加計問題報道 安倍首相が呼びかけたファクトチェックの結果 (下)

加計学園問題に言及する安倍晋三首相(10月8日、日本記者クラブ党首討論会映像)

(日本記者クラブ党首討論会で、安倍晋三首相が加計学園問題をめぐる朝日新聞の報道を批判し、国民にファクトチェックを呼びかけた。前回に続き、八田達夫・国家戦略特区ワーキンググループ座長、加戸守行・前愛媛県知事、前川喜平・前文部科学事務次官の報道の扱いと、この問題に関する産経新聞の報道を検証する。)

前川証言と比較

 首相発言(およびこれを擁護した産経論説委員のコラム)の主旨は、朝日の報道において、加戸・八田両氏の発言の扱いが前川氏より格別に少なかった、という点にあるとも考えられる。そこで、閉会中審査における3氏の報道量(発言を取り上げた文字数)を比較した。

 その結果、前川証言の報道量は、多い順に、読売>毎日>朝日>産経。加戸証言の報道量は産経>読売>毎日>朝日。八田証言の報道量は読売>朝日>毎日>産経だった(ただし、産経の東京版は夕刊を発行していない)。

 前川証言を「1」としたときの加戸証言の比率は、産経(0.97)、読売(0.31) 、毎日(0.23)、朝日(0.21) だった。同様に、前川証言を「1」としたときの八田証言の比率は、読売(0.12) 、朝日(0.08)、毎日(0.04)、産経(0) だった。

 以上のとおり、加戸証言の報道量が最も少なかったのは朝日だった。とはいえ、前川証言に比べて少なかったことは朝日に限らず、産経を除く3紙すべてに当てはまる

 八田証言の報道量は、全国4紙とも加戸証言よりも少なかったが、朝日は読売に次いで多かった。よって、全国紙の中でみれば、朝日が格別に八田証言の報道が少なかったと言うことはできない。((上)のグラフ参照。詳報はGoHooで)

「産経ニュース」に掲載された朝日新聞などの報道を批判した記事

7月12日掲載(左)は1.2万回シェアされ、10月に再掲後も拡散。右は阿比留論説委員のコラム。
7月12日掲載(左)は1.2万回シェアされ、10月に再掲後も拡散。右は阿比留論説委員のコラム。

産経の論説委員コラム:首相の事実誤認を指摘せず

 阿比留論説委員のコラムは、首相と坪井氏(朝日の論説委員)のやりとりを紹介しつつ、朝日と毎日が7月11日付朝刊で加戸証言を「一般記事中で一行も取り上げず、審査の詳報の中でごく短く触れただけ」と指摘した。

 厳密には、朝日は一般記事の末尾で数行だけだが、間接的に加戸氏が証言したことに触れた記述があった。他方、詳報記事ではやや目立つ見出しで加戸証言を報じており((上) 参照)、全体として毎日より扱いは大きかった。

 他方、産経のコラムは「証言された次の日は全く(報道)しておられない」との首相発言を引用しておきながら、加戸氏の24日の証言に関する朝日の報道には言及しなかった。なお、阿比留論説委員は、首相が「7月10日」の加戸証言について述べたかのように引用を補充しているが、首相はその日を特定した発言をしたわけではなかった。

 八田証言についても「ほとんど(報道)しておられない」との首相発言を引用しておきながら、朝日が実際にどう報じていたかは全く言及していなかった。産経が八田証言を翌日全く報じていなかったことにも触れていなかった。

 要するに、産経のコラムは、もっぱら10日の加戸証言に関する報道にのみ言及し、24日の加戸・八田両氏の証言を朝日が一般記事でも報じていたことなどには触れず、首相発言が事実に基づいていたかのような誤った印象を与える論評をしたと言える

産経ニュースサイトの再掲記事の問題

 産経は、党首討論会で首相が朝日報道に言及した直後、ニュースサイトに7月12日付朝刊の記事を、「加戸前愛媛県知事の発言をどれだけ取り上げたか」と題する表とともに再掲した

 この記事と表は、11日付朝刊で10日の加戸証言を取り上げた量にしか言及しておらず、それ以降の加戸証言に関する報道が含まれていない。注意深く読めば気づくが、表に調査対象日が書かれていないため、これが加戸氏に関する報道の全てであったかのような誤解を与えた可能性がある。(了)

GoHooは、FactCheck Initiative Japanの総選挙ファクトチェックプロジェクトに参加しています。