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12月から「ながらスマホ」運転の罰則強化 警察はどのように取り締まるのか

柳原三佳ノンフィクション作家・ジャーナリスト
危険な「ながら運転」。12月の厳罰化に向け警察も取り締まりに力を入れています(写真:アフロ)

 スマホや携帯電話を操作しながら車やバイクを運転する、いわゆる「ながら運転」の罰則が12月1日から強化されます。

「これを機会に、ながら運転は絶対にしないようにしよう!」

 と気を引き締めている人は多いと思います。

 しかし、一方で、

「ながら運転を取り締まることなんてできるの?」

「単なる脅しじゃないの?」

 そんな声もチラホラ聞こえてきます。

 下の表を見てください。

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 実は、「ながら運転」の取り締まりは現在もかなりの頻度で行われており、一定の成果を出しています。

 警察庁の統計データで年間の交通取り締まり件数を見てみると、「速度違反」「一時停止違反」「携帯電話等使用(ながら運転)」は、毎年若干の上下はあるものの、常に上位3位以内にランクインしているのです。

 そこで、交通取り締まり経験の豊富な元警察官の方に、「ながら運転」の取り締まりについて、伺ってみました。

【質問1】警察官は「ながら運転」の取り締まりを、どのように行っているのですか?

<回答>

・パトカーや覆面パトカーで警ら中に、いわゆる「ながら運転」などの違反行為を確認した場合は、違反車両を停止させます。

・道路上で取り締まりを行う場合は、違反行為が見えやすい場所に警察官を複数配置します。

・違反行為を確認した場合は、進行方向の先で待機している別の警察官に無線などで知らせて連絡を取り合い、その車を停止させ、検挙します。

・高速道路でも同様に取り締まりを行っています。

【質問2】もし、違反車両を運転していたドライバーが「自分は運転中に携帯やスマホを使用していなかった」と強硬に言い張った場合、どのように事実を認めさせるのですか?

<回答>

・携帯電話やスマホの使用履歴等を確認させていただきます。LINEやメールのやりとり、通話記録などは当然調べます。

・履歴が確認できた場合は説明をおこないますが、それでも最後まで否認する場合には、否認のまま違反切符を作成します。

【質問3】携帯電話やスマホを使用しながらの「ながら運転」はなぜ危険なのでしょうか?

<回答>

・自動車等を運転しながらのスマホ等の注視・通話や、カーナビゲーション装置等の注視は、以下の通り大変危険です。

○ スマホなどの画面に意識が集中し、周囲の危険を発見することができなくなります。

 ⇒「前方不注視」や「安全不確認」

○ 携帯電話やスマホ等での通話は片手運転になり、かつ、注意力が散漫になります。

⇒「前方不注視」や「安全不確認」

〇 危険な状態の発見が遅れたり、その対応が遅れたりします。

⇒「前方不注視」や「ハンドル、ブレーキ操作がおろそかになる」

「ながら運転」は、歩行者や他の車への衝突、発見の遅れによる重大な交通事故につながり得る、極めて危険な行為です。カーナビ等を注視中の事故も多く発生していますので、十分に気をつけてください。

 携帯電話使用等の場合の死亡事故率は、使用なしの場合と比較して約2.1倍と大変高くなっています。

 警察庁のHPに詳しいデータが掲載されていますので、ぜひご覧ください。

https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/keitai/info.html

■12月から罰金はいくら上がる? 違反点数は?

 では、12月1日から、罰金や違反点数はどのくらい引き上げられるのでしょうか?

 普通車の場合で見ていきましょう。

【携帯電話やスマホを運転中に使用した違反(保持)】

・改正前は「5万円以下の罰金」だったが、「6か月以下の懲役、または10万円以下の罰金」と懲役刑を新設

・ 違反点数は1点から3点にアップ

・反則金は各車種ごとに約3倍に引き上げられる。普通車の場合、6000円が1万8000円にアップ

【携帯電話やスマホの「ながら運転」が、交通事故などの危険に結びついた場合】

・改正前は「3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金」だったが、改正後は1年以下の懲役、または30万円以下の罰金に

・違反点数は、2点から6点にアップ → つまり一発免停!

 罰金や違反点数の大幅アップは、違反者にとっては厳しい改正ですが、「ながら運転」の危険性を考えれば、このくらいの厳罰化は当然でしょう。

*車種別の罰金や点数は、下記のサイトに一覧表でわかりやすく掲載されています。

『ながら運転・改正道交法施行令で罰則強化!罰則や反則金を解説。』(JAFメディアワークス)

 ちなみに、時速60キロで走行しているとき、6秒間スマホに目をやったとしましょう。その間に、車は約100メートルも進むのです。

 

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 私は、「ながら運転」による事故で大切な人の命を一方的に奪われた方々に取材し、お話を伺ってきました。

『「スマホ漫画」で追突死亡事故の男に懲役3年 遺族が法廷で訴えたこと(2019/8/22配信)』

 被害者の立場になれば、運転中の通話やゲーム、漫画を読むなどの行為は、もはや「過失」で済まされるものではないのです。ぜひその危険性を認識してください。

 ただし、車を停止させているときであれば、携帯電話やスマホ等の使用は違反ではありません

 運転中に急な用でどうしても使用しなければいけないときは、必ず安全な場所に停車してから使用するよう心掛けましょう。

<関連サイト>

『その一瞬が交通事故に!こんなに危険! 運転中の「ながらスマホ」』(政府広報)

ノンフィクション作家・ジャーナリスト

交通事故、冤罪、死因究明制度等をテーマに執筆。著書に「開成をつくった男、佐野鼎」「私は虐待していない 検証 揺さぶられっ子症候群」「コレラを防いだ男 関寛斎」「自動車保険の落とし穴」「柴犬マイちゃんへの手紙」「泥だらけのカルテ」「焼かれる前に語れ」「家族のもとへ、あなたを帰す」「交通事故被害者は二度泣かされる」「遺品 あなたを失った代わりに」「死因究明」「裁判官を信じるな」など多数。「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」はNHKで、「示談交渉人裏ファイル」はTBSでドラマ化。書道師範。剣道二段。趣味は料理、バイク、ガーデニング、古道具集め。趣味が高じて自宅に古民家を移築。

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