あおり運転厳罰化、警察が空と陸から挟み撃ち! 『取り締まり』対象10類型と「違反者逃走」という危険

あおり運転厳罰化を受け、警察はヘリを使いパトカーと連携して取り締まりを行うという(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 本日(6月30日)から、いよいよ「あおり運転」に対する罰則が強化されます。

「あおり運転」がとても危険で、いけない行為だということは誰でも知っているはずです。

 また、一連の報道によって、「捕まったら一発で免許取り消しになるらしいよ」という情報を得ている方もおられるでしょう。

 でも、改めて、「どんなことをしたら免許取り消しになるの?」と聞かれると、正確に答えられる人は意外に少ないのではないでしょうか。

 まず、今回の改正を正確に表現すると、

『道路交通法の一部を改正する法律により、妨害運転(「あおり運転」)に対する罰則が創設された』

 

 ということになります。

 では、そもそも「妨害運転」という違反は、いったいどんな行為を指すのでしょうか? 

 警察庁のサイトにアップされているチラシを参照しながら、確認していきます。

■違反の対象になる「あおり運転」10パターンはコレだ!

 今回、法改正に合わせて、次の10類型が「妨害(あおり)運転」としてラインナップされました。

警察庁作成のチラシより抜粋
警察庁作成のチラシより抜粋

<妨害(あおり)運転の対象となる違反「10類型」>

1) 通行区分違反  

 (他車に異常に接近したり、対向車線を逆走したりする)

2) 急ブレーキ禁止違反  

 (後ろの車が危険を感じるような急ブレーキをかける)

3) 車間距離不保持  

 (前の車との車間を詰める)

4) 進路変更禁止違反  

 (急に車線変更をしたり、前車の前に割り込んだりする)

5) 追越し違反  

 (左車線から乱暴に追い越しをする)

6) 減光等義務違反  

 (わざとハイビームで照らしたり不要なパッシングを繰り返す)

7) 警音器使用制限違反  

 (必要がない場所なのにクラクションを鳴らす)

8) 安全運転義務違反  

 (蛇行運転や幅寄せなどを行う)

9) 最低速度違反(高速自動車国道)  

 (高速自動車国道などで低速走行をする)

10) 高速自動車国道等駐停車違反  

 (高速自動車国道などで駐停車する)

 いかがでしょうか? 

 中には、妨害(あおり)のつもりはなくても、「これはときどきやってるかも?」と、ドキッとしている人もいるかもしれません。

 こうした行為を、ほかの車などの通行を妨害する目的でおこなったドライバーは、最大で懲役3年、または50万円以下の罰金。

 違反点数は25点、つまり、一発で免許取り消しです

 欠格期間は2年ですが、前歴や累積点数がある場合は最大5年間、免許が停止されます。

 

 また、上記10類型のような妨害運転をし、「著しい交通の危険を生じさせた場合(例えば事故が起こった場合)」は、最大で懲役5年、または100万円以下の罰金となります。

 違反点数は35点なので、もちろん一発で免許取り消しです。

 欠格期間は3年ですが、前歴などがある場合は最大10年間免許が停止されます。

 

 自分自身に、特段悪気はなくても、周囲の車から見れば「あおり」ととられかねない場合があります。

 くれぐれも気を付けてください。

警察庁作成の「あおり運転」に関するチラシ
警察庁作成の「あおり運転」に関するチラシ

■ヘリを使い、陸上のパトカーと連携して徹底取り締まりも

 さて、6月30日から厳罰化ということで、警察も取り締まりに本腰を入れるようです。

『あおり運転厳罰化、ヘリで追跡も 警視庁、周知へチラシ配布』(共同通信/2020.6.29)

 上記記事でも報じられている通り、ヘリコプターを使って妨害運転をする車がないかを空から監視。違反車両を見つけたら、地上で待機するパトカーに知らせ、連携して追跡し、徹底的に取り締まりを行うとのことです。

 こうした取り組みが抑止力となり、悪質なあおり運転の減少につながれば何よりです。

■抑止への期待と、逃走車による二次被害への危惧

 一方、危惧されるのは、妨害運転をした車の「逃走」です。

 特に、「厳罰化」がメディアで大々的に報じられている今のような時期は要注意です。

 

「捕まったら一発免停になるらしいぞ」

「ヤバい! 逃げろ」

 そんな身勝手な発想でパトカーの制止を無視し、カーチェイスのような走りを繰り広げ、追跡から逃れようとする者が出ないとも限りません。

 そもそも、あおり運転をするような悪質運転者です。

 北海道の大逆走男 警察が「暴行容疑」で書類送検の英断でも取り上げた通り、法律を守らないドライバーは同様の行為を繰り返すことが珍しくありません。

 また、最悪の場合、その先にあるのは、まったく関係のない一般市民が事故に巻き込まれるという、あってはならない事態です。

 実は、今回のあおり運転に関する法改正の最終段階で、筆者が国会で意見陳述をする機会がありました。

 その際、法改正には賛成の意思を示したうえで、厳罰化が「逃げる」という行為を助長するかもしれないという不安を述べました。

 ●「国会中継録画」(参議院法務委員会/2020.6.2)

 このとき実例として挙げたのが、「飲酒運転厳罰化」と「ひき逃げ増加」の関係でした。

 飲酒運転を厳しく罰するべきだ、という声が大きく上がり始める直前の1999年、ひき逃げ件数は8781件でした。

 ところが、厳罰化議論が高まりメディアで頻繁に取り上げられるようになった2000年には、いっきに1万4050件まで増加します。

 そして、法改正が実現する2001年には1万6503件となり、なんと、わずか2年でひき逃げ件数が倍増してしまったのです。

 飲酒ドライバーが事故を起こすと「捕まったら大変なことになる」というパニックに陥り、とっさに「逃げる」という行為に走ってしまうのでしょう。

 実際に、飲酒運転による事故を起こして逃走中、さらに重大な死亡ひき逃げ事故が引き起こされたケースも発生しています。

●参考記事 

 『時速146キロ/4人死亡事故の判決に寄せる 『超悪質事故』で息子を失った母の怒りと闘いの軌跡』

 今回の「あおり運転厳罰化」を受け、まず大事なことは、ドライバーとして妨害運転のような悪質な行為は絶対にしないよう心がけること。

 もし、その行為をとがめられ、取り締まりを受けることになったら、決して逃げたりせず素直に応じること。

 そして、あおり運転とは無縁だと思っているみなさんは、「厳罰化」と「取り締まり強化」が同時に話題に上るこの時期、「追跡からの逃走」という危険性が潜んでいることについても、十分に認識しておく必要があるでしょう。

 

●参考記事

 『パトカー追跡中の重大事故多発 市民の犠牲、どう防げるか』

 『「あおり運転」で続出する逮捕者。万一のとき我が身を守るには?』