「独、集団的自衛権で犠牲者」と誤報した朝日新聞 不備を認めるも訂正せず

ISAFに参加したドイツ軍兵士

朝日新聞2014年6月15日付朝刊1面トップ
朝日新聞2014年6月15日付朝刊1面トップ

【GoHooトピックス5月30日】朝日新聞は5月30日付朝刊で、安保法制の国会審議に関する記事の中で、昨年6月、「集団的自衛権の事例」として独軍がアフガニスタンでの後方支援で55人の犠牲者を生んだと報道した記事に言及し、「派遣全体が集団的自衛権に基づくという誤解」を招いたと釈明した。日本報道検証機構は朝日新聞に対し、独軍が55人の犠牲者を出した事例は集団安全保障の枠組みであり集団的自衛権ではないことや派兵時期の事実誤認を指摘していた。朝日新聞は今回初めて記事の不備を事実上認めたものの、訂正記事は出さなかった。(既報あり=【旧GoHoo注意報】「独軍55人死亡」 集団的自衛権の事例とミスリード【GoHooコラム】これくらいの訂正記事は出そうよ

朝日新聞は昨年6月15日付朝刊1面トップで、シリーズ企画「集団的自衛権 海外では」の第1回「後方支援、独軍55人死亡」を掲載。冒頭で「集団的自衛権をめぐる海外の事例のうち、ドイツの経緯を追った」と明記し、「北大西洋条約機構(NATO)の域外派兵に乗り出したドイツは、昨年10月に撤退したアフガニスタンに絡んで計55人の犠牲者を出した」などと報じた。しかし、実際は、独軍はNATOの集団的自衛権に基づきアフガンに特殊部隊を派遣した際に犠牲者を出していなかったことや、独軍の犠牲者は「集団安全保障」の枠組みである国際治安支援部隊(ISAF)に参加したことによるものだったことを説明しておらず、あたかも「集団的自衛権」の行使で55人の犠牲者を生んだかのように報じていた。

朝日新聞2015年5月30日付朝刊4面
朝日新聞2015年5月30日付朝刊4面

5月30日付朝刊に掲載された記事は「独軍と同じ道、野党懸念 憲法解釈変えアフガン派兵、55人犠牲 PKO法改正案」との見出しで、日本共産党の志位和夫委員長が28日の安保法制の国会審議で、独軍がISAFに参加して55人の犠牲者を生んだ事例に言及したことを取り上げたもの。記事は、独軍が当初、アフガンに集団的自衛権で派兵した後、集団安全保障の枠組みとして発足したISAFにも参加した経緯を解説。記事の最後で昨年6月15日付記事に言及し、集団的自衛権から集団安全保障の枠組みに切り替わった経緯に触れなかったことにより「派遣全体が集団的自衛権に基づく」という誤解を招く記事だったと認めたうえで、「今回、関連の記事を掲載するにあたり、記事の中で経緯を詳しく説明しました」と釈明した。しかし、訂正や読者へのお詫びという形はとらず、5月30日現在、「朝日新聞デジタル」にも昨年6月15日付記事はそのまま掲載されている

昨年6月15日付記事の問題点は、静岡県立大学の小川和久特任教授や西恭之特任助教が指摘し、GoHooでも詳報した。しかし、訂正されずに放置されていたことから、当機構が今年3月、朝日新聞社に対し質問書を送付。同社広報部は同月6日に回答したが、「今後の安全保障制度をめぐる報道などの中で、より丁寧でわかるやすい説明を心がける」としただけで、記事の不備も認めていなかった(全文は後掲)。その後、当機構は、4月に新設されたパブリックエディター(PE)にも調査を求める質問を送ったが、5月30日現在、この記事に関するPEの見解は示されていない。

日本報道検証機構の質問に対する朝日新聞社広報部の回答(2015年3月6日)

企画『集団的自衛権/海外では』は、集団的自衛権をめぐる海外派兵の実相を紹介した報道です。ドイツのアフガニスタン派兵もその一環で取り上げました。後方支援であっても戦闘に巻き込まれ、命を落とす危険性があることを紹介した内容です。貴サイトご指摘のとおり、ドイツはアフガニスタンに派遣した際、集団安全保障の枠組みであるISAFとともに、集団的自衛権に基づく派兵もしています。集団的自衛権、集団安全保障の枠組みについては、今後の安全保障制度をめぐる報道などの中で、より丁寧でわかるやすい説明を心がけるとともに、貴サイトなどからご指摘のあった様々な点をいかしてまいりたいと思います。

昨年6月15日付記事が掲載されたのは、集団的自衛権の憲法解釈の変更などが焦点となっていた頃で、約2週間後の7月1日、安倍内閣は集団的自衛権の限定的行使を認める閣議決定をした。「現に戦闘行為を行っている現場」以外での後方支援を可能としたものの、ISAFのような集団安全保障措置の枠組みに自衛隊が参加できるかどうかについて、閣議決定は明記していない。

  • 昨年6月15日付朝刊1面の記事画像の説明で「7月15日付朝刊1面トップ」とあるのは「6月15日付朝刊1面トップ」の誤記でした。訂正しました。