【大分トリニータ】オナイウ阿道がピッチで示す精練の縮図

6月1日のJリーグ第14節FC東京戦で1得点を決めたオナイウ阿道(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 MF久保建英が凄みすら漂わせた6月1日のJ1第14節・FC東京対大分トリニータ戦で、17歳(当時)のきらめきに負けじと成長ぶりを示したのがオナイウ阿道だ。

 0-2とリードを許していた後半14分に1点差に詰め寄るゴールを決めて反転攻勢へ。最後に久保のこの日2点目で1-3と突き放されたものの、片野坂知宏監督の指揮の下、精練を感じさせるプレーを見せたオナイウが残した印象は、今後の期待を一層膨らませるものだった。

■後半、1点差に詰め寄る左足シュート

 立ち上がりは好調の両チームらしく、互いに勢いの良さが出た。2分、東京は、久保がディエゴオリヴェイラとのパス交換を挟んで自陣から相手ペナルティーエリアまで長い距離を運び、タメをつくってからラストパス。ディエゴオリヴェイラのシュートが大分GK高木駿に阻まれると、その2分後にビッグチャンスをつくったのがオナイウだった。

 左サイドで一度は奪われかけたボールを奪い返し、中へ切れ込んで中央へマイナスのパス。フリーで打ったMF星雄次のシュートは東京GK林彰洋の好セーブに止められたが、オナイウの球際での粘り腰とチャンスメイクは目を引くものだった。

 その後は地力で勝る東京のペースとなり、大分は前半のうちに2点を失うが、最終ラインを3バックから4バックにした後半は、大分がボールを握る時間が徐々に増えた。片野坂監督は58分にMFティティパンとFW後藤優介を投入。すると、その直後にオナイウが決める。

 自陣からのロングボールを頭で落として味方に預けると、ペナルティーエリア左側でボールを受け直して対峙するDF2人に勝負を挑み、左足シュート。ボールはDFの間を抜けてゴール右隅に決まった。

「パスを受けて、ゴールを見ながら打てるところにボールを置くことができました。DFもいましたが、シュートも少なかったですし、ああいうところで積極的に狙っていこうと思って。少しDFに当たって、いいところに飛んでいきました」

 オナイウはその後も62分にロングボールをバイタルエリアで足元に収めて右足シュートを打ち、75分には中盤で粘りながらチャンスへとつなげるプレーを見せた。67分の好機にクロスに右足を合わせられなかったのは痛恨だったが、リオデジャネイロ五輪代表候補時代からの持ち味である空中戦での強さに磨きがかかり、さらに球際での粘りやワンタッチパスでの好機演出など、存在感を見せた。

■びびってしまったところも

 もっとも、試合後は悔しさがあふれ出た。特に反省の言葉が口を突いたのは前半の戦いについてだ。

「チームとして最初のチャンスに(得点が)入っていればというのもありましたが、それ以前の問題で、相手の勢いや選手にびびっているところがありました。相手の技術、個人のレベルの高さ、技術の高さのところで前半は受けるところが多かったのかなと思います」

 東京は首位を快走しているチームであり、日本代表として今回のキリンチャレンジに室屋成、橋本拳人、久保の3人を輩出している。東京の前半30分の先制点は久保がキープして起点となり、室屋のクロスを橋本がヘッドで決めたもの。日本代表トリオに制圧されたシーンだったのは否めない。

 負けん気の強いオナイウとしては、メンタル的に気圧されたのがよほど悔しかったのだろう。

「球際のところや、相手と戦うという部分で、相手の勢いに負けるというか、びびってしまって強く行けないところがあったと思います。そういうところはもっとチーム全体としてやっていかないといけないと思います」

 胸の中に次々と課題が浮かんでくるようだった。

■「次の対戦では相手がビックリするくらいレベルを上げていたい」

 オナイウは埼玉県の正智深谷高校を卒業した14年にジェフ千葉でプロになり、17年浦和レッズに完全移籍で加入し、昨季はJ2のレノファ山口に期限付き移籍。山口では42試合22得点(得点ランキング2位)と大ブレークし、千葉時代の3年間で挙げた10ゴールの2倍の数字を叩き出した。

 今季は再び浦和からの期限付き移籍で大分に加入し、2年ぶりにJ1の舞台を踏んだ。第5節のサンフレッチェ広島戦でJ1初先発を飾り、途中出場だった第7節のベガルタ仙台戦でJ1初得点を決めると、2度目の先発だった第8節ガンバ大阪戦で仙台戦に続く2試合連続ゴールを決めてレギュラーに定着。国際Aマッチによる中断前の14試合終了時点で7試合連続先発を果たし、J1初ゴールを含む計4得点をここ8試合で決めている。チームでは、得点ランキング首位タイの7ゴールを挙げている藤本憲明に続いて2位の得点数だ。

「(山口とは)チームのスタイルも全然違います。まずは与えられたスタイルをしっかりとやる。その中で自分が狙っていることや、自分の力でやれることを増やしていきたいと思っています」と話すように、指揮官の要求を十全に理解し、ピッチで表現していこうという姿勢が伝わる。

 東京戦の後半に効果的なプレーを見せることが増えた背景には、戦術的な修正に加え、日頃の精練や駆け引きが実を結んだという面もある。

「前半から僕の所は空いているのかなと思っていました。あそこ(真ん中)で受けられれば、相手のDFの目線を一度真ん中に集めてサイドからの攻撃というのも有効になると思います」

「後半は前のほうでオーバー気味にポジションを取ったりしていたので、そういったところでズレが生じてサイドが空いたときもありました」

 シュートを決めた場面以外でもクレバーなプレーを心掛けていたことが、言葉の端々から伝わった。

 とはいえ、後半にできたことを前半からやらなければならないというのが反省点でもある。

「ある程度できるところもあったけど、首位にいるFC東京さんとは技術の部分でまだまだ差があると感じました。その差を少しずつでも埋めて、今度ホームで対戦するときには、相手がビックリするくらいチームとして精度を上げていたいし、個人としてもレベルを上げられたらいいと思います」

 現在6位につける大分が東京をホームに迎えるのは第30節。その日が来るまでリーグだけで15試合ある。試合を重ねるごとに長足の進歩を遂げている今、オナイウの表情には秋の対戦が楽しみだという意気込みがはっきりと見えている。