FIFA技術研究グループ報告書が後押しするU-21日本代表・手倉森監督の“現実路線”

U-21日本代表・手倉森誠監督

2016年リオデジャネイロ五輪に向かうU-21日本代表。指揮を執る手倉森誠監督が、仁川アジア大会(9月14日サッカー先行開幕~10月4日)を前に強く打ち出したのは、相手に合わせて戦いを変えるという「現実路線」だ。背景には、2014年ブラジルW杯では4年前のポゼッションサッカーからカウンター攻撃へとトレンドが移り変わったとする、FIFA技術研究グループの報告書がある。

■FIFA技術研究グループ報告書

国際サッカー連盟(FIFA)の技術研究グループはW杯など世界大会ごとに報告書をまとめており、ブラジルW杯では日本の宮本恒靖氏もグループの一員として試合の分析に当たった。FIFAは大会終了から約1カ月後の8月15日に報告書を公表した。

FIFA技術研究グループ報告書(英語・仏語など)

ここには「技術及び戦術分析」「トレンド」「違いを生み出すものは何か」といった多くの項目が並んでいる。8月にあった仁川アジア大会代表メンバー発表の際、手倉森監督がFIFAの報告書で述べられている事柄の中で深く頷いたのは、ポゼッション型よりカウンター型のチームが多かったというデータが示されたことについて見解を聞かれたときだった。

手倉森監督は「W杯のトレンドから受ける影響はある」と肯定したうえで、こう言った。

「4年前のW杯南アフリカ大会でスペインが優勝し、その(ポゼッション型)サッカーがこの4年間のトレンドになっていた。その中で、ブラジルW杯では何がスタンダードになるのかと考えたときに、僕はおそらくこうなると思い、U-21日本代表のチームコンセプトとして見つけたのが『全員守備・全員攻撃』だった」

ここで分かるのは、手倉森監督はW杯ブラジル大会の前の段階で先読みして「全員攻撃・全員守備をコンセプトとしたうえで、攻撃の優先順位を理解し、カウンターの鋭さを出す」という方向性を見いだし、U-21日本代表合宿でも掲げていたことだ。指揮官いわく、「ブラジルW杯はまさしくそういう大会になった」

■ポゼッションからカウンター、そして柔軟型へ

手倉森監督は2010年からの4年間を次のようにまとめた。

「南アフリカでスタンダードになったスペインのポゼッションサッカーを、この4年間でどの国もやれるように成長してきた。それと同時にスペインのようにつないでくるチームに簡単に負けたくないと、どのチームも守備力を高めてきたんだろうと思う」

しかしながら、守備力だけでは勝てない。FIFA技術研究グループのブラジルW杯報告書でも「ただボールを持つだけではなく、相手陣内に向かう推進力が成功の鍵」と記されている。奪ってからのカウンターを有効化させたチームが躍進したことを裏付ける分析だ。

さらに手倉森監督は、「奪ってから仕掛ける中で、相手がブロックを組んできたらポゼッションをできるようになろう、というのが1つのサイクルだった。だからいろいろなことができるようになったチーム、つまりドイツが素晴らしい成果、優勝を成し遂げたんだと思う」とまとめている。

ここで重要なのは、では日本は今どうすべきかということだ。2010年からの4年間、日本サッカーの旗頭として戦ってきたザックジャパンは、ボールを保持しながら主導権を握る攻撃サッカーに邁進した結果、本大会ではスタイルを出すところまでたどり着けずに惨敗した。手倉森監督はその現実を踏まえ、「日本のスタイルを考えたときに、僕はスタイルの前に日本の立場をしっかり理解すべきだと感じた。やっぱり日本は世界から見れば、まだまだ強豪国ではない。世界と戦うとき、どうすれば勝てるのかということを謙虚に落とし込んでいかなければいけない国だと思っている」と意を固めた。つまり、FIFAの分析レポートが元々持っていた自身の考えを後押しした格好であると言える。

■「自分たちの身の丈、現実を知ることが大事」

こうして迎えようとしている仁川アジア大会。日本は1998年のバンコク大会以来、2年後の五輪を目指す世代の選手がチームを組んで出場し、前回2010年の広州大会では関塚ジャパンが初優勝を遂げた。今回は連覇が懸かっている。

手倉森監督は韓国へ向かう前の最後の調整試合となった9月10日の大学選抜チームとのトレーニングマッチ(0-0)の後、初戦のクウェート戦に向け、「クウェートのストロングを理解しつつ、ウィークを突いていく戦術をすり込んでいく。つなげれば勝てるわけではなく、その中でいかに相手の隙を突けるか。したたかに勝つ準備をしないといけない」と話していた。

今年1月に立ち上がったU-21日本代表の最終目的地は2016年8月のリオデジャネイロ五輪だ。来年にはリオ行五輪出場権を獲得するためのアジア予選が控える。手倉森監督は「リオ五輪に向けてチームを100に近づける中、まだ50くらいの出来でアジア大会を戦う」と現状を説明したうえで、「今やれる中での戦いであることを選手に分からせる。今の自分たちの身の丈を知るということが大事。現実を知ってアジア大会に臨むことが大事だ。公式戦だから勝たなければいけない」と力を込めた。