”南ちゃん”で話題!五ヶ瀬ハイランドスキー場CM制作者が語る「広告なのにシェアされる動画」の作り方

五ヶ瀬ハイランドスキー場CMより

南ちゃん、新・南ちゃん、そしてテッちゃんの三角関係が織りなすストーリーと攻めた演出が話題となり、YouTubeチャンネルの総再生回数は197万回を超える「五ヶ瀬ハイランドスキー場」のCMの2016年版が公開され、本CMも既に24万回再生を超えるなどネットを中心に話題だ。

このCMがなぜローカルCMにも関わらず、全国的に有名となり、人気シリーズとなったのか?演出を手がけた電通九州 左俊幸氏にインタビューを実施し、「広告なのにシェアされる動画」を作る秘訣を伺った。

※作品をご覧頂いてない方はこちらを御覧ください。

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左俊幸 電通九州 CD局クリエーティブディレクション1部 コピーライター/CMプランナー。主な仕事に「五ヶ瀬ハイランドスキー場」「別府競輪の男達」「高山質店」など。

柳内啓司(以下、柳内):本CMはどのような発想で企画をしたんですか?

左俊幸氏(以下、左):「五ヶ瀬ハイランドスキー場に行きたくなるCM」を強く意識して企画しました。

というのも、ネットで爆発的に話題になったり、再生回数がめちゃくちゃ多い動画が、必ずしもクライアントさんのためになっているとは限らないような気が最近していて。

たとえば今回の五ヶ瀬のCMでも、「話題化」を目的にして企画をすると、もっとエロかったり、刺激的だったり、ましてや最後のオチなんて絶対に違う方がよかったと思うんですよね。

でも「五ヶ瀬ハイランドスキー場に行きたくなるCM」という視点から企画を考えると、どうしてもそっちには振り切れない感じがあって。

そこでいろいろ悩んだのですが、今年は爆発的な話題化を狙うのではなく、五ヶ瀬ハイランドスキー場の風景の美しさや、地元の人達の人の良さ、ワインや温泉の魅力等を感じてもらうことで集客につながるCMにしようと思いました。

という話も含めて、制作会社ランニングの皆さんと何度も何度も何度も何度も打合せを重ねながら、今回の企画が出来た感じです。

ちなみに今までの五ヶ瀬のシリーズCMは、ランニングという制作会社の皆さんと一緒に作っています。コンセプトや企画の決定から撮影・編集・録音まで、全行程でがっつり打合せを重ねながらチームのみんながフラットな関係性の中で企画・制作している感じです。

柳内:確かにPVや再生回数ばかりを重視すると、過激な演出に向かいがちです。一方で、無難で平和なものは誰も見てくれません。そんな難しい舵取りをチーム全体で議論しながら作られたんですね。制作時にはどんな苦労がありましたか?

左:「やさしいインストラクターがいます五ヶ瀬ハイランドスキー場」「イケメンインストラクターがいます五ヶ瀬ハイランドスキー場」のセリフの言い方で迷いに迷って、100テイクぐらい録り直しました。が、結局使ったのは1テイク目の言い方でした(笑)

何度も録り直すうちに誰にも正解が分からなくなってきて、朝方になってきてみんなのテンションも落ち始め、結局フツーな棒読みの言い方に落ち着こうとしていたのですが、制作会社ランニングの白澤さんが「最後にもう一度全テイク聞こう!」と粘り、同じく制作会社ランニングの新川さんが「妥協はやめましょうよ!」という熱い一言を放ち、そのおかげで1テイク目のデタラメな言い方に決めることができました(笑)結果、インストラクター篇の2タイプはかなり評判がいいので、粘った甲斐があったかなと思います。

柳内:あの恨みと脱力が入り混じったトーンのナレーション、私も爆笑しました。

次に、人気シリーズとして次回作が期待される中、今作はどんな気持ちで制作されましたか?

左:僕を含めて、スタッフが全員少しバカなので(笑)、人気シリーズだとか、期待されているとか、そういうプレッシャーはあまりなかったです。

でも、まず作り手がめちゃくちゃ楽しんでやらないと、ぜったいに面白いCMにはならないと思うので、悩んだり行き詰まったりする局面はありつつも、基本的にはスタッフ・出演者も含めて、みんなでめちゃくちゃ楽しみながら作っていった感じでした。

あと撮影の直前に「下町ロケット」が流行っていて、ストーリーの起伏とテンポの速さが改めて大事だという話になり、ギリギリのタイミングで急遽セリフやストーリーを修正したりもしました。

柳内:制作者当人が本気で面白がること。私も多くのヒットクリエイターにお会いして話を聞いてきたのですが、これはヒット作の共通点だと思います。視聴者やクライアントからのリアクションはいかがでしたか?

左:ありがたいことに、クライアントさんには非常に満足して頂けました。

あと今年のCMは、今までのCMと比べると割と広告寄りだったので(笑)、どういう反応がくるのか正直ちょっと不安もありましたが、ネガティブな意見は思っていたよりも全然少なかったです。周りの人達やネットの評判を見る限りですが、概ね反応は良かったのではないかと思います。

柳内:もうこの作品と受け手の間に信頼関係が出来ていて、ある程度広告的なメッセージを入れることも許容されている状態なのかもしれませんね。

このCMは放送的にはローカルCMにも関わらず、ネットでシェアされ全国に知られました。広告がネットでシェアされるために大切なこと・意識されていることはありますか?

左:強烈なオチがあるわけでもないですし、ビックリするような映像でもないですし、ひと言で言えるシンプルな企画でもないですし、

5分17秒もある長尺ですし、WEBPRも全くやってないですし、だから計算ではなく、天然的にシェアされている、いまどき珍しいCMなんじゃないかと思います(笑)。

ただ、自分たちが本当に面白いと思うことを突き詰める作業と、見た人がどう思うのかという検証は、チーム全員で意見を出し合いながら

徹底的にやっているつもりですので、その辺りが少し関係あるのかもしれません。

…って、それっぽくまとめようとしましたが、五ヶ瀬ハイランドスキー場のCMがシェアされたいちばんの理由は、「南ちゃん(新・南ちゃん)がカワイイから」という理由に尽きるのではないでしょうか…?

柳内:見た人がどう感じるかの検証を徹底的にやること。単純で地味な話ですが、結局ネットでもテレビでも大事なことは変わらないの紙しれませんね。そして、たしかに南ちゃんの可愛さにやられた男子が続出したことは間違いないですね!

最後に、これからどんな広告を制作してみたいですか?

左:普通の人たちに、普通に面白がってもらえる広告を作っていきたいです。

柳内:本日はありがとうございました!また「普通」の人たちが、「普通」に楽しめる広告。楽しみにしています!

南ちゃん役の藤田可菜さんがスタッフ2人を隠し撮りした写真。仲の良さが伺える。
南ちゃん役の藤田可菜さんがスタッフ2人を隠し撮りした写真。仲の良さが伺える。