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【ソチ五輪女子ジャンプ】打倒・高梨を誓う日系カナダ人ジャンパー

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

タナカアツコ、22歳

女子ジャンプ初代女王の座に最も近いとされる女子ジャンプ日本代表・高梨沙羅に、“日本育ち”の強敵がいる。

カナダ代表のタナカアツコ(田中温子)だ。

「スキーのジャンプは天候や風といった要素が特に大きく影響する屋外スポーツ。もし幸運をつかんだら、彼女(高梨)に勝つことができるでしょう。もっとも、もし彼女が幸運をつかんだら、彼女を打ち負かすのはとても難しいですけどね」

ソチ五輪のスキー会場であるゴーリキメディアセンターで行われたカナダチームの記者会見。22歳になったばかりのタナカは力強く言った。

単に大言を口にしているだけではない。ソチ五輪シーズンの今季は、サマーグランプリで6戦中10位以内に3度入り、総合4位につけた。中でも9月にカザフスタンで開催されたサマーグランプリでは3位と力を見せている。さらには、1月12日に札幌で行われたワールドカップで4位になり、状態はますます上向きだ。

1992年1月25日、カナダのカルガリーで日本人の両親の間に生まれた。父は元ジャンプ選手で兄もジャンプにいそしんでいたことがきっかけで、タナカも10歳でジャンプを始めた。

13歳でワールドカップの前身であるコンチネンタル杯(米パークシティ-)で優勝。13歳という最年少優勝記録は今も破られていないという。16歳のときにも同大会で2勝目を挙げると、日本の関係者の目にも止まり、大学は札幌市の隣、江別市にある北翔大短大に進み、スキー部の一員として活動した。

バンクーバー五輪テストジャンパー

2010年2月にはバンクーバー五輪のテストジャンパーにも選ばれた。一方で全日本スキー連盟の強化指定選手となり、日の丸をつけてワールドカップに出場。しかし、その後も日本代表として大会に出るには日本国籍を取得する必要があった。考えた末、「自分が生まれたのはカナダ。カナダの方がやっぱり好き」と、カナダに戻った。

「私たち(女子ジャンパー)は2010年にはオリンピックに出られなかった。でも、それ以降、女子ジャンパーたちはより強くなった。今、私たちは世界にわたしたちの持てる力を見せる用意ができています」と話したタナカ。高梨とは、北海道に在住していたころ、何度も一緒に練習した。「だから、親密な関係です」と笑顔を見せて言う。

だが、今回は勝負のとき。2010年当時と比べても大幅な成長を見せたかつてのチームメートを見つめる目は鋭い。

今季ワールドカップ13戦中10勝を誇り、鉄板の金メダリスト候補とされる高梨。目下のライバルは負傷から甦ったサラ・ヘンドリクソン(米国)だけとされているが、そんなことはない。日本には伊藤有希という実力者もいる。そして、タナカもいる。

「ソチ五輪でメダルを取るというのが私の計画。自分の首にメダルをかけることができれば、それはとても偉大なこと」と話したタナカ。長い間、五輪種目になる日を待ち望んできた女子ジャンパーたちのバトルに注目したい。

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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