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宇宙規模に巨大なグレンラガンとゲッターエンペラー。戦ったら勝つのはどっち?

柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
イラスト/近藤ゆたか

こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今回の研究レポートは……。

筆者が子どもの頃、巨大ロボットといえば、マジンガーZであった。身長18m。人間のおよそ10倍の大きさ。ああ、わかりやすいな~。

などと油断をしていたら、その後のロボットには超スケールのものが現れた。たとえば『真ゲッターロボ』のゲッターエンペラーは3機のゲットマシンが合体して誕生するロボットだが、そのゲットマシン1機が、惑星に匹敵するほど巨大だという!

また『天元突破グレンラガン』もすごい。主人公が乗り込むロボット(ガンメン)が味方と合体を繰り返しながら、どんどん巨大化。最終形態の超天元突破グレンラガンは、身長が銀河の直径を超えてしまう!

オドロキのデカさである。こうなると、筆者は考えないではいられない。これらの超巨大ロボが対戦したら、いったいどんな戦いになるのだろうか?

それぞれの具体的な能力や武器まで考慮すると科学を超越してしまって筆者の手に余るので、ここでは大きさを軸に考えさせてもらいたい。

◆そこにいるだけで被害が!

まず、ゲッターエンペラーの大きさを把握しよう。

劇中の描写を見ると、ゲットマシン1機が惑星とほぼ同じサイズである。地球くらいの惑星だとしたら、ゲットマシン1機の身長は1万2800kmだ。

これが3機合体したら、当然もっとデカくなる。元祖『ゲッターロボ』(74年のアニメ)の合体比率から計算すると、ゲッターエンペラーの身長は3万6千kmに!

その重量は推定1垓9千京t。月の重量の2.6倍だ。

これほど大きいと、オドロキの事態が起こる。

もしゲッターエンペラーが地球から38万kmの距離(月までの距離)にいた場合、地球は月の2.6倍の重力の影響を受けるのだ。潮の満ち引きも2.6倍になり、満潮時と干潮時の高低差は現在の平均1.5mから3.9mへ増大。多くの港では高潮になり、車やコンテナが流出するなどの被害を受けるだろう。ゲッターエンペラーは、ただそこにいるだけなのに。

◆宇宙の質量の20億倍!?

一方のグレンラガンのサイズは?

劇場版『天元突破グレンラガン 螺巌篇』を見ると、もうすごすぎる。最終形の超天元突破グレンラガンの身長は、戦いの舞台となっている銀河の直径の2倍くらい! この銀河の大きさが、われわれの銀河系(直径10万光年)と同じなら、超天元突破グレンラガンの身長は20万光年=190京kmということになる。

これは、さっき計算したゲッターエンペラーの身長の、なんと52兆倍だ。

こうなるともう、体重を計算するのも恐ろしい。ゲッターロボを元に計算すれば、重量は27000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000t。全宇宙の質量の20億倍。これをどう考えていいのか、筆者にはちょっとわかりません……。

◆戦いは盛り上がるのか?

うーむ、どちらもデカいと思っていたが、グレンラガンとゲッターエンペラーはスケールがこれほど違ったとは……。

こうなると、戦いになるのかどうか不安である。

グレンラガンからすれば、相手のゲッターエンペラーを探し出すのが難しいと思われる。超天元突破グレンラガンを身長180cmの人間に置き換えると、ゲッターエンペラーの大きさは原子の直径(1千万分の1mm)の3千分の1ほどしかない。そんなモノ、どうやって探せばいいのっ?

イラスト/近藤ゆたか
イラスト/近藤ゆたか

運よく発見できたとしても、今度は攻撃が難しい。グレンラガンの身長は20万光年。たとえば、自分の足下にゲッターエンペラーがいたとして、それを伝える情報がグレンラガンの操縦者に届くまで、どんな手段でも20万年はかかる。操縦者が「キックだ!」と命令を下しても、その命令が足に伝わるのも20万年後。たとえ光の速さでキックを繰り出しても、相手に届くまでさらに5万年くらいかかるだろうから、つまり一つの攻撃に45万年もかかってしまうのだ。スケールがでかすぎる……。

それはゲッターエンペラーにとっても、同じだろう。グレンラガンの頭部は20万光年彼方にあり、それを電波望遠鏡などで知ったとしても、その情報は20万年前のもの。そこからビームを放っても20万年かかるし、20万年後その位置にグレンラガンがいるかどうか……。

すると、両者の戦いはまるで成立しないようにも思えるが、実はそうではない。

全宇宙の20億倍もの質量が、たとえば銀河系の2倍くらいの広さの領域に集まっていたとすると、その周囲には猛烈な重力が働く。超天元突破グレンラガンは、そこに存在するだけで周囲のものを猛烈に引き寄せてしまうのだ。

その引力の強さは、ロボットの重心から1億光年離れた地点においても、地球の重力の200万倍。ということは、ゲッターエンペラーも光の速度の99.999999999999999999999999999999995%のスピードで、超天元突破グレンラガンに激突!

……というのが、両者が戦った場合に予想される展開なんだけど、うーん、これは戦ったことになるのかなあ。

とんでもなく巨大なロボットたちの対戦は、スケールが壮大なのに、いや、壮大すぎるからこそ、ぜんぜん盛り上がりそうもない。安易に対決を想像してしまった筆者がマヌケでした。申し訳ありません。

空想科学研究所主任研究員

鹿児島県種子島生まれ。東京大学中退。アニメやマンガや昔話などの世界を科学的に検証する「空想科学研究所」の主任研究員。これまでの検証事例は1000を超える。主な著作に『空想科学読本』『ジュニア空想科学読本』『ポケモン空想科学読本』などのシリーズがある。2007年に始めた、全国の学校図書館向け「空想科学 図書館通信」の週1無料配信は、現在も継続中。YouTube「KUSOLAB」でも積極的に情報発信し、また明治大学理工学部の兼任講師も務める。2023年9月から、教育プラットフォーム「スコラボ」において、アニメやゲームを題材に理科の知識と思考を学ぶオンライン授業「空想科学教室」を開催。

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