前半の方が良かったんじゃないのかという“疑惑”

0-2で終わった日本代表vsブルガリア戦。試合後、いつも通り真っ先に取材エリアに姿を表した内田篤人は、「後半、良くなるのかなと思いきや、前半のが良かったんじゃねの疑惑」と、独特の言い回しで戦いを振り返った。

内田は3-4-3で戦った前半の45分間にプレーし、4-2-3-1へシステムチェンジした後半はベンチに退いていた。1年半ぶりの3-4-3は機能しなかったが、いつものシステムに戻せば日本らしさは出せるだろう、点を取ってくれるだろうと思って後半の戦いぶりを見ていたに違いない。

ところが後半開始から20分過ぎまではチャンスを量産したが、その時間帯に決め切れないまま同25分にオウンゴールで2失点目。日本はその後も点を取れず、無得点でザックジャパン初の連敗を喫した。

冒頭のコメントににじみ出ていたのは、後半の戦いぶりへのイライラ感だ。普段の内田は「自分が出ていない時間のことを話すのは好きじゃない」と、常に仲間をリスペクトする選手だ。そして何より、どんな結果でもさばさばと消化して先を見据えることのできる、チーム切ってのオプティミストである。

楽観主義者の内田だが

例えば、自身がPKを献上して1-1に追いつかれた12年6月12日のW杯アジア最終予選オーストラリア戦ではこう話していた。

「PKになる前から2、3本、スタジアムが『PKじゃねえか』っていうどよめきがあって、審判も『取り戻さないと』っていう心境だったのかな。サッカーではよくあること。気を付けようとは思っていたけど、あれで(ファウルを)取られたら……。でもしょうがないので、反省して、オフです」

試合終了後から取材までの短い時間でしっかりと切り替えられるメンタルを見せていた。

W杯出場決定を逃す敗戦となった今年3月26日のヨルダン戦でも、唇を噛む選手がズラリと並んだ中で、「まあ、勝てれば良かったですけどね。6月にまたありますし、『終わった、もう行けないんだ』じゃないですから。今は疲れて下を向いているけど、自分たちは首位にいるし、終わったわけではないですから」とポジティブシンキングを崩さなかった。

ところが今回ばかりは、その内田が今までに見せたことのないような険しい表情を浮かべていた。

「今までと変わらず、『関係ないっしょ』と言いたいですけど、誰もが大事と分かっているこういう時期に勝てないのは精神的にも差を感じる。強いチームというのはここというときは絶対に負けないですから」

何が足りなかったのかという問いかけには、こう答えている。

「システムがどうこうじゃないですよね。前へのパワー。(ザッケローニ監督が)バックパスに怒っていたので、もっと前に行かないといけないんだろうなと思います。後ろ後ろじゃなく、前へ前へ、です」

決まり事を意識しすぎる日本人

話ながら試合を思い出していくうちに、煮え切らない思いが噴出してきたのか、この後は問わず語りとなった。

「決まり事を意識しすぎかな。窮屈に見える。そんなに意識しない方がいいと思うんですよね。日本人は監督に言われたことを忠実にこなす民族ですからね。海外でやっていると、こいつ監督の話聞いているの?という感じだけど、それで点が入ってしまえば別ですから。考えすぎず、でも約束事だけはしっかりやるということで」

10年7月にドイツに渡って3年。人種のるつぼであるブンデスリーガで奮闘し、欧州CLでのしびれる戦いを経験し、日本人の民族的特性をそれまで以上に感じるようになったのだろう。

決まり事にとらわれすぎということは内田自身、今までにも口にしたことがあるし、日本人は言われたことに従いすぎということは他の選手も言っていることではある。しかし、今回の語り口調はかつてな熱を帯びており、「脱日本人ノススメ」という趣だった。

初の連敗という現実を突きつけられたザックジャパンにとって、今一番怖いのは「3連敗」だ。6月4日のオーストラリア戦は引き分け以上ならW杯予選を突破できるが、実は得失点の関係で、負けてもW杯出条権を逃す確率は限りなく0に近いという、ぬるい状態。だからこそ危機感が募る。

「さすがに3連敗はない? いやいや、ズルズルいったらありますよ。引き分けでいいという状態からズルズルいくというのがありますからね。それは避けたいという気持ちは皆あるけど…」

オーストラリア戦まで5日間。チームにはこの後、本田圭佑や岡崎慎司、酒井高徳が合流するが、合流は試合前日になる見込みだ。長距離移動や時差の問題を考えると、彼らを特効薬として期待するのは荷が勝ちすぎ。やはり、ブルガリア戦の選手を中心に試合に臨むことになるだろう。

ふがいない試合が続き、閉塞感が漂っているザックジャパン。この先、上へ上へと突き抜けて行くには、内田の言う「脱日本人ノススメ」が意味を持ってくるのかもしれない。