東名バス事故の衝撃映像 「ドライブレコーダー」装着で自己防衛を

英南東部の高速道路で発生した、130台以上絡む玉突き事故(写真:ロイター/アフロ)

6月10日朝、東名高速で起こった観光バスと乗用車の衝突事故。中央分離帯を猛スピードで乗り越え、宙を舞いながら黒い塊が一瞬のうちにバスの前方に飛び込んでくる……、あの凄惨な映像と音声を目の当たりにして、思わず目を覆った人も多いだろう。

翌日には、中国からも多重衝突事故の衝撃的な映像が入ってきた。1台のトラックが高速道路の中央分離帯を突破。それを引き金に、複数の車が次々と衝突に巻き込まれ、瞬く間に大事故を引き起こす様子が、鮮明に記録されていた。

これらの鮮明な衝撃映像は、いずれも「ドライブレコーダー」(通称・ドラレコ)で撮影されたものだ。

その名の通り、ドライブ中の画像を録画、再生する装置のことだが、一般的なビデオカメラと異なるのは、事故などの衝撃を感知したときに、その瞬間の前後、約数十秒の映像を自動的に保存する機能を持っていることだ。最近では、直近の数時間に撮影された映像を常に保存しておくという常時録画タイプも出ている。

主な記録メディアは、SDカードやCFカード。容量も100MB程度のものから1GBを超えるものまであるが、最近ではリアルタイムで、GPSと連動したクラウドに保存され、遠隔地からでもその映像をすぐに確認できるタイプもある。

今回の観光バスは、まさにそうした最新型のレコーダーを装着していたため、事故の瞬間映像を確認した会社が、すぐにその公開を決めたのだという。

たしかに、あれを見れば誰しも、観光バス側に過失がないことを確信するはずだ。

12月から貸切りバスに装着を義務化

国土交通省では2004年度から、すでにドライブレコーダーの搭載効果に関する調査を開始し、主に営業車(タクシー、トラック、バス)から映像データを収集してきた。

そんな中、昨年1月15日、長野県軽井沢町で多数の死者を出すスキーバス事故が発生した。二度とこのような悲惨な事故を起こさないようにと、国交省はさらに「安全・安心な貸切バスの運行を実現するための総合的な対策」をとりまとめ、今年12月から新車の貸し切りバスに対してドライブレコーダーの取り付けを義務化することが決定している。今回の事故に巻き込まれた観光バスは、その義務化を前に自主的に装備していたわけだ。

とはいえ、これは決して営業車だけに関する話ではない。一般のドライバーもマイカーにはドライブレコーダーを必ず装着しておくべきだが、周囲を見渡してみるとまだまだ普及率は高いとは言えないようだ。

ちなみに、富士通テンがおこなった自動車ユーザー(クルマを保有し、月1回以上運転する20~69歳の男性)への「購入意識調査」調査によると、購入者は約17%にとどまっているという(下記参照)。

https://carview.yahoo.co.jp/news/market/20160609-10246041-carview/?mode=ful

重大事故後に必ずトラブル発生

私はこれまで、20年以上にわたり数多くの交通事故を取材してきた。

重大事故の場合、その後の処理で必ずと言っていいほど何らかのトラブルが起こる。

「信号無視をしたのはどちらか?」

「センターラインを先にはみ出したのはA車か、それともB車か?」

中には、幹線道路を普通に走っていたにもかかわらず、意識不明で1か月入院している間に、全く通ったこともないような狭い路地から猛スピードで飛び出したことにされていた被害者もいた。

当事者が重傷を負ったり、亡くなってしまうと、一方当事者の供述が独り歩きし、事故の真実が大きく捻じ曲げられ、泣き寝入りを強いられてしまうことがある。特に被害が大きければ大きいほど、加害者は無意識のうちに自己防衛的なウソをつく傾向があり、そうしたケースは頻繁に起こっているのだ。

そんなとき、事故の瞬間の映像が残っていれば、こうしたトラブルに巻き込まれるリスクはほぼ100%回避できる。長い年月と費用をかけて裁判を闘う必要もなくなるのだ。

映像のおかげで『無罪』になった人も

一方、“加害者”の立場になりながら、事故時の映像が記録されていたことで救われた人も数多い。

乗用車を運転中、死亡事故を起こしたとして起訴されたある男性は、記録されていた映像によって子供側の無理な飛び出しを裏付け、無罪を勝ち取った。

「亡くなったお子さんには気の毒でしたが、ドライバーにとって避けられない事故もあるということが映像によって立証できた。もし映像がなかったら裁判官も無罪判断はできなかったかもしれない」(男性の弁護人)

今回のバス事故のように、不可抗力の事故を裏付けるためにも、ドライブレコーダーは絶大な効力を発揮するのだ。

実際に、事故後の壮絶なトラブルを体験したある交通事故遺族は、現在、前方だけでなく後方と側面にもドライブレコーダーのカメラを取り付け、万全の対策をとっている。

筆者のクルマに装着している「ドライブレコーダー」
筆者のクルマに装着している「ドライブレコーダー」

今回の映像を見ても分かる通り、最近のドライブレコーダーの映像はかなり鮮明で、大きな衝撃を受けてもデータが破損することはほとんどない。価格も1万円以下からさまざまな製品が出ており、取り付けも簡単だ。

また、一度取り付けてしまえば、ランニングコストもほとんどかからない。

ドライブレコーダーは、万一のとき、まさにドライバーと家族の人生を守る「保険」のようなもの。そう考えれば決して無駄にはならないはずだ。まだドライブレコーダーをつけていない人は、事故が起こってから後悔する前に、ぜひ検討してみてはいかがだろうか。