ネットメディアが紙の本を作り始めている件について

昨日、女性向けキュレーションメディアである「MERY」が、NYLONやCYANなどの出版する「カエルム」社と女性誌を共同で創刊するというニュースが発表された。

メディア接触時間で言うと、ネットはスマホを中心に急増する一方、雑誌は減り続けている。そんな中、なぜMERYは雑誌創刊へ乗り出したのか?ネットメディア企業の”紙展開”の狙いを考えてみたい。

メディア接触時間の推移(メディア定点調査2015、ガベージニュース作図)
メディア接触時間の推移(メディア定点調査2015、ガベージニュース作図)

料理レシピや小説も、ネットから紙へ

ネットメディアの紙展開は、MERY以外のネット企業も積極的だ。

日本最大のレシピサイトであるcookpadは、去年今年だけでも相当数の本を出版している。(Amazonで調べると、株式会社クックパッドが出版している書籍数は62点)

また、小説の世界も、ネットから書籍になるケースも出てきている。藤沢数希氏の恋愛小説「ぼくは愛を証明しようと思う。」は、2014年8月7日からネットメディア「Cakes」で連載を開始。その後、2015年6月24日に書籍が発売された。

このように、ネットで蓄積されたコンテンツが、一定量を超えたところで、本として出版されるというケースが確実に増えてきているのである。

ネットメディアが紙に回帰するメリット

雑誌業界が最近逆風とはいえ、ネットメディア企業が紙に回帰する狙いは、いくつかあると私は考えている。

一つは「認知率の向上」だ。例えば、MERYが雑誌を発行すれば、書店やコンビニと言ったリアル店舗に表紙が並ぶことになる。これはネット限定メディアであるMERYにとって、「新たな露出面」であり、言ってみれば、全国に屋外広告を出しているようなもの。当然、認知率アップに繋がるだろう。

MERYがリーチできてなかったユーザー層に、MERYというブランドが浸透すれば、彼らのオリジンであるネットメディアでも優位なポジションを築くことができるわけだ。

もう一つの狙いは、収益源としての期待だ。雑誌業界は苦境に立たされているとは言え、広告費だけでも2500億円の市場規模を誇る一大産業だ。

媒体別広告費(ガベージニュース作図)
媒体別広告費(ガベージニュース作図)

特に雑誌は、女性向けファッションや美容系の広告に強い媒体が多い。カエルム社やMERYが抱えるクライアントにネットと雑誌を組み合わせた広告商品をワンストップで提供したら、それは他社との差別化要素になるだろう。

このようにネット×雑誌の組み合わせで事業拡大していくことも、今回の狙いと思われる。

コンテンツ制作視点におけるメリット

事業的な観点からもメリットが大きいネットから紙へのメディア展開だが、コンテンツを作る制作サイドから見ても、メリットがあるように思う。

なぜなら、ネットでのコンテンツ発信コストは、紙による出版コストより遥かに安いため、ネット上でテストマーケティングをした上で、人気の出たコンテンツを選んで出版することができるからだ。

例えばcookpadであれば、ユーザーから投稿されたたくさんのレシピの中から、人気レシピだけを厳選して、雑誌に掲載することができるわけだ。

一方で、紙のみで展開しようとすると、コンテンツを試験的にマーケットに出すことが難しい。そのため、編集者が「エイヤ!」と一発勝負せざるえない。編集者の勘と経験に頼った非常にリスキーなモデルとなってしまう。

このようにコンテンツ制作の観点からも、ネットと雑誌の連携事例はますます増えていくことが予想されるだろう。今後も、ネットメディアによる紙展開に目が離せない。