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【新型コロナ】死者が日本を大幅に上回るドイツがロックダウン解除へ

楊井人文弁護士
ドイツのメルケル首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ドイツのメルケル首相が6日、新型コロナウイルス感染拡大阻止のための制限措置を大幅に緩和し、全店舗の再開を許可すると発表した。時事通信などが報じた。サッカーも無観客での再開が許可される。ドイツでは3月中旬から事実上のロックダウンを開始したが、欧州主要国の中ではいち早く、社会・経済活動の正常化に向けて大きく舵を切ることになった。

ドイツの死者増加数は日本の9倍超 ピークより半減

 ドイツは、欧州主要国の中では新型コロナの感染者数・死者が最も低い水準で推移してきた。だが、日本と比べると、かなり高い水準だ。

 WHOの最新レポート(5月5日)で比較すると、ドイツは感染者16万3860人、死者6831人。対する日本は感染者1万5231人、死者521人。

 両国の検査体制、検査数は大きく異なるため、感染者数を比較することにはあまり意味がないかもしれないが、100万人当たりの死者数で比較すると、ドイツは82.1人で、日本の4.1人の約20倍に上る。

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 過去1週間の新たな死者数でみても、ドイツは918人、日本は145人。日本の死者は1日平均約20人に対し、ドイツは1日100人以上の死者が今も出ている。(*1) 人口で補正すると、ドイツの死者増加数は日本の9.6倍となっている。

 それでも、ドイツの感染者増加数はピークの4月上旬と比べ5分の1になり、死者増加数もピークより半減した。(*2)

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ドイツは4月から段階的緩和 学校、博物館や子供の遊び場も再開

 ドイツは厳しいロックダウン措置を解除し、全店舗の営業を認めるものの、社会・経済活動が完全に正常化するわけではない。

 各報道を総合すると、互いに1.5メートル以上の距離をとる行動制限、店舗内の人数制限、公共交通機関などでのマスク着用義務は継続される(ロイター通信など)。

 ロックダウン解除の背景には、経済への深刻な影響があるとみられる。ドイツの観光業界は3社に2社が倒産の危機に直面。マイナス成長や失業者の増加が予測されている

 最大のバイエルン州が緩和方針を発表するなど、制限緩和に慎重なメルケル首相に圧力がかかっていたようだ。

 すでにドイツの制限緩和措置は段階的に行われてきた。

 まず、4月20日から書店や小規模の店舗などの営業再開が認められ、学校も5月4日から再開されることになった。さらに、5月上旬から博物館など文化施設、子供の遊び場なども再開されることが決定していた

 他方、日本はドイツなど欧米各国に比べ、重症・死者はかなり低い水準で抑えてきたが、政府は緊急事態宣言の延長(5月7日〜31日)を決定。東京都など都市部の大半で休業や自粛が継続し、学校の休校も延長されることになった。

 日本の措置自体はドイツより緩いが(ドイツのロックダウンは市川衛氏の記事も参照)、休業期間はドイツより長期化しつつある。学校もドイツは1ヶ月半で再開することになったが、日本では3月から始まった休校が3ヶ月間続くことになった。

 宣言延長・解除の基準が明確でないとの指摘も高まっている。安倍首相は宣言の解除基準を14日までに策定する方針を明らかにしている

(*1) WHOレポート(4月29日〜5月5日)の日独両国の新規死者数(new deaths)を合算。

(*2)札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所のデータを参照。ドイツの100万人あたりの感染者数(過去7日間の増加)はピークの4月5日が467.48人、5月5日が89.79人。100万人あたりの死者数(同)はピークの4月21日が19.44人、5月5日が10.96人。

弁護士

慶應義塾大学総合政策学部卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHooを運営(〜2019年)。2017年、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年、共著『ファクトチェックとは何か』出版(尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー)。2023年、Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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