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【ライヴ・レポート】TOTO / 2019年2月20日 日本武道館

山崎智之音楽ライター
TOTO / photo by 土居政則

デビュー40周年を記念する“40 TRIPS AROUND THE SUN TOUR” で来日中のTOTO(トト)が2019年2月20日、日本武道館でライヴを行った。

アメリカン・ロックを代表するバンドのひとつとして絶大な人気を誇ってきた彼らの約3年ぶりとなる日本公演。2階スタンドのてっぺんまで埋まった大観衆を前に、40年間の栄光の軌跡を凝縮した、ヒット曲から新曲、アコースティック・セット、レア曲(ギタリストのスティーヴ・ルカサーの言うところの“ディープ・カッツ”)までを掘り下げたステージで魅了した。

アルバム『TOTO IV〜聖なる剣〜』(1982)が全世界で1,200万枚を超えるセールスを記録、「アフリカ」「ロザーナ」がヒット、グラミー賞6部門を獲得するなど、輝かしい実績を誇るTOTOだが、懐メロバンドになってしまうつもりはまったくないようだ。いきなり1曲目から“新曲”「デヴィルズ・タワー」を披露、彼らが現在進行形のバンドであることを強くアピールする。

とはいえ、オールド・ファンを置いてけぼりにすることも、彼らのショーではあり得ないことだ。この“新曲”、実は『TOTO IV〜聖なる剣〜』用に書かれたが発表されなかった曲を21世紀に完成させたものだったりする。ファンが愛してやまないTOTO成分が溢れ出るこの曲、そして続いて披露された初期のヒット曲「ホールド・ザ・ライン」によって、我々は魔法の国の住人となった。

TOTO / photo by 土居政則
TOTO / photo by 土居政則

キーボード奏者のデヴィッド・ペイチが病欠のため、オリジナル・メンバーはスティーヴ・ルカサー(ギター、ヴォーカル)とスティーヴ・ポーカロ(キーボード)のみ。だが、今やバンドの重要な一角を占めるジョセフ・ウィリアムス(ヴォーカル)が熱唱、そしてレニー・カストロ(パーカッション)、シャノン・フォレスト(ドラムス)、シェム・ヴォン・シュロック(ベース)らが見事なバックアップぶりを聴かせる。デヴィッドの代役として参加したドミニク・エグゼヴィア・タプリンは26歳の若さながら、プリンスやスナーキー・パピーとの共演経験のある実力派プレイヤーだ。彼らが一体となって繰り広げるインストゥルメンタル・バトル「ジェイク・トゥ・ザ・ボーン」から大ヒット曲「ロザーナ」へと雪崩れ込む展開は、前半のクライマックスだった。

中盤にはアコースティック・コーナーが設けられ、ちょっとした語りを入れながら初期の「ジョージー・ポージー」、スティーヴ・ポーカロのペンによる「ヒューマン・ネイチャー」(マイケル・ジャクソンがヒットさせた)などをプレイ。これまで何度も武道館公演を成功させてきた余裕ゆえか、都内屈指の大会場のステージがまるで自宅の居間であるような親密な演奏に、観衆も緊張から解き放たれてホッと吐息をつく。

TOTO / photo by 土居政則
TOTO / photo by 土居政則

場内を見回して実感するのは、TOTOのファン層の幅の広さだ。白髪交じりのオールド・ファンから十代の若いリスナーまでが楽しむことが出来るのが彼らの音楽の魅力だが、そんな中でも年季の入ったコアな層がニンマリしたのが後半の“ディープ・カッツ”コーナーだった。

『アイソレーション』(1984)からの「ライオン」はルカサーの弾きまくりギター・ソロを得て、さらに熱気を帯びたヴァージョンに生まれ変わっているし、映画『砂の惑星』(1984)のテーマ曲、さらにはカヴァー・アルバム『スルー・ザ・ルッキング・グラス』(2002)から...という前置きから演奏されたビートルズの「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」には、1曲ごとにどよめきが起こった。

ディープなTOTOワールドにどっぷり浸かったところで、ルカサーが「“あの曲”を聴きたい?」と観客に問う。この日、“あの曲”がどの曲か判らないファンは皆無だったろう。夢のアフリカ大陸に想いを馳せながら、「アフリカ」で盛り上がりはピークに達した。

アンコールは『ザ・セブンス・ワン〜第7の剣〜』(1988)からの「ホーム・オブ・ザ・ブレイヴ」。バンドにとっても観客にとっても完全燃焼ライヴとなった。

驚きを禁じ得ないのは、TOTOが連日、完全燃焼していることだ。今回のジャパン・ツアーでは2月14日の広島公演を皮切りに金沢、福岡をサーキット。東京公演を経て、さらに大阪、盛岡、名古屋、仙台へと向かうことになる。

「TOTOを俺が誇りにするのは、ハード・ワークの産物だからだ」ルカサーはこう語る。デビューから40年、常に前進し続けてきたバンドのライヴは、ロックの喜びに満ち溢れている。

TOTO / photo by 土居政則
TOTO / photo by 土居政則

<TOTO / 40 TRIPS AROUND THE SUN TOUR>日本公演

今後の公演:

- 2月21日(木)

大阪城ホール

18:00 open/19:00 start

- 2月23日(土)

岩手県民会館 大ホール

17:00 open/17:30 start

- 2月25日(月)

名古屋国際会議場センチュリーホール

18:15 open/19:00 start

- 2月27日(水)

仙台サンプラザホール

18:15 open/19:00 start

https://udo.jp/concert/Toto

『40 TOURS AROUND THE SUN』ジャケット(ワードレコーズより発売)
『40 TOURS AROUND THE SUN』ジャケット(ワードレコーズより発売)

『デビュー40周年記念ライヴ〜40ツアーズ・アラウンド・ザ・サン』

2018年3月、オランダ・アムステルダム公演を収めたライヴ映像作品/CD

https://wardrecords.com/products/list.php?name=TOTO

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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