【音楽ビジネス最前線】人気ライブ 秘密は「限定感」と「参加感」 ~スナックJUJUの場合~

現代の音楽ビジネスにおいて、成否のカギは「ライブ」になった。YouTubeの普及などによりCDパッケージ市場が縮小トレンドの中、強烈な体験が提供できて、ソーシャルメディアなどで「自慢」できるライブ市場はどんどん拡大。2013年には遂にCDとライブの売上は逆転した。今は多くのアーティストが、ライブ・コンサートの動員に注力するようになっている。

「金融コラム(http://www.quick.co.jp/)」より引用
「金融コラム(http://www.quick.co.jp/)」より引用

そんなライブの世界において、右肩上がりの成長を遂げているアーティストがいる。シンガーのJUJUだ。JUJUのライブは下記のグラフのように、年を追うごとに増収を続けていて、倍率もどんどん高くなっており毎公演即時完売が続いているという。私もファンとして何度か足を運んでいるが、そのバイアスを差し引いても他のアーティストのライブとは一線を画している。

※イベント出演を除く。単独公演の数字。( )内は主な内容。

2007年:400

2008年:5000 (2008年2末~3頭に1stアルバムを携えての東名阪ツアーを初開催。2008年4月より月1でのカヴァーライブ「ジュジュ苑」スタート)

2009年:15000 (2nd ALリリース後)

2010年:30000 (3rd ALリリース後+10年10月10日 Special Live Request)

2011年:70000 (4th ALリリース後)

2012年:30000 (JAZZ+ジュジュ苑ツアー)

2013年:180000 (ベスト盤リリース後のホール・アリーナツアー+JAZZツアー+クラシックツアー)

2014年:150000 (10周年&5thアルバム後のホールツアー+JAZZ+さいたまスーパーアリーナ)

2015年:85000 (10周年のジュジュ苑アリーナツアー+JAZZ+FCライブ)

2016年:100000 (6thアルバム後のホールツアー+JAZZ+スナックJUJU)

2017年:100000動員越え予定(さいたまスーパーアリーナ2daysを含むスナックJUJUアリーナツアーが決定)

JUJUのライブがなぜ人気か?本記事ではその分析を通して、音楽ライブを成功のポイントを探っていきたい。

豪華アーティストとの一夜限りのコラボによる「限定感」

JUJUのライブで、まず注目すべき点は人気アーティストとの豪華コラボの多さである。

先日開催されたスナックJUJUでは、沢村一樹、鈴木雅之、萬田久子、ユーミン(VTR出演)などのそうそうたるアーティストがライブに登場し、JUJUと一夜限りのコラボレーションをした。

沢村一樹との共演の様子
沢村一樹との共演の様子
鈴木雅之との共演の様子
鈴木雅之との共演の様子
萬田久子とのコラボの様子
萬田久子とのコラボの様子

この「一夜限り」というのは、現代のエンターテイメントにおいては重要なポイントである。というのは、インターネットが普及し、気軽にエンターテイメントに触れられる現代において、「今ここでしか見られない」の価値が相対的に上がっているからだ。

テレビ番組においても、フジテレビ「FNS歌謡祭」やTBS「UTAGE」は、斬新なアーティストの組み合わせで、他では見られないコラボレーションを実現し、人気企画となっているが、ライブにおいても、ここでしか見られない「一点モノのプレミアム感」が、ライブ会場まで足を運ぶ強い動機となっているわけである。

練りに練られた観客参加型ライブ

さらにJUJUのライブで、他と圧倒的に違うのは、観客とのコミュニケーション量だ。

JUJUは観客に好きにしゃべらせる。「CD予約したよー!」とか「あの曲聴きたいー!」とか。「お前ら自由過ぎやろ」とツッコミたいくらい、ファンは好き勝手にJUJUに話しかける。

しかし、ここにもライブを成功させる秘密がある。それは「観客の参加感」だ。

前述の通り、観客はMC中に色んな事を大声でJUJUに語りかけるのだが、ここで光るのがJUJUのアドリブトーク力だ。JUJUは、観客から飛んできた掛け声に、必ず絶妙な切り返しをする。笑いが起こることも多い。芸人顔負けだ。

その様子は「スナックJUJU」というライブ名の通り、お客さん(観客)がJUJUママに会いたくて、話したくて、お店に来ているようだ。

音楽を聴くだけなら、YouTubeがある。アーティスト側は観客にライブに来てもらうための強烈な動機を創出する必要があり、そういう意味で、アーティストと観客がたくさん会話するライブはこれから増えていくだろう。ライブはスナック化していくのだ。

ちなみに、今回の「スナックJUJU」の構成には人気バラエティや舞台演出を数多く抱える、放送作家の鈴木おさむ氏が参加しているそうだ。歌だけでなく、MCコーナーにも本気。音楽ライブはどんどん総合芸術となってきていることがうかがい知れる話だ。

参加型コンテンツの極み「デュエットコーナー」

JUJUが2008年から続けているのカバーライブ「ジュジュ苑」には、さらなる観客参加型コンテンツが用意されている。それはJUJUと観客のデュエットコーナーだ。

JUJUとじゃんけんして、勝ち残った観客が、ステージに上がり、一流バックバンドの演奏でデュエットできるというコーナーだ。スナックでママと客がデュエットするイメージから出来た企画である。

私が先日お邪魔した「-ジュジュ苑スペシャル- スナックJUJU」では、39歳福岡在住のマスダさんがその権利を手にし、徳永英明の「レイニーブルー」をJUJUと熱唱していた。これも普通のライブではあり得ない光景である。

さらに、このデュエット企画で見られた面白い現象は、他の観客も大盛り上がりしていた点だ。彼がステージに向かって席を立った時、ステージに登る時、このライブ一番なくらいの拍手で迎えられていた。素人のマスダさんに、だ。

なぜここまでマスダさんに観客が熱狂したか?それはマスダさんに観客たちは自分を投影していたからだと思う。ぼくらの代表マスダさんがあのJUJUとデュエットしている。心配だからみんなでサポートしよう!そういう気持ちで固唾を飲んでいるのだ。

一般的なライブは、アーティストという神様を観客が崇め奉るという構図のものが多いが、JUJUのコンサートは、観客ひとりひとりが主役なれる空間つくりがなされている。

以前、参加者が主役でいられることがこれからのイベント成功のカギだという事を記事化したが、まさにそれを体現したものと言える。

ちなみにJUJUのレコード会社スタッフに確認したところ、デュエットコーナーは、仕込みなしのリアルガチでやっているそうだ。そのため、緊張のあまりステージでシドロモドロの人が登壇することも。しかし、それはそれでいいと思っているそうだ。

そういう「トラブル上等!」のメンタリティで、リスクを取るからこそ、一夜限りの、今ここでしか見られないライブが実現できているのだろう。

今ここだけの「限定感」と観客が主役でいられる「参加感」。これからの音楽ビジネス、ひいてはイベントビジネスにおいて、私はこの2つがキーワードになってくるように強く感じている。