ながら楽しんでいた(提供:フットボールアシスト)
大津祐樹(右)と酒井宏樹(右から3人目)や、ゲストの那須大亮(右から2番目)もウイイレ対戦を見ながら楽しんでいた(提供:フットボールアシスト)

 1月初旬に都内で行ったファイナルステージは、天井が高く換気に優れた施設を使い、マスクや手指消毒などしっかりと感染対策を施したうえでの開催だった。優勝したのは「相方弱いFC」(2人チーム)。立正大学大学院法学研究科2年の西野尾基陽(にしのお・のりあき)さんと、九州大学大学院の芸術工学府修士1年の阿部圭吾さんは、両人とも幼稚園の年長からウイイレを始め、リアルサッカーもやってきたという。

 2人に話を聞くと、チームを組むことになったのはツイッターで知り合ったのがきっかけ。「ファイナルステージに進めば大津選手と酒井選手に会えるということで、最初からここを目標にしていました」と口をそろえた。

 2人は準決勝と決勝で見事な戦いぶりを見せて優勝。大会終了後は大津&酒井や、現在YouTuberとして活動している那須大亮輔が率いるサッカー系YouTuber「WINNER’S」のメンバーたちと一緒に、エキシビションマッチを楽しんだ。

「まさかウイイレを通じて会えるのかとビックリしている。プロ選手がこういう機会を設けてくれたのは本当にうれしい」(西野尾さん)

「普通ならどう頑張っても会えない現役のプロのサッカー選手が、自ら僕らに歩み寄って、こういうイベントを企画してくれたのがありがたい」(阿部さん)

 2人とも貴重な時間を心から楽しんだ様子だった。

優勝した「相方弱いFC]の西野尾さん(右)と阿部さん(左)(コメント録画時のみマスクを外しています)(撮影:矢内由美子)
優勝した「相方弱いFC]の西野尾さん(右)と阿部さん(左)(コメント録画時のみマスクを外しています)(撮影:矢内由美子)

 大津は「この一年半、色々なイベントが全くできなかった中でようやく実現できたオフラインのイベント。スポンサーの協力もあって、学生と現役選手が一緒になっていて良いイベントをできた」と満足そうだった。酒井も、「現役選手と大学生がより近い距離で同じ大会を出来たのは良かった。そこにYouTuberたちも加わって、みんなで一緒になってスポーツを盛り上げられたのではないか」と“手応え”を語った。リアルサッカーとeスポーツそれぞれの特徴や良さを生かしながら、広い意味でスポーツの価値を高めたいという思いを、活動に反映させていることが伝わる。

参加者全員で記念撮影(撮影時のみマスクを外しています)(提供:フットボールアシスト)
参加者全員で記念撮影(撮影時のみマスクを外しています)(提供:フットボールアシスト)

 ジュビロ磐田は1月12日に始動。今季は3季ぶりにJ1に復帰するとあって、加入2年目の大津も大いに意気込んでいる。背番号は昨季の「4」から「11」へ変更した。

「去年、(J2優勝の)タイトルを1つ取ることができたので、今年もタイトルを取りたいという思いで、1と1=11番にしました。昨季にこの背番号をつけていたルキアンの思いも受け継ぎながらプレーしたい」(大津)

 昨夏に浦和レッズに加入し、天皇杯優勝を果たした酒井にとって、シーズン開幕から浦和でプレーする最初の年となる今季は、Jリーグのタイトルを取ることはもちろん、AFCチャンピオンズリーグ制覇を目指すシーズンでもある。直近では、日本代表としてワールドカップアジア最終予選を勝ち抜き、ワールドカップ出場権を手にすることも目標だ。

 シーズン開幕に向けて気持ちを切り替えている2人。その活躍もまた、今回のイベントに参加した学生たちの励みになるだろう。

◆「Football Assist」とは 現役プロサッカー選手として活動する大津祐樹(ジュビロ磐田)と酒井宏樹(浦和レッズ)が発起人となり、スポーツの価値を最大化させるために立ち上げたプロジェクト。運営企業は株式会社ASSIST。

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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