【ライヴ】ジューダス・プリースト 2018年11月28日 TOKYO DOME CITY HALL

Judas Priest / photo by Shigeo Kikuchi

2018年11月28日(水)、ジューダス・プリーストがTOKYO DOME CITY HALLでライヴを行った。

1969年に結成、ヘヴィ・メタルの真髄を貫いてきた鋼鉄神たちの約3年半ぶりとなる日本降臨。最新アルバム『ファイアーパワー』に伴うジャパン・ツアーは札幌→多治見→岡山→大阪とじわじわと地方を制圧、いよいよ帝都・東京へと攻め入ることになった。

この日の公演は、ワールド・ツアーの100公演目というもの。ブラック・サバスの「ウォー・ピッグス」をBGMに“プリーストの十字架”(“悪魔の音叉”とも呼ばれる)が林立するステージにバンドが姿を現すと、満員のオーディエンスは大歓声で彼らを迎えた。

アルバム『Firepower』ジャケット 現在発売中/ソニーミュージック
アルバム『Firepower』ジャケット 現在発売中/ソニーミュージック

1曲目「ファイアーパワー」から、バンドはスピード全開で斬り込んでいく。「ランニング・ワイルド」「グラインダー」「罪業人 Sinner」と情け容赦のないヘヴィ・メタルの連打に次ぐ連打に、観衆はひたすら首を振って、振りまくるのみだ。「切り裂きジャック The Ripper」では1888年、霧のロンドンを恐怖のどん底に叩き込んだ切り裂きジャック事件の当時の新聞や被害者の検死写真なども映し出され、我々のヘッドバンギング・パワーにさらなる燃料を注入することになった。

初期からのメンバーはロブ・ハルフォード(ヴォーカル)とイアン・ヒル(ベース)の2人。加入30年近いスコット・トラヴィス(ドラムス)はもはやバンドに欠くことの出来ない内燃機関となっているが、最近2枚のアルバムに参加したリッチー・フォークナー、そして助っ人参加のアンディ・スニープという2人のギタリストは、新たな殺傷力をもたらしていた。リッチーが随所に挟みこむリードのフィルはプリースト・クラシックスにおいても鮮度を高めていたし、新作からの「ライトニング・ストライク」「ノー・サレンダー」「ライジング・フロム・ルインズ」もさらに刺激的なものに変貌させていた。

Richie Faulkner & Andy Sneap / photo by Shigeo Kikuchi
Richie Faulkner & Andy Sneap / photo by Shigeo Kikuchi

ロブ・ハルフォードのヴォーカルも健在だ。否、むしろ鼓膜をつんざくスクリームは、磨きがかかっている。前屈みになって絶叫、その脳天から汗がジワリと滲んでくる姿は、ジューダス・プリーストの伝統芸となっている。

結成50年を目前とするジューダス・プリーストの音楽が常に攻撃性を失わないのは、彼らが常に“戦って”きたからだ。ロブは曲間のMCで「ヘヴィ・メタル・パワー!ヘヴィ・メタル・パッション!ヘヴィ・メタル・エナジー!ネバーギブアップ!ノー・サレンダー!」と訴えかけてきたが、それはメタル・コミュニティからの宣戦布告だ。

この日は演奏されなかったが、「ユナイテッド」「テイク・オン・ザ・ワールド」などメタル・コミュニティの団結を歌うナンバーにおいても、常に“奴ら”との戦いが主張されている。その“奴ら”とは職場や学校、家庭、そして社会そのものだったりするが、ジューダス・プリーストはぬるま湯の連帯など求めていない。

1973年の映画『エクソシスト』が世界に衝撃を呼んだのは、少女が自分の意志を持ち、親(=社会の規範)の求めるのと異なる“邪悪”な方向に向かっていく姿を描いたからだ。その9ヶ月後にファースト・アルバム『ロッカ・ローラ』を発表したジューダス・プリーストは、それと同時代の反逆性・カウンターカルチャー性を今日でも持ち続けている。“プリーストの十字架”はバンドのシンボルであり、既存の価値観に対するアンチテーゼなのである。

Ian Hill / photo by Shigeo Kikuchi
Ian Hill / photo by Shigeo Kikuchi

ジューダス・プリーストはヘヴィ・メタルという音楽スタイルの頂点に座する存在だが、驚くべきことに、そのヘヴィ・メタルの枠内においても反逆者である。長髪・マチズモ(男性優位主義)がかなりの割合を占めるヘヴィ・メタルにおいて、ツルツル頭でゲイのロブはある意味、反逆者だ。常に反逆し、戦い続けるヘヴィ・メタルの姿勢は、この日のステージでも一貫していた。

緑のドル札を悪魔と見做すフリートウッド・マックの「グリーン・マナリシ」を彼らが長年プレイしてきたのも、決して偶然ではあるまい。カヴァー曲においてすら、戦いの意志が込められているのだ。

ロブは他者のみならず、自分自身にも戦いを挑み続ける。「フリーホィール・バーニング」は近年では2009年、『ラウドパーク』フェスを含む日本公演でも披露されたが、アルバム『背徳の掟 Defenders Of The Faith』(1984)の人間を超えた音域をステージで再現するのは不可能であることをファンに確信させた。

だが、それから9年を経て、あえてこの日もプレイ。もちろんアルバムそのままではないものの、血管が音を立ててブチ切れそうな絶唱で歌いきってみせた。

Scott Travis / photo by Shigeo Kikuchi
Scott Travis / photo by Shigeo Kikuchi

ジューダス・プリーストやブラック・サバスなど、英国バーミンガムがヘヴィ・メタルの原点となった理由について、かつてロブはこう説明していた。

「バーミンガムは鉄鋼業が盛んだから、空気中に鉄粉が舞っているんだ。それを呼吸してきたことで我々は鋼鉄の音楽を演奏するようになった」

それと同様に、鉄粉を呼吸してきたことで、ジューダス・プリーストの戦い続ける鋼鉄の意志が育まれたのかも知れない。「ユーヴ・ゴット・アナザー・シング・カミング」では20世紀バーミンガムの製鉄工場の映像がスクリーンに映し出された。

『ファイアーパワー』EP  32年ぶりの7インチ・アナログ国内盤。4曲入り。レッドヴィニール!/ソニーミュージック 
『ファイアーパワー』EP 32年ぶりの7インチ・アナログ国内盤。4曲入り。レッドヴィニール!/ソニーミュージック 

ロブがバイクに跨がって登場する「殺戮の聖典 Hell Bent For Leather」、大団円の「ペインキラー」でライヴ本編はクライマックスを迎えた。だが、先ほどプレイした「ユーヴ・ゴット・アナザー・シング・カミング」の歌詞にあるとおり、“俺に許してもらえたつもりなら頭がおかしいぜ。まだもう一撃が待っている (you've got another thing coming)”とばかり、彼らはすぐにアンコールでステージに戻ってくる。しかも今回のワールド・ツアーの多くの公演において体調の不安定から出演を辞退してきたグレン・ティプトンを伴って、だ。

デビュー時からのオリジナル・メンバーで数々のメタル・クラシックスを書いてきたグレンを迎えるにあたって、「メタル・ゴッズ」は最も相応しいナンバーだろう。若干痩せたようにも見える彼だが、スマイルを浮かべながらギターを弾く姿は、近い将来の完全復活を期待させるものだった。

さらに「ブレイキング・ザ・ロウ」「リヴィング・アフター・ミッドナイト」の連打で、鋼鉄の祭典は幕を閉じることになった。

クイーンの「伝説のチャンピオン」をBGMに、バンドが観衆に最後の挨拶をするステージ後ろのスクリーンには“THE PRIEST WILL BE BACK”と映し出される。その通り。11月29日(木)にはジャパン・ツアー最終公演として武蔵野の森 総合スポーツプラザ メインアリーナでのライヴが行われる。グレンが出演するかは当日の体調次第ではあるが、ジューダス・プリーストの2018年という瞬間をエクスペリエンスすることは、ヘヴィ・メタルを、ロックを、そして音楽を愛する者すべてにとって、もはや聖なる使命である。闘技場(アリーナ)に集わんことを!

Rob Halford / photo by Shigeo Kikuchi
Rob Halford / photo by Shigeo Kikuchi

【日本公演特設サイト】

CREATIVEMAN PRODUCTIONS クリエイティブマンプロダクション

https://www.creativeman.co.jp/artist/2018/11judasPriest/

【バンド日本オフィシャルサイト】

ソニーミュージック

http://www.sonymusic.co.jp/artist/JudasPriest/

『ファイアーパワー』EP  32年ぶりの7インチ・アナログ国内盤。4曲入り。レッドヴィニール!/ソニーミュージック
『ファイアーパワー』EP 32年ぶりの7インチ・アナログ国内盤。4曲入り。レッドヴィニール!/ソニーミュージック