台風から命を守るために「服」と「靴」で備えよ 災害遺体に向き合った法医学者が警告

猛烈な台風19号で大雨特別警報。今「命を守る行動」が求められている(筆者撮影)

 猛烈な台風19号が間もなく関東地方に上陸します。

 千葉県内に住む私のスマートフォンにも、12日の朝から警告のアラームと共に繰り返し『警戒レベル4 避難勧告』という文面が現れていました。

 しかし、午後3時過ぎにはついに「大雨特別警報」が、静岡、神奈川、東京、埼玉、群馬、山梨、長野に発令され、数十年に一度の、これまで経験したことのないような危険が迫っていると報じられています。

 

 テレビやラジオからは繰り返し、

「自分の命、大切な人の命を守る行動を!」

「ただちに安全を確保する行動を!」

 という呼び掛けが聞こえてきます。

 

『しかし、今、命を守るために、具体的にすべきこととは何なのか……』

 自宅で待機しながら、動きが取れず不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

台風19号の影響による突風で被害を受けた千葉県市原市の住宅(筆者がテレビ画面を撮影)
台風19号の影響による突風で被害を受けた千葉県市原市の住宅(筆者がテレビ画面を撮影)

■災害遺体に向き合った法医学者からの緊急アドバイス

 そこで、今、とるべき「命を守る行動」について、岩手医科大学法医学講座の出羽厚二教授に緊急アドバイスをいただきました。

 出羽教授は東日本大震災、新潟中越地震等の大災害の現場で、膨大な数の犠牲者の遺体を検案し、また、身元確認作業の陣頭指揮をとられました。

 その経験の中で、『この備えさえあれば、命は奪われずにすんだのではないか……』ということを痛感されてきたというのです。

 9月9日に発生した台風15号の直後には、<今夜から大雨予想 被災エリアは雨漏りによる低体温症に要注意!(2019/9/15配信)> にもコメントをいただき、低体温症の危険性についてご指摘いただきました。

 では早速、今夜、誰にでもできる、しておかなければならない「4つの備え」を挙げたいと思います。

 一戸建てにお住まいの方、マンションにお住まいの方、それぞれの居住スタイルや地域によっても対応は異なると思いますが、とにかく、避難が必要になるような最悪の事態を想定して、イメージしていただければと思います。

■命を守るためにしておくべき4つの備え

1) 建物の中でも靴を履いておく。ただし長靴はダメ

 ガラスの飛散、屋根の損傷や建物の崩壊、緊急避難等に備え、風のピークが収まるまでは屋内でも靴を履いておきましょう(突風や竜巻は何の前触れもなく、突然襲ってきます。また、洪水もいっきに水が上がってきます)。

 また、水害のときはつい長靴を選びがちですが、これはやめてください。水が靴の中に入ると足を取られてしまいます。二次被害につながります。

 一番おすすめなのは、ひもで編み上げるタイプの運動靴です。

 編み上げブーツでもよいのですが、かかとの高いものは避けてください。

2) 中そで、長ズボン、帽子(ヘルメット)を着用しておく

 万一のガラス飛散や建物倒壊に備え、長そで、長ズボンを着用し、肌は露出しないように気をつけてください。

 また、帽子などで頭も守ってください。そうすることで、小さなけがは無傷に、大きなけがは小さなけがで収めることができます。

3) レインコートを着用しておく

 家屋が損傷すると、暴風と共に一気に雨が降り込んできます。体を濡らしてしまうと、1時間ほどで低体温に陥ってしまいます。できるかぎり雨に濡れぬよう、細心の注意を払ってください。

4) 防寒用のコートと軍手を用意しておく

 建物が倒壊、もしくは浸水した場合、救助されるまでの間に時間がかかると、低体温症になり、最悪の場合、命を奪われてしまいます。

 とにかく、防寒用のコートを準備し、体温が奪われるのを防いでください。

 東日本大震災のときも、防寒具や布団があったおかげで命をつなぐことができた人たちが多数いたのです。

 なお、洪水などで2階以上の階に「垂直避難」をする場合は、しばらく籠城するつもりで、水と食料を携帯することも忘れないでください。

 今回の災害の規模だとすぐに助けは来ないことを覚悟し、腹をくくらなければなりません。

 また、行政側は、崩れた家の中や屋根の上、ベランダなどで、濡れた体のまま寒さに震えながら一夜を明かす被災者が多数出ることを想定しなければならないでしょう。

2019年10月12日、午後5時頃の多摩川の状況(二子新地のマンションから読者のTさん撮影)
2019年10月12日、午後5時頃の多摩川の状況(二子新地のマンションから読者のTさん撮影)
同じ場所から見た普段の多摩川河川敷の状況。異常に増水していることが見て取れる(読者のTさん提供)
同じ場所から見た普段の多摩川河川敷の状況。異常に増水していることが見て取れる(読者のTさん提供)

■過去の災害から具体的に想像し、命を守る対策を「指示」すべき

 出羽教授は語ります。

「政府は11日の関係閣僚会議で、『万全を期すよう指示をした』『先手先手の対策を講じるよう指示した』と言っていましたが、指示は具体的でなければなりません。では、『命を守る行動』とは何なのか? それは過去の災害から具体的に想像し、できる限り試してみることしかないのです。もはや「想定外」ではありません。相当な危険が迫っていることを、すでに私たちは経験済みなのです」

 まさに今、台風19号が猛烈な威力で日本列島を直撃しようとしています。

 12日午前中の段階では、まだ風のピークが来ていないのに突風(竜巻)が発生しました。すでに死者も出ています。

 また、雨も激しく、各地で河川の決壊や浸水の被害が報じられ、大雨特別警報が出されています。

 これから夜に向かってさらに風が強まる中、不要な外出を控えることはもちろんですが、とにかく「ケガ」と「低体温症」から身を守ることこそ、とりあえず「自分の命と、大切な人の命を守る」ことにおいて、最も大切なことのようです。

 上記の4つの対策は、それほど難しいことではありません。

 数時間、どれもやる気になればできることです。

 これを読まれた方は、ぜひ周囲の方にも知らせて、備えてみてください。