インスタグラム広告最前線 ~国内初Instagram PR会社独占インタビュー~【後編】

ビジネスの匂いに敏感なネット界隈の友人たちが、最近さかんに「インスタ、インスタ」と連呼するようになった。

話を聞くと、2015年10月にインスタグラムが運用型広告を開始したことをきっかけに、広告予算の一部が一気に流れて始めているという。

ご存じの方も多いと思うが、インスタグラムは全ユーザーの7割が女性で、うち43%が18~29歳という広告媒体として見ると、極めて価値の高いプラットフォームである。そのインスタが広告サービスを始めるとなれば、アドマンたちの注目度が上がるのも当然だろう。

一方で先日、公開した「インスタグラマーという新しい職業が生まれつつある件について」という記事も多くの人にシェアされる記事となり、個人が表現する場としても、インスタグラムは熱を帯びてきている。

そこで、本記事では、国内初のインスタグラマー・マーケティングの会社であるタグピク社の創業者の安岡あゆみ氏と、ディレクターの島崎レイコ氏に取材を実施。インスタグラムに広告ビジネス(※ここでいう広告はネイティヴ広告も含める)の現場がどうなっているのか?その実際を聞いてみた。

タグピク社CEO・安岡あゆみ氏
タグピク社CEO・安岡あゆみ氏
タグピク社ディレクター・島崎レイコ氏
タグピク社ディレクター・島崎レイコ氏

Instagram広告、クリエイティブの管理はどうしてる?

柳内「ちょっとまた話が戻るんですけど、インスタグラムの広告で言うと、キャスティングっていうのもポイントだと思うんですけど、広告のクリエイティブコントロールってどうされているのか。モデルさんに一任してるのか、カメラマンを付けているのか、それとも社内にクリエイティブコントロールのチェックをする人達がいるのかっていうのはどんな感じなんですか?」

安岡「基本的には本人達に任せています。というのも、自分達の撮り方でフォロワー数を伸ばしてきている人達なので、あまり規制を入れてしまうと、自分の個性がなくなっちゃうのは結局良くないなっていう所があるので。本人達に任せている状態です。弊社でインスタグラムのアカウントのコンサルもやっているんですね。さっきもお話したように、企業の担当の方とかネットの代理店さんだったりとかのお客さんだとインスタグラムをそもそもわかってないから、どんな投稿をしたらいいねが付きやすいとか、どんな投稿をしているアカウントを『フォローしてみたい』と思うかとか、実際わかっていなくて。広告とかもそうなんですけど、Facebookの所と同じ出し方ができるから、じゃあもう同じバナーで良いやって感じで、雑に投稿してしまったりするんですね。そういった所もあるので、アカウントのコンサルをタグピクがやる場合は、きちんとクリエイティブチェックを弊社でやっています。ただインスタグラマーに関しては本人達もプロなので、どちらかというと任せた方がいいですね。たとえば1つの商品に関しても1人1人撮り方とか表現の仕方って違うと思うので。それがクライアントさんにウケたりもするので。『あ、うちの商品こんな風に撮ってくれたんだ』とか『こういう使い方があるんだね』っていう所もあると思うので。結局お願いして任せてしまうことの方が多いです」

柳内「じゃあもう契約をいただく時に、『モデル達に任せてください』っていう所まで言い切って、一任してもらってるわけですね」

安岡「そうですね、基本的にはそうです」

柳内「ユーザーも敏感というか急に広告っぽい、いろいろチェックが入ったものがついちゃうと感じ取ってしまいますからね」

安岡「もちろんPR表記とかは入れてるんですけど、やっぱりガチガチの(広告的な)投稿ってユーザーはわかるので」

柳内「PR表記あるないってもちろん多少印象に関わってくるんですけど、きっと本人が楽しんでると、PR表記であってもバズるものはバズるみたいなものって今はありますよね。

インスタと雑誌が融合する?

柳内「話は変わりますが、今私が興味を持っているのが、インスタと既存メディアの関係です。映像の世界は、もともと映画があって、その後テレビが現れました。で、テレビがバーって来た時も別に映画は死ななかったわけですよ。映画は映画の役割があって生き続けた。

そこで伺いたいのは、インスタは、既存メディアである雑誌やファッションショーなどとどう共存していくと思いますか?たとえば雑誌とこういうコラボがあるんじゃないかとか。そういうことで考えてらっしゃることってありますか?」

安岡「実際雑誌社さんにもお話はいただいていて。結局仰っている通り若年層が雑誌とかテレビを見なくなったからといって全部潰れるわけじゃなくて。そこがちょっと流れてきて、より一緒にできたらもうちょっと大きなことができるよねっていうのはあるので。結構雑誌社とかもインスタグラムのアカウント作って頑張ってたりとか、雑誌の1つの企画に対しても『インスタグラマーが選ぶこの春のトレンド商品』とか、そういう切り口で出しているので、多分すごくシナジーはあるんですね。なので一緒にやっていくっていうことはかなり今後増えてくるんじゃないかなと思います」

柳内「むしろ向こうにないノウハウと、こっちにない紙の編集ノウハウとかを組み合わせてやっていくとか。それは出てきますよね、きっと」

安岡「そうですね。GENKINGさんとかもそうなんですけど、最初インスタグラム上で人気になって、マスに出るようになって。そういう人達今どんどん増えてるんです。あと普通の主婦でファッションの投稿だけしていたんですけど、雑誌社から声がかかってファッションスタイルブック発売しますみたいな。そういう流れもあるので、マスとネットはどんどん共存していく動きの方が良いんじゃないかなと」

柳内「そういう所で最近イケてる会社とかありますか?雑誌社で動きが早いなみたいな」

安岡「雑誌社は各社かなり頑張っていますね」

柳内「僕もこの前MERYがカエルム社と共同で雑誌出すっていう記事を書いたんですけど、「紙とウェブの融合」は、増えていくとは思ってます」

安岡「そうですね」

島崎「外資系の雑誌社とかはやっぱり早いですよね」

柳内「外資系だと『デジタル対応しろ!』と本社から言われるから、対応せざる得ないのかもしれませんね。例えば、どんなところが早いですか?」

島崎「NYLONとかインスタグラマーを誌面に出すとかの取り組みが早いなと」

安岡「あとはVOGUEとかELLEとか。海外ってその辺がすごい柔軟なんですよね。日本はやっぱり真面目なので、言っても『それやったら今度雑誌の誌面が売れなくなっちゃうんじゃないか』とか思うんですよ。もちろんそのリスクってなくはないんですけど、もうそういう時代じゃないよね。一緒にやっていかないと売上伸びないよねっていうのが現状だと思うので」

柳内「タグピクさんが仕掛けられた広告の例とかってありますか?」

安岡「クライアント名伏せてになっちゃうんですけど、今仕込んでいるのはインスタグラマーを、結構大手のクライアントで、webのCMを作ったんですけど、そこに仕込んだプロモーションだったりとか。あとはアパレルさんのブランドで、ショップオープンの時に一気に50人くらい投下したりとか。今後控ええているものだとインスタグラマーイベント、アワードみたいのをやろうかなと思っていて、一気にインスタグラマーの人達をバンと呼ぶのと。あとはタレントクラスでインスタグラム上で人気の人達を表彰するみたいなことはやろうかなと思っています」

柳内「結構芸人とかでも上手に使っている人いますもんね」

安岡「そうんですよ。今、国内では渡辺直美さんが1位ですから。水原希子ちゃんのフォロワー数を超えたんですよね」

柳内「女子にも大人気ですからね」

安岡「こないだTGC行った時も渡辺直美さんのステージすごく人気で。やっぱり女子人気もあるんだなって」

柳内「あのフォルムは誰にも嫌われませんよね(笑)次の質問になるんですが、インスタグラムとかインスタグラマー全体の、これからこうなっていくんじゃないかとか。さっき雑誌とか既存メディアとのコラボが増えていくみたいな話もあったんですけど、他に予想・予言みたいなものはありますか?」

安岡「どんどんそうやってマスに出て行ったりとか、自分でECのショップ持ったりとか。すごくビジネス的な言い方をすると、インスタから離れてマネタイズできるような人達がどんどん増えてくるんじゃないかと。インスタを軸にどんどん、ECとか自分の本を出版したりとか、サロンとかでもインスタグラムのフォロワーの伸ばし方とかやる人って絶対今後出てくると思います。そこを軸にして」

柳内「インスタ出身のスターが生まれてくる?」

安岡「ですね」

島崎「私は、海外向けに何かやる人が増えてくると思いますね。言語の壁がほぼないので。日本人ってそこが結構苦手だったりするんですけど、それがない分中高生とかでも使いこなして、海外で何かやりますみたいな。ビジネスなのかアートなのか、が可能になりそう」

安岡「あと逆パターンもあると思っていて、今人気のタレントさんってテレビに出ることを目標とする、ドラマに出ることを目標としていたのが、結構よく聞くのが、『露出はしているんだけどフォロワー数伸びない』っていうお声も結構いただいていて。『どういうコンサルやってくれませんか』っていう話とかもあるんですけど、その逆パターンとかも結構あって。たとえばアイドルの子が『今度ファッションぽくリブランディングしたい』みたいな時にインスタでフォロワー集めるようになるとかっていうのはあるかもしれない。インスタから外に出る場合もあるし、外からインスタに入ってくる場合も増えてくるんじゃないかと」

島崎「最近小学生の将来なりたい職業ランキングにYoutuberとか入っていて『どうなんだ』みたいな話がありましたけど、そういう所にインスタグラマーとか。モデルさんになりたい、タレントさんになりたいっていう感覚で」

安岡「女の子だったら有り得ますよね」

島崎「で、お母さんに理解されない(笑)」

インスタグラマーになるために必要な気質

柳内「タグピクさん的に、いろんな方々を応援しているからあれでしょうけど、これからこの子来るんじゃないかベスト3みたいなのありますか?まだ数千から数万くらいだけど、桁変わるなみたいな人」

安岡「うーん・・・結構クリエイター気質の人がもうちょっと上がってくるんじゃないかっていうのはあります。たとえば写真だけじゃなくて動画の作り込みがすごくうまい人とか」

柳内「セルフプロデュースがうまい人ということ?」

安岡「そうですね」

柳内「今タグピクさんが基本ネットワーキングしているのはモデルの方々なんですか?」

安岡「いや、そうとも限らないです。カメラマンとかもいますし、あとは顔出しせずに料理の写真だけ毎日アップしている人もいますし」

島崎「ペットとか旅行とか」

安岡「幅広いですよね」

柳内「あと、ユニクロコーデだけみたいな人いますよね」

安岡「いますいます。ユニ女ですよね」

柳内「すごい逆算だなと。これ絶対ユニクロから仕事来るじゃんと思って」

安岡「でもそれ実際あると思いますよ。ユニクロさんもユニ女っていうのを作った時ってハッシュタグが結構回っている所から引っ張ってきたはずなので。そういう動きもどんどん出てくると思います。今までやっぱり表現の場ってなかなかなかったじゃないですか。まあブログとか出てきてあったんですけど、もっとわかりやすく表現できる場になった。ハッシュタグで検索するとブランド企業ばっかりなんですよね、どういう人が投稿してるかって」

柳内「モデルと企業の出会いの場にもなってるんですね。さっきの国境を超える話で言うと、日本から世界に活躍している人達もちょこちょこ出だしているんですか?」

安岡「今インスタグラムの国内のランキング上位の人達。渡辺直美さんとか

水原希子さんって、グローバルのファンも多いので」

柳内「渡辺直美さんってグローバルにもファン多いんですか!?」

安岡「台湾受けが良い。なので、今後どんどんインスタグラム上で有名になりたいと思ったらグローバル向けに発信するのが1番良くて。そっちにファンが付くと、向こうって桁違いに、こっちよりもいるので」

柳内「なるほどー。数が一気に変わりますからね」

安岡「ファッションとかトレンドでも、たとえば日本のことがすごく好きな台湾の人がいたとして。でも知ろうと思ったら日本の、台湾版の雑誌を買うとか、ネットを見るぐらいしかないと思うんです。雑誌だと海外って1カ月くらい遅れるじゃないですか。そこのタイムラグってすごく大きいと思っていて。でもインスタグラムだったらそれを縮められる」

柳内「リアルタイムで見られると。確かに外国のファッションが好きな女性って昔は空輸されてきた雑誌とか買ってましたもんね。それがもうリアルタイムで見られるなら、そっちが良いじゃんってなりますもんね」

安岡「あとインスタの良い所ってすごく手軽で。やっぱり動画メディアとか今出てきていて、伸びるんでしょうけど、多分まだ国内の人達って、なんだろうな。アメリカで流行っていてもアメリカと日本の文化とか、そもそもの特性が違うので。動画をご飯食べに行った時に撮る文化ってあんまりないんですよ、若い子にしても。そこが1番、手軽さがあるなと」

柳内「確かに日本人はご飯食べに行っても写真撮りますよね。動画を撮る人に会ったことないな」

安岡「まだ写真だと思いますね。すごい手軽に投稿できて、画像とハッシュタグだけで良いので。文章書かなくても良いし」

柳内「動画元年何年来てるんだみたいなね(笑)」

安岡「来るんだろうけど、まだちょっと難しい」

柳内「Wi-Fiがあんまりないっていうのもあるし」

安岡「そうなんですよ、Wi-Fiがないとすぐアクセス制限されちゃう。で若い子アクセス制限解除するためにお金払わないので、じゃあ動画見られないやん」

柳内「女子高生は、画面が動き出したらすぐホームボタン押すとって聞きますもんねそれくらいパケットに敏感という」

安岡「そうなんですよ。そういう点を見てもインスタって手軽で。伸びるだろうなと思います」

柳内「確かに日本に合ってるっていうのはあるかもしれないですよね」

安岡「あと日本人って良い意味でも悪い意味でもすごく見栄っ張りなんですよね。日本人というかアジアですね。だから写真をすごく加工したりするんですよ。ただアメリカ人ってラフな感じがオシャレというか、自然体が良いっていう文化だと思うんですけど。やっぱり日本人の女の子はちょっとでも細く見えたい、顔小っちゃく見えたくて。あと韓国とかもそうですけど、加工するので。そういう意味合いでも多分動画プラットフォームよりインスタの方が日本人には向いてると思います」

柳内「数百枚撮って1枚選ぶとか言いますもんね。一般の人も写メ技術すごくアップしてますよね」

島崎「インターンに来てる女子大生の子達に聞いても、インスタグラムに載せた写真見て、『これどれぐらい加工に時間かけたの?』とか『これは加工したのどうなの?』って聞いたら『絶対加工してます』って。『1時間くらいかけていろんなアプリ4つくらい使って、フィルターかけて顎削って投稿』って言ってました」

安岡「やっぱりまだそういう文化なんですよね、若い子は」

柳内「盛ってなんぼっていうね。僕も笑いの企画で、撮影女子会の中村朝紗子ちゃんに盛り写メを教えてもらって、僕を最後めっちゃ可愛くするっていう」

安岡「すごい可愛くなりそう(笑)」

柳内「可愛くなりました(爆)今日は面白い話がたくさん聞けました。ありがとうございました」

最後にタグピク社への取材を通じて分かった、インスタグラム広告の現在をまとめてみよう。

・インスタ広告は成果報酬型のプロモーション広告ではなく、あくまでブランド広告である。

・そのため、広告主がインスタグラムに対して、理解を深めてもらう必要がある。

・効果測定としては、リーチ数といいね数などの数値を報告している。

・クリエイティブの管理は、インフルエンサーに任せている。でないと、個性が死んでしまう。

・インスタ出身のスターが雑誌に露出するなど、これからインスタと雑誌の人材交流が活発になるだろう。

・インスタは写真なので、言語の壁を簡単に超える。インスタをベースに海外で活躍する日本人も増えるはず。

多数のインスタグラマーの参入、広告主のインスタグラム媒体価値に対する理解、インスタPR代理店の増加を受け、今がまさにインスタに広告予算が流れ込んでくるタイミングだ。2016年はインスタ広告ビジネスから目が離せないだろう。