こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。

さて、7月2日のフジテレビ系・土曜プレミアムは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。もう、めちゃくちゃ面白い映画ですね!

冒頭、通称「ドク」ことエメット・ブラウン博士の研究室から始まるが、無数の時計や、さまざまな機材や資料があふれ返っており、あまりの怪しさに胸が躍る。

自動朝食調理機や、自動犬のエサやり機が稼働して、主人公のマーティが巨大スピーカーの大音量に吹き飛ばされる。これなど実際にはそうならないと思われるが(音圧で後方に押された直後、前方に押され、その場で振動する)、何が起こったかヒジョ~によくわかる描写になっていて、こんな冒頭の数分間だけでもう『BTTF』の楽しさがビンビンに伝わってくる。

そして、空想科学的にいちばん気になるのは、やはり「タイムスリップ」だ。

図らずも30年前の世界に行ってしまったマーティは、そうとは知らず、自分の両親の出会いを邪魔してしまう。両親が結婚しなければ、自分もきょうだいも生まれないから、なんとか2人を恋人同士にしなければならない。

それに使える期間は、4日間だけ。4日後に、自分が未来に帰れるチャンスが1度だけやってくるからだ。

このハラハラする事態をもたらしたのは、デロリアン号。

ベースはデロリアン社が1981年に発売したDMC-12だが、ドクによって過去にも未来にも行ける機能を持ったタイムマシンに改造された。

ただし、この車が時間旅行するためには、2つの条件があった……。

◆1.21ジゴワットとは?

デロリアンのタイムトラベルに必要な2つの条件とは?

それは、①「タイム回路」と「次元転移装置」に1.21ジゴワットの電力を供給すること、②時速140kmで走ること。

気になるのは「ジゴワット」だ。

「ジゴ」とは「ギガ」の英語読みで「10億倍」を表す。よって「1.21ジゴワット」とは12億1千万W=121万kW。原子炉なみの大電力である。

そして、時速140km。

車がこの速度で走っても、時空が歪むようなエネルギーは生まれないから、別の理由があるのだろう。これについては、筆者はこう推測する。

「ワット」は「出力」=「1秒間に出入りするエネルギー」の単位なので「時間」も重要になる。劇中では、デロリアンが猛スピードで走っていくと、車体は先頭から順に不思議な空間に入っていくように見えた。

81年型DMC-12は、全長4.267m。この車体が時速140kmで走ったとき、自分の全長分の距離を通り過ぎる時間は0.11秒。

異世界への入り口がこの一瞬しか開かないとしたら、確かに時速140kmが必要だ。そしてその瞬間、タイム回路と次元転移装置に1.21ジゴワットが流れ込む……のではないだろうか。

イラスト/近藤ゆたか
イラスト/近藤ゆたか

◆雷でタイムスリップするとしたら?

ドクはこのエネルギーを生み出すために、プルトニウムを使っていたが、それを持たずに30年前にタイムスリップしてしまったマーティには、他のエネルギー源が必要になった。

それが落雷だ。

最初のほうに「4日後に、未来に帰れる機会が一度だけ」と書いたが、未来から来たマーティには、4日後の10時4分に時計台に雷が落ちることがわかっていたのである。

雷で1.21ジゴワットもの電力が得られるのだろうか?

『カミナリはここに落ちる』(岡野大祐/オーム社)によれば、雷雲と地上の電圧はおよそ1億V。

また、雷の電流は1千~20万アンペアというから、ここから考えると、雷の電力(電圧×電流)は1~200億kWくらい。

それすなわち100~2万ジゴワット。充分すぎるほどのエネルギーだ。

問題は、雷が落ちる瞬間に1.21ジゴワットを獲得できるか、である。

劇中では、デロリアンにフックをつけ、時計台から伸ばした電線に引っかける、という作戦を立てていた。

この場合、時速140kmで走るデロリアンは、落雷の瞬間に電線に触れていなければならない。

1m進むあいだフックが電線に接触していると仮定すれば、その時間は0.026秒!

雷が10時4分ちょうどに落ちるとしたら、前後に0.026秒の誤差が許されるが、簡単に実現できることではない。

マーティは10時3分59.974秒から、10時4分0.026秒のあいだに、電線の下を通り過ぎなければならないのだ!

モーレツにすごい。マーティには驚異的な運転テクニックが求められる!

さあ、マーティは無事に未来の世界に還れるのか!?

――なぁんて、結末はもう充分に知っているけれど、それでもこのシーンでは手に汗握ってしまう。

空想科学的に考えるともっとドキドキなので、どうか上記の数値をアタマに置いて、今夜の土曜プレミアム『BTTF』をご堪能ください。