スタンプを世界で15億DLさせた男が語る「ウケるスタンプ」とは?

1億ダウンロードを達成したスタンプたち

日常のコミュニケーションに不可欠な存在となったスタンプ。皆さんもLINEやFacebookで使わない日はないのでしょうか?そんなスタンプで世界累計15億ダウンロードを達成し、新たなキャラクタービジネスを展開しているクオン社という会社があります。彼らはなぜ人気スタンプを作れるのか?そして、どのようなビジネスを行っているのか?社長の水野和寛氏を取材しました。

クオン社社長 水野和寛氏
クオン社社長 水野和寛氏

柳内:まず、2016年10月末日での当社のスタンプの累計ダウンロード数が、全世界合計で15億件(無料、有料の合計)を突破したことを発表されました。これは国別に言うと、だいたいどのくらいの割合なんでしょうか?

水野:ダウンロード数的には海外比率が99%です。これは、スタンプの使われ方の違いが大きいです。日本だと、スタンプは買うもので、海外だと、プラットフォーマーが無償ユーザーに提供するのが一般的です。

柳内:海外シェアが圧倒的なのが驚きました。海外のメッセンジャーアプリはスタンプ無料というのが大きいんですね。

水野:なのでスタンプでの販売売上だと圧倒的にLINEさんが多く、ダウンロード数だと海外のFacebookやWechatが多くなります。

柳内:LINEスタンプは、印税的に売上がクオンさんに入ると思うので、ビジネスとして成立すると思うんですが、無償スタンプはビジネスになるんですか?

水野:無償スタンプは、プラットフォーマーが版元にロイヤリティを払うケースと、完全に無償の場合がありますね。完全に無償で提供する無料スタンプについては、認知度を高める手段として考えています。

柳内:完全無償でまずユーザーに届けて、認知度を高め、その後のキャラクタービジネスに活かすという考え方ですね。フリーミアムモデル的な。

水野:はい、3年間でトータル15億ダウンロードのうち、1億ダウンロード以上の成果を出せたキャラクターが6キャラいるんですが、その6キャラはいずれもライセンスビジネスがスタートしています。

柳内:1億ダウンロードはすごいですね。どんなキャラか教えてもらえますか?

水野:エリス、Mr.EGG (いずれもWechatで)、シュガーカブス、ビジネスフィッシュ、ニャンタうん(Facebook Messengerで)、ぴよまる(Facebook Messenger、LINE、Zalo(※ベトナムNo.1chat)で)ですね。(下記画像たち)

画像

柳内:見たことあるやつばっかり。これクオン社作だったんですか!これらのヒットスタンプ、気になるのは制作体制です。どんな風に企画・制作されているんですか?

水野:クオン自体は2011年に設立して、もともと自らメッセンジャーアプリを作っていたのですが、2012-13年ごろからスタンプやキャラクター制作にシフトしました。で、2012-2013年頃はLINEさんはスタンプ強かったものの、海外のチャットアプリはスタンプまだまだこれからだったのでWechatやFacebookに、直接話をしに行ってニーズなどを聞いて作ってました。その時はとにかくたくさん数を作る感じで。。おそらく600キャラクターくらいすでに作っています。

柳内:まだ開拓が進んでないプラットフォームに、いち早く仕掛けたわけですね。600ものキャラクターを大量生産できるのは、社内にデザイナーがいるんですか?企画からリリースまでのプロセスが気になります。

水野:社内に専属のデザイナーを抱える形にしています。

柳内:スタンプ職人が社内にいるんですね、すごい。

水野:海外スタンプについては、今は地域別、国別に使われるメッセージの違いや、好まれるキャラクターの違いを沢山リリースすることによって把握できてきました。例えばですが、1.3億ダウンロード突破してる「Business FIsh」。日本とアメリカでよく使われるスタンプが違うんですが、なんだと思いますか?今まで両方を当てた人いません。

柳内:それは当てたいですね。直感ですけど、日本はおじぎで、アメリカはCome on?

水野:惜しい!日本は合ってますが、アメリカはI LOVE YOUでした。

柳内:そうなのか、しまった!

水野:やっぱり国によってウケるものが全然違うという事例ですね。あと少し話がそれますが、もともと僕自身がデコメのサイトを過去に作っていまして、一応日本で一番大きかったんです。その時のメンバーや、その時のノウハウを最大限活用しています。

柳内:なるほど、スタンプとガラケーのデコメって似ている文化ですもんね。そこでの人材やノウハウが活きているわけですね。

水野:はい、デコメはグローバルではなかったですが、スタンプはグローバルな文化になりましたね。

柳内:国によってウケるものが全然違うという話がありましたが、日本・アジア・アメリカだとどう違うんですか?

水野:日本はスタンプ及びキャラクターの進化が世界で最も進んでいます。表現的には、会話の合間を埋めるちょっとした感情表現、合いの手、ネタ。これらの微妙な差異を楽しめるリテラシーの高さが特徴です。なので作り手は微妙なネタのトレンドをLINEユーザーの動向や他のスタンプクリエイターの動向を見ながら作る必要があります。キャラの造形も、進化しすぎていて、もはや普通に可愛い、カッコいいものは受けない。ゆるい、キモい、ギリギリ素人ぽいなどの要素が必要になってきます。ストレートに可愛い、カッコいいキャラクターの造形のアンチ(もしくはカウンター)的な表現になってる気がして、これは進化だと思ってます。ちなみに12/5時点でLINEクリエイターズの3位と5位に入ってる弊社の「キモ激しく動く★ベタックマ」というスタンプはそれを意識して作りました。

キモ激しく動く★ベタックマ
キモ激しく動く★ベタックマ

柳内:なるほどー日本は複雑ですね。アジアは?

水野:アジアは、スタンプの表現としては、日本に近くい会話の合間を埋める感情表現に加えて、アメリカのようなストレートな表現もある感じですね。キャラの造形は日本の二頭身キャラは受けるし、まだ、ストレートにかわいい、カッコいいキャラクターがそのまま受けます。今後は、ゆるキャラ、キモいキャラも日本同様もっと流行りそうですね。

柳内:日本の流行を後追いしているのかもしれませんね。アメリカはどうですか?

水野:アメリカはストレートな表現がメインで、メッセージが分かりやすいもの。キャラ造形的にはアジア的な二頭身の可愛いキャラはニッチな扱いになってしまうので全然作り方変えないとだめですねー。

柳内:地域によってこれだけ違うんですね!面白いです!!こんなキャラにしよう、みたいなことはデザイナーとは別にプロデューサーがいるんですか?

水野:ケースバイケースで、デザイナーが企画も含めてやることもあれば、企画者(プロデューサー)が別に入るケースもあります。いずれの形でもヒットは出せているので、どっちがいいとは言い切れませんねー。

柳内:ケースバイケースなんですね。リリース後の検証や改善も、ゴリゴリやってるものなんですか?

水野:そうですね。海外と日本では使われるスタンプのシチュエーションが全く違うので、プラットフォーマーからもらったデータを細かく分析して次のクリエイティブに反映しています。

柳内:そこでデータを活用するわけですね。私もクリエイティブ系企業にインタビューしていますが、データをクリエイティブに反映し、PDCAを回せているところが、順調に成長しているように思います。

水野:そうですね。企業でやるからにはいかにヒットを再現できるか、みたいなところが鍵だと思います。

柳内:リリースにもありましたが、スタンプを「新しい時代のキャラクター認知手段」と位置づけて、クロスメディア展開していくのは、非常に興味深いと思いました。日本でも「うさまる」などはスタンプ発キャラクターとして、有名になってます。クオンさんでは、具体的にどんな展開を考えていますか?

水野:実は、先ほど挙げた海外で人気のあるキャラクターのうちいくつかは、SNSやグッズにとどまらず、アニメーション化の話も進行しています。従来のテレビを中心にしたアニメというより、海外のネット配信サイトで、アニメを流しつつ、スタンプを出して、グッズ、企業利用みたいな展開が2017年は幾つかのキャラクターで実現できそうです。

柳内:まさにクロスメディア戦略ですね。そのスタート地点がスタンプというのは、スマホ時代ならではと思いました。

水野:そうですね。チャットアプリって一番身近なメディアじゃないですか。毎日使ってるので接触回数が多いですからね。

柳内:本当にそうですね。具体的に、売上などの数字の目標はありますか?

水野:売上の目標ではないのですが、キャラクタービジネスの成功例として、そのキャラクターでの市場規模100億円というのが一つあるので、スタンプ発のキャラクターで市場規模100億円のキャラを作りたいと思っています。それも複数。

柳内:世界が市場だとその可能性もありえますね!楽しみです!非常にオリジナリティの高い事業をされているように思いますが、他社でベンチマークしているような会社はありますか?

水野:あまり似たような会社はないかもしれませんね。少なくともスタンプやキャラクターの領域では日本のクリティティビティが圧倒的なので、海外の同業会社は意識してません。むしろ海外パートナーは沢山増やしています。

柳内:なるほど、今後の展開が楽しみです。インタビューは以上になります。ありがとうございました!

インタビュー内でも触れられていますが、スタンプそのものの売上だけではなく、スタンプをプロモーションツールにして、アニメなどの別メディアに展開していく、という新しいキャラクタービジネスに挑戦している点に私は注目しました。

これまで、キャラクターの認知度を上げるには、アニメやゲームが主な方法でした。しかし、スマホ時代にユーザーとの一番のコンタクトポイントはSNSであり、そこを狙った戦略だからです。

スタンプ発の人気キャラクターが生まれる日もそう遠くないかもしれません。