「ながらスマホ」運転の厳罰化いよいよ 海外では「未成年」や「初心者」に厳しい規制も

危険な「ながらスマホ」運転。12月1日から罰則が強化されます。違反は禁物です(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 運転中に携帯電話を使用したことによる重大事故が相次ぐ中、12月1日から「ながら運転」の罰則が強化されることになりました。

 法改正の内容や取り締まりについては、『12月から「ながらスマホ」運転の罰則強化 警察はどのように取り締まるのか(2019/11/11配信】』でもレポートした通りです。

 反則金は車種ごとに約3倍になり、普通車の場合は6000円から1万8000円に引き上げられます。

 しかし、1万8000円でも、諸外国から見ればまだまだ甘いという声が寄せられています。

■メルボルンは「ながらスマホ」の反則金3万6000円

 オーストラリア・メルボルン在住の井上郁美さんは語ります。

「メルボルンでは、ながらスマホの反則金が484豪ドル(約3万6000円)です。運転中はちゃんとしたスマホ用のホルダーにセットしていなければならないのはもちろんのこと、スマホ画面に指を触れてもダメです。実際に、画面をポチッと押していたのを見咎められて反則金を払うことになってしまった知人もいました」

 なるほど、運転中にスマホを持つことができないよう、ホルダーの装着義務も課せられているのですね。

 興味深かったのは、運転経験によっても厳しい制限をかけていることです。

初心者ドライバーの場合は、ハンズフリーであっても携帯の使用が禁止されています。運転技術が未熟なのに、携帯やスマホに注意力を削がれることはあってはならないからだそうです」

 

 これも大変重要なポイントです。初心者なのに、携帯やスマホに気を取られるということがいかに危険か、ということです。 

ロサンゼルス市警察のパトカー(筆者撮影)
ロサンゼルス市警察のパトカー(筆者撮影)

   

■カリフォルニア州・未成年はハンズフリーでも全面使用禁止

 続いてアメリカはどうでしょうか。

「カリフォルニアの道交法も、メルボルンとほぼ同じ規定です。罰金自体は日本と変わりませんが、未成年者(18歳以下)は、ハンズフリーであっても携帯電話やスマホの使用が禁止されているというのが大きな特徴と言えるでしょう」

 そう教えてくださったのは、昨年までロサンゼルスに在住していた都築純さんです。

「法律上は『音声』と『テキスト』が別々の項目になっていて、基本的にハンズフリーなら会話はOKなのですが、未成年者の場合は付加項目として、音声、画像、文字、全てで使用が禁止されているのです」

 細かな規制は州によってもばらつきがあり、中には成人でハンズフリーであっても、車を運転中のスマホ使用は全て禁止としている厳しい州もあるようです。

『Driving Behaviors Reported For Drivers And Motorcycle Operators Involved In Fatal Crashes, 2017』に、アメリカの交通死亡事故の原因別件数と割合が掲載されています。

 これを見ると、2017年は、「ながら運転」が5位であることがわかります。

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1位 速度超過  8,856人 16.9%

2位 飲酒・薬物 5,507人 10.5%

3位 車線違反  3,826人 7.3%

4位 優先違反  3,711人 7.1%

5位 ながら運転(電話、車内会話、飲食など)2,994人 5.7%

 都築さんは振り返ります。

「2009年まで交通統計の中には不注意を意味する『Inattentive』という項目があり、カッコで(会話・飲食・その他)と書かれていました。2010年からはそれがなくなり、注意散漫、漫然運転を意味する『Distracted』が新しく追加されました。カッコ内は(電話、会話、飲食、装備)となっています。装備というのは音楽プレーヤーやゲーム機、テレビその他のことですね。2009年の『Inattentive』の方が2010年の『Distracted』よりも数字は高いので、2010年にカテゴリ再編するまでは何でもかんでも『Inattentive(不注意)』に入れていたのかもしれません」

 

交通事故の捜査を行うロス市警の警察官(筆者撮影)
交通事故の捜査を行うロス市警の警察官(筆者撮影)

■罰則の強化は抑止力につながる

 アメリカでも「ながら運転」による事故の多発を受け、10年前から新たなカテゴリを作ったり、未成年への禁止事項を増やしたりするなど、試行錯誤を繰り返してきました。

 こうした対策は確実に効果を表しているようです。

 都築さんは語ります。

「2008年以前は、高速道路、市街地、駐車場にかかわらず、携帯電話を片手にフラフラ運転しているドライバーをしょっちゅう見かけたものですが、法律や取り締まりが厳しくなったせいか、この頃を境にほとんど見かけなくなりましたね。下のグラフを見てください。『年齢別運転中の携帯電話使用割合』を折れ線グラフにしたものです。特に劇的なのは16~24歳の若年層(ブルーの線)です。NHTSA(連邦運輸省道路交通安全局)の統計では7.6%⇒3.8%と、大きく減少しています。逆に70歳以上の高齢者(グリーンの線)は、そもそも、ほとんど『ながら運転』をしていなかったというデータも興味深いところですね」

『年齢別運転中の携帯電話使用割合』(「米国運輸省道路交通安全局」の統計をもとにした保険情報研究所のグラフ)
『年齢別運転中の携帯電話使用割合』(「米国運輸省道路交通安全局」の統計をもとにした保険情報研究所のグラフ)

 たしかに、このグラフを見ると「ながら運転」が減少につながっていることがわかります。

■日本でも「運転経験」に応じた規制必要か?

 今回はオーストラリア(メルボルン)、アメリカ(カリフォルニア州)の「ながら運転」に関する法規制について伺いましたが、日本との大きな違いは、「初心者ドライバー」や「未成年者」に対して、特別に厳しく規制しているということでしょう。

 いよいよ12月1日から、罰金や違反点数の引き上げが行われます。被害者にとっては防ぎようのない「ながら運転」による悲惨な事故が1件でも減るよう、日本でも運転経験の浅いドライバーには特に注意を促すなどさらなる対策が必要かもしれません。

(筆者撮影)
(筆者撮影)