「東京オリンピック2020」で新たに追加種目となったスケートボード

 大会の公式サイトを開くと、『独創的なトリックと駆け上がるスリル。観客のボルテージは最高潮へ』というキャッチコピーと共に、10代の若者たちが宙を高く舞うカッコイイ動画が紹介されています。

 世界中で人気のスポーツに憧れを持ち、「自分もやってみたい!」と、スケートボードを買ってもらった子どもたちも多いのではないでしょうか。

「東京オリンピック2020」を紹介するNHKのサイトより
「東京オリンピック2020」を紹介するNHKのサイトより

■スケートボード使用中の重大事故多発

 しかし、その一方で痛ましい事故のニュースも相次いでいます。

 今年6月23日には、東京都世田谷区の信号のない交差点で、スケートボードに乗っていた5歳の幼稚園児がワゴン車にはねられ、頭や胸を強く打って死亡する事故が発生しました。

『東京新聞』(2020.6.25)によると、逮捕された運転手(47)は、「男の子を見たが、目を離して車を発進してしまった」と供述しているとのことです。

 スケートボード乗車中に発生した子どもの交通事故を検索すると、このほかにも多数のニュースが出てきます。

●2015年7月23日、日光市の市道交差点で、小5男児が軽乗用車にはねられ全身を強く打って死亡

●2012年5月6日、江戸川区で、小3女児が路線バスと衝突し頭を強く打って死亡

●2011年5月5日、鹿嶋市で、小6男児が軽乗用車にはねられ頭を強く打って重体

●2008年4月1日、さいたま市で、小5男児がトラックにひかれ全身を強く打って死亡

 被害者は子どもだけではありません。

 2020年1月13日には、那須塩原市でスケートボードに乗っていた22歳の男性会社員が後ろから来た軽乗用車にはねられ、頭を強く打って死亡する事故が発生しています。

■キックスケーターも深刻な事故の当事者に

 スケートボードと並んで数年前から人気なのが、地面を足でけりながら進むハンドル付きのキックスケーターです。

 8月に入ってすぐに飛び込んできたのは、このニュースでした。

『キックスケーターに乗り ワゴン車にひかれ9歳男児重体 横浜市中区』(2020.8.2/FNNプライムオンライン)

 記事によると、8月1日午後1時前、横浜市中区の信号機のない交差点でキックスケーターに乗っていた9歳の男の子が、ワゴン車にひかれ、意識不明の重体となっているとのことです。

 キックスケーターはスケートボードに比べると乗りやすいためか、こちらも子どもが死傷する重大事故が繰り返し発生しています。

●2015年4月6日、福岡市博多区で、小3男児が車にはねられ頭を強く打って死亡

●2014年10月28日、津市の市道で、小1男児が買い物帰りの母親の軽乗用車とぶつかり、頭を強く打って死亡

●2013年8月14日、北海道厚沢部町で、祖父宅に帰省中の小3男児が乗用車にはねられ頭を強く打ち意識不明の重体

●2013年8月6日、横浜市の市道交差点で、小1男児がトラックにはねられ、頭などを強く打って死亡

 これらは、報道されている事故のごく一部にすぎません。

 車との衝突だけでなく、バランスを崩して単独転倒し、頭や顔面に重傷を負うケースも多発しているため、消費者庁も注意を呼び掛けています。

国民生活センターのサイトより抜粋
国民生活センターのサイトより抜粋

■スケートボードやキックスケーターも「道路交通法」で規制

 さて、こうした事故の報道が出ると、目につくのは事故を起こしたドライバーに対する同情の声です。

 もちろん、事故の状況は1件ずつ異なるため、現場を見ずにそうした評価をすることは厳に慎まなければなりませんが、逆に言えばこれは、車通りの多い一般道で子どもをスケートボードやキックスケーターに乗せている保護者に対する疑問の声でもあります。

 では、こうした乗り物(遊具)を子どもに与える場合、親はどのようなことに気をつけなければならないのでしょうか?

 交通事故裁判を多数手がけ、ご自身も3人の男の子の父親である、だいち法律事務所の藤本一郎弁護士に伺いました。

――そもそもスケートボードやキックスケーターという遊具は、道路上でどのような分類をされるのでしょうか。

藤本(以下同) 「自転車は『軽車両』ですが、スケートボードやキックスケーターは原則、『歩行者』と同じ扱いです。しかし、道路交通法(76条4項3号)では『交通のひんぱんな道路』で、『球戯やローラースケート』等の行為を禁止しています。スケートボードやキックスケーターもこれに類する行為ですので、車や人の通りが多い場所で乗ることは道交法で禁止されていることになります。実際に、スケートボードで車の通行を妨げ、道交法違反で摘発されたケース(大人ですが)もあります」

――スケートボードやキックスケーターで子どもが飛び出し、事故になった場合、過失割合はどのようになりますか。

「状況によっては子どもの側の過失が大きいと判断されることもあります。その場合は、受けとれる賠償金も過失割合に応じて減額されます」

――過去の事故例をみると、多くの子どもが頭部にダメージを受けています。こうした場合、命が助かっても重度の後遺障害が残ることもあります。

「はい、脳を損傷すると、残念ながら重い後遺障害が残ることが少なくありません。その場合は、長年にわたって、治療費や介護に多くの費用がかかります。こうしたケースで相手から十分な賠償を受けられないということになると、ご本人だけでなく、ご家族も大変なことになります。また、相手の車が任意保険に入っていないこともあるのです。万一に備えて、傷害保険や生命保険で自ら備える必要があるでしょう」

――逆に、スケートボードやキックスケーターが歩行者や自転車にぶつかってけがをさせてしまうといった事故も心配ですね。

「そうですね。実際に小学生が運転する自転車が女性に衝突した事故で、裁判所が9500万円を超える賠償命令を下した事例もありました。たとえ遊具であっても、それを与える際には、子どもが重大事故の加害者になることも想定し、他人に損害を与えたときに支払われる賠償責任保険をかけておくべきです」

――子ども自身はどんなことに気をつけるべきでしょうか。

「まず、頭をヘルメットで守り、膝や肘はプロテクターで守る。そして、車通りの多い道や坂道は絶対に避け、安全な場所で乗ることですね。最近は専用のパークも開設されているようですから、そうした場所を利用するのもよいでしょう。また、低学年の間は、必ず保護者が見守ることも大切です。夏休みは外で遊ぶ時間が増えますので、この時期は特に気をつけてください」

――ありがとうございました。

 藤本弁護士が指摘するように、夏休みのこの時期は子どもたちが日中に外で遊ぶ機会が増えます。

 旅行や帰省などで慣れない道路を行き来することもあるでしょう。

 スケートボードやキックスケーターを子どもに与えている保護者の方々は、道路で遊ぶことの危険性をしっかりと伝えてください。

 また、子どもは身長が低いため、死角に入りやすいと言われています。

 ドライバーの皆さんは、住宅街や生活道路、公園の近く、また見通しの悪い交差点などですぐ止まれるよう、十分に速度を落として走行するようにしてください。