■車を袋の中に入れ、水に沈めてみました⁉

 まずは、下の動画をご覧ください。

 タイトルは、『車を水に沈めてみました―車両用浸水防止シート』

 防水素材で出来た大型バッグの中にクルマをすっぽりと入れて閉じ、水深50センチの水の中に4時間浸けておく、という実証実験がまとめられたものです。

 結果は動画の通りです。

 袋の中から車を出すと、タイヤはまったく濡れておらず、マフラーもエンジンも内装も、水の影響を全く受けていませんでした。

 この動画を初めて見たとき、私は意外な驚きを感じました。

「なるほど~、たしかにこういう方法もアリだ!」

 周辺に「高台」のない地域では、愛車を守る究極の方法だと思ったのです。

実験結果の動画より(蔵田工業提供)
実験結果の動画より(蔵田工業提供)

■突然の大洪水、クルマ大量水没被害の悲惨……

 実は2019年10月、私の住む千葉県の外房エリアは、大雨による大規模な洪水で死者10人を出し、驚くほど多くの車やバイクが水没しました。

<当時の報道>

豪雨による死者10人中5人が車の中で… 息子が明かす81歳の父親の最期 (fnn.jp)

 大雨は地震と違って予報が出ます。しかし、「早めに高台へ避難するように」と呼びかけられても、関東平野には高台などほとんどありません。

 これまで何度も氾濫を繰り返してきた隣の市の川の近くに住む知人は、大雨の予報が出たとき、すぐにスーパーの立体駐車場(といっても市内にひとつしかありませんが……)へ車を避難させようとしました。

 ところが、たどり着いた時にはすでに満車状態。結局、自宅の駐車場に戻るしかなく、その夜、車はエンジンまで水に浸かって、使い物にならなくなってしまったというのです。

 私自身はあの日、偶然、関西に出張していて難を逃れたのですが、いつも車を停めている駅前の駐車場が完全に水没し、多くの車が動けなくなっている写真を見たときには、ぞっとしました。

 あの日からしばらくの間は、泥だらけになった車を積んだレッカー車と、何度すれ違ったことでしょう。

■マイカーを「袋に入れる」という新発想

 車が水没してエンジンがかからなくなった場合、多くは「修理不能」と判断されます。車両保険をかけていない人には何の補償もありません。

 自然災害もカバーする車両保険をかけている場合は、契約した金額を上限に保険金がおりますが、それでも多くの場合、同じグレードの新車を買うことはできません。

 災害後の復旧作業には、車が必要な場面が多々あります。突然マイカーを奪われた人たちは、経済面だけでなく、日常生活を継続できず、本当に大変な思いをされたと思います。

 それだけに、マイカーだけは何とか守り抜きたいものですが、大雨の予報をキャッチしたとき、冒頭の動画で使われているような袋であらかじめ車を包んでおくことができれば、大切な車を水没被害から守れるかもしれません。

 そこで、本製品について、輸入元の蔵田工業株式会社/営業担当・山口肇さんにお話を伺いました。

車両用浸水防止シートの実証実験。車を入れた状態で水の入ったプールに4時間浸けられた(蔵田工業提供)
車両用浸水防止シートの実証実験。車を入れた状態で水の入ったプールに4時間浸けられた(蔵田工業提供)

■ニューヨークを直撃したハリケーンがきっかけで開発

――まず、「車両用浸水防止シート」を輸入しようと思われたきっかけを教えていただけますか。

山口:当社のある福岡、九州では、近年の温暖化の影響からか大規模水害が頻発しており、その惨状を何度も目の当たりにしておりました。当社は水インフラ関連のビジネスを行っていますが、私自身が以前商社にいたこともあり、「こうした災害によって被るリスクを極小化できないか?」「資産を守る自己防御手段はないか?」「地域に貢献出来る方法はないか?」という思いで、海外の製品のリサーチを始めたのです。

――その中で、この製品を見つけられたのですね。

山口:はい、この製品は2012年、ニューヨークを直撃したハリケーン・サンディによる大規模な浸水被害をきっかけに、車という資産を守るためアメリカで開発されました(米国で特許取得、商標登録済)。災害時にはもちろん「命を守る行動」が最優先ですが、日本では大切な「車」という資産が守りきれていない現状も大変深刻だと感じていました。そんな中、シンプルな取り扱いで最大限の効果を発揮するこの製品を見つけ、当社で取扱いを行うことになったのです。

「車両用浸水防止シート」を開き、車をバックで出す場面(蔵田工業提供)
「車両用浸水防止シート」を開き、車をバックで出す場面(蔵田工業提供)

――価格はどのくらいでしょうか?

山口:サイズによって異なりますが、一般的な乗用車のクラスですと、6万円前後です。

――材質はどのようなもので、製品は繰り返し使えるのですか。

山口:材質は2重の防水コーティングが施された弾力性のあるポリエチレン織布の3層構造で大変頑丈です。折り畳みもでき、何度も繰り返し使用することが可能です。

――日本での販売はいつからでしょうか。

山口:昨年(2021年)夏からです。その後、啓発活動の一環として、日本自動車連盟(JAF)福岡支部と連携しながら、共同で「クルマ×水」のテーマで防災イベントを開催し、各メディアでも紹介されるなど反響を頂いております。

――動画の中で、防水シートに入った車が浮いているシーンがありましたが、洪水のとき車が流れて行ってしまうこともあるのでしょうか

山口:シートの四隅に紐を通す穴が開いていますので、カーポートなどでは支柱に紐をくくり付けることで流出を抑えることは出来ます。単なる路上駐車の場合は、流されることもありますが、万一の場合でも災害復旧時にシートから車を出せばエンジンがかかるので自力で移動出来ます。発災時、動かなくなった車のレッカー移動や撤去などは所有者確認を行ってからとなり、この確認作業が大変厄介だと聞きました。ですので、すぐに車を動かせるというのは大きなメリットだと思います。また、流されてしまった際、何かにぶつかって車が損傷することもあると思いますが、その場合は、車両保険に加入していれば修理代は保険でカバーできるとのことです。

――すでにお使いのユーザーはおられますか。

山口:はい。個人のユーザーの他、「預かり車両を守る」という目的で、例えば整備会社などの民間企業様にご採用いただいています。

――大雨の情報は事前にわかるだけに、こうした方法で愛車の水没を防ぐことは大事ですね。

山口:大切なクルマを水害から守ることにより、その後の生活や企業活動を継続でき、災害復旧の遅れを最小限にすることができます。それは、地域の強靭性をより強固にすることにつながります。自然現象には逆らえませんので、こうした製品で、少しでも「自分で自分の資産を守っていく」という土壌を作れればと思っています。

■6月1日から気象庁が「線状降水帯予測」を開始

 ここ数年、「線状降水帯」による豪雨によって、全国各地で大規模な洪水被害が発生しています。大切な住宅やマイカーが水没する様子がニュースで報道されるたびに、自然の驚異を思い知らされます。

 しかし、同様の水害はこの先も頻発することが予想され、気象庁は6月1日から、世界最高レベルの技術を用いた「線状降水帯予測」を開始し、早期避難を促すために半日前からの情報提供を行うことになったそうです(以下参照)。

「線状降水帯予測」気象庁6月1日開始 半日前から情報提供 早期避難へ繋げて(気象予報士 日直主任 2022年05月25日) - 日本気象協会 tenki.jp

 また、『海に面していない東京・新宿区や目黒区が高潮警報の発表対象に』というニュースに驚いた方も多いでしょう。

<海に面していない東京・新宿区や目黒区が高潮警報の発表対象に 気象庁が内陸の一部自治体を追加(TBS NEWS )

 高潮によって川の水位が上昇し、都心部でも洪水が発生する恐れがあるというのは、本当に恐ろしいことですね。

 とにかく、洪水が想定されるような気象予報が発表された場合は、できるだけ早く身を守る行動をとること。そして次に、車やバイクを安全な場所に移動させてください。

 それがどうしても不可能な場合は、浸水から車を守るこうした方法もぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

「車両用浸水防止シート」のリーフレットより(蔵田工業提供)
「車両用浸水防止シート」のリーフレットより(蔵田工業提供)