中日新聞「新貧乏物語」捏造 指摘の隠蔽で発覚遅れ 過去には大きな反響も

捏造が判明し取り消しとなった記事(6月21日付東京新聞)※一部加工しています

中日新聞は10月12日付朝刊で、5月19日付で掲載した「新貧乏物語(第4部)子どもたちのSOS」3回目の記事に、担当記者が事実と異なる取材メモを作成したことによる誤った記述があったとして記事取り消しのおわび記事を掲載した。5月17日付で掲載した連載第4部1回目に掲載した写真にも問題があったとして、写真のみ取り消した。この問題は、担当記者が家族から指摘を受けていたものの上司に伝えず、問題の発覚が遅れていたことが、日本報道検証機構の調査でわかった。(追記あり、続報予定

取り消し措置がとられた記事の見出しは「病父 絵の具800円重く」。同社東京本社が発行している東京新聞にも同じ記事が6月21日付朝刊に「父親急病 突然の転落 教材費800円『払って』言えない」との見出しで掲載されていた。記事には、岐阜県の中学3年生が仮名で登場。父親が脳梗塞で倒れた後、会社を解雇され、収入が激減して家族の生活が苦しくなっていった様子などをレポートしていた。

「おわび」記事によると、教材費や部活の合宿代も払えない、などとした3カ所の記述が事実でないことが確認され、担当記者が「原稿を良くするため想像で書いてしまった」と話したという。他の事実と異なる記述について、平田浩二編集局次長は当機構の取材に「取材したご家族のプライバシーにかかわる」ため、答えられないとした。一からの捏造ではなく実際に取材自体は行っていたものの、記事の重要な部分に複数の捏造が判明したため、記事全体の取り消しになったとみられる。

一方、「おわび」記事では「8月末に関係者から指摘があり、少女のご家族や記者本人の聞き取りなど社内調査を進めた」としている点について確認したところ、実際はもっと前に家族から担当記者に家族から指摘が来ていたものの、それを上司に報告していなかったため、事態の把握が遅くなったと説明した。

さらに、8月末から社内調査が行われながら、今回の「おわび」掲載まで1ヶ月以上を要した点についても、平田氏は「ご家族をはじめ社内の関係者の聞き取り調査に時間を要しました」と回答した。当機構の調査では、10月上旬の時点で、中日新聞のニュースサイトに今回取り消された記事は掲載されていた。

中日新聞2016年10月12日付朝刊30面
中日新聞2016年10月12日付朝刊30面

5月17日付の連載第4部1回目の「10歳 パンを売り歩く」と題した記事は、パンの移動販売で生計を立てる母親を手伝う少年の後ろ姿を撮った写真を掲載。しかし、撮影場所が実際の販売現場ではなく、担当記者の指示で、関係者の自宅前で撮影されたものだったことから、写真の取り消しとなった。

臼田信行・名古屋本社編集局長は「記者が事実と異なることを自ら知りながら書いたことは到底許されません。深くお詫び申し上げます。今回の事態を極めて重く受け止めています」として記者などを処分する方針を示した。

これまでに連載は44回 読者から1000万寄付も

中日新聞・東京新聞は年初から「新貧乏物語」の連載をスタート。これまでに、第1部「悲しき奨学金」(8回)、第2部「老いて追われる」(7回)、第3部「非正規スパイラル」(8回)、第4部「子どもたちのSOS」(7回)、第5部「18歳の肖像」(7回)、第6部「年金プア」(7回)の連載が行われた(特集を含む)。

匿名の読者から現金が届いたことを伝える東京新聞2016年5月24日付朝刊1面記事(一部)
匿名の読者から現金が届いたことを伝える東京新聞2016年5月24日付朝刊1面記事(一部)

東京新聞によると、第1部「悲しき奨学金」の連載を読んだ東京都内の自動車教習所運営会社の社長が社員の奨学金利用状況を調査し、助成制度を導入したほか、「平等」という差出人から連載への感想文とともに現金1000万円が同紙社会部に届くなど、連載は大きな反響を呼んできた。(*)

中日新聞社は、「新貧乏物語」連載全体を調査したが、この2本の記事以外に問題は見つからなかったとしている。連載の今後について、平田編集局次長は「連載は継続します。事実に忠実な報道に努めます」とコメントした。

【追記】

中日新聞、東京新聞の10月30日付朝刊に検証記事が見開き2面で掲載された(記事全文)。(2016/10/30 11:30)

(*) 東京新聞2016年4月10日付朝刊「教習所運営会社が奨学金返済を支援 本紙連載『新貧乏物語』きっかけ」、同年5月24日付朝刊「読者から1000万円 差出人は『平等』/思ってくれる人がいる 若者たちの救いに」。