【都知事選】「7つのゼロ」だけじゃない 小池知事は27の公約をいくつ実行したか〈上〉

2016年都知事選の選挙公報(筆者撮影)【注:今年の選挙公報ではありません】

 1400万の人口を擁する首都・東京のトップを直接決める知事選挙が7月5日、投開票を迎える。そんな中、小池百合子知事が4年前に掲げた「待機児童ゼロ」など、いわゆる「7つのゼロ」の目標を達成していない、と指摘する報道が散見される。だが、それは公約のほんの一部でしかなく、実は小池氏は4年前「セーフ・シティ」「ダイバー・シティ」「スマート・シティ」というキャッチフレーズを使い、「3つの新しい東京を作る」として27の課題解決を約束していた。ところが、その公約集は最近、ホームページから跡形もなく削除され、「東京大改革2.0」という新しいキャッチフレーズと「公約」集にとって代わられてしまっている。

2016年都知事選で掲げられた公約集。小池百合子氏のホームページより(現在は削除)
2016年都知事選で掲げられた公約集。小池百合子氏のホームページより(現在は削除)

 小池氏が4年前に有権者に示した「東京大改革」の公約をどれだけ実行に移してきたのか、「7つのゼロ」にだけ注目が集まり、ほとんど検証されていない。そこで、調査報道とファクトチェックのメディア、インファクト(InFact)の都知事選検証チームが、4年前の公約を徹底検証し「評定」を試みた。公約の一つ一つについて、判断指標となるデータなどを調査。知事がリーダーシップを発揮して課題解決・福祉増進に寄与したか、目標(知事就任後に設定された政策目標を含む)を達成したか、という観点から「優」「良」「可」「不可」「保留」「評定不能」の6通りの評定を行った。私を含め、弁護士やジャーナリスト、地方行政専門家からなる5人が都庁の公開資料を調べたり、担当部署に取材したりした結果に基づいている。

 問われるべきは「ゼロ」を達成したかどうか、ではない。問題解決に向けて着実に取り組み、都民の福祉が向上したのかどうかだ。自ら掲げた目標を達成すれば「優」だが、未達成でも課題解決に貢献していれば「良」とした。政策は一応やったが、問題解決への寄与が不十分なら「可」、何もやっていないか、やっていても後退していれば「不可」とした(評定方法の詳細はこちら)。公約に基づく実績検証は私たちとしても初の試みであり(海外では、米国のファクトチェック団体の実践例などがある)、難しさもあったが、その点は最後の回で総括したい。

 自分が大事だと思う政策が実行に移されたのか。有権者の判断材料になれば幸いだ(気になる公約については、インファクトの詳細な検証記事を参照)。

 27項目の検証結果を3回に分けて紹介する。第1回は、小池氏が掲げた「セーフ・シティ」の8つの公約についてーー。

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2016年都知事選の小池百合子氏の公約集より)

8つの公約中、4つが「不可」か「評定不能」か「保留」

 まず、「不可」と「評定不能」から。「不可」と評定されたのは、政策を実施していないか、実施したとしても小池都政以前より後退しているケース。「評定不能」は、公約に掲げた目標があいまい過ぎて、判断指標がなく、評価できないケースだ。次の3つの公約がそれに該当すると判断された。

「住宅の耐震化・不燃化を2020年までに加速させる。」→<不可>

「多摩格差をゼロへ。」→<不可>

「環境に配慮しつつ、島嶼での命と安全を守る。」→<評定不能>

「商店街維持発展のために、事業承継対策と空き店舗の活用などを推進する。」→<保留>

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 「住宅の不燃化」は小池都政前に設定された目標達成時期が5年も後ろ倒しになり、「耐震化率」については調査結果が公表されていなかった。予算も年々削減されており「2020年までに加速させる」という公約は守られたと言えない。

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 「多摩格差」は「7つのゼロ」の一つだが、具体的にどのような「格差」を是正するのか、任期中、小池知事の口から明確に語られることはなかった。多摩地域と特別区の所得格差はやや広がっており、都立高校1校あたり高校生人口の格差も何ら是正されていなかった。小池氏は「交付金を増額した」と強調するが、それだけでは格差是正がなされたとは言えないだろう。

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 「島嶼での命と安全」に関しては、都議会で表明した津波避難施設の整備などが確かに行われた。だが、知事就任前から決まっていた計画が実行されただけで、小池知事でなくても都政の中で実現していたであろうものばかり。公約の曖昧さも考慮し「評定不能」となった。

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 「商店街維持発展」に関しては、確かに様々な助成金制度は実施していることが確認できたものの、定期的に行われている商店街の実態調査が公表されていない。つまり、取り組みはしたが、その効果を見るための判断指標が出ていないため、「保留」となったものだ。

「優」と判定されたのは2つ

逆に「優」との評定がついたのは、次の2つだ。

「新たなテロへの脅威に備え公共施設や重要施設でのセキュリティー対策を本格化させる。」→ <優>

「災害時にも使える乳児用液体ミルクの普及を図る。」→ <優>

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 「セキュリティー対策」に関しては、羽田空港テロ対処部隊庁舎を完成させるなど、東京五輪を控えて準備を着々と進めてきたと評価できる。

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 「乳児用液体ミルク」に関しては、国内での製造・販売が可能になるように国に働きかけを続け、省令改正により実現している。都としても備蓄を行い、災害被災地に対して救援物資として乳児用液体ミルクを提供したとのことであり、普及に向けて実行に移されてきたと評価できよう。

あの目玉政策は「可」 その理由は

 残り2つは次のような評定結果となった。

「都道の電柱ゼロ化、技術開発を支援する。」→<可>

「町会・消防団の機能を高め、支援する。」→<可>

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 「都道の電柱ゼロ化」も「7つのゼロ」のスローガンの一つだ。電柱地中化率は少しずつ上がってはきているのだが、小池都政前より減速化していたのが「可」にとどまった理由だ。

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 「町会・消防団の支援」についても新しい取り組みなどはあったが、消防団員の減少は食い止められず、目立った成果は見られなかった。

 「セーフ・シティ」8つの公約の評定は以上の通りだ。次回以降「ダイバー・シティ」9つの公約、「スマート・シティ」10個の公約についても、順次、調査結果をお伝えしていく。(<中>に続く