「本当の親」でなくても子は育つ 子育てが辛ければ相談を

(写真:アフロ)

 さいたま市の小4男児殺害事件で、義父が逮捕された。本当の親ではないのはリスクもあるが、血のつながりがなくとも、努力して子どもを育てている親がいるのも事実。困ったときはどうすればよいのか?

実の親でないのは虐待リスク要因

 報道されて来た過去の虐待事件を見ても、実の親でないことが虐待のリスク要因になるのは確かです。児童相談所で勤務していた時、望んで里親になったけれど、実際里子を預り、生活をスタートした後、大変な苦労をされた里親さんをたくさん見て来ました。子どもがなついてくれない。言うことを聞かない。反抗がひどく、噛みついてきたり、叩いてきたりする。このまま育ててゆくことが出来るのか、子どもとの関係は良くならないのではないか、と不安を抱く里親さんはたくさんいらっしゃいました。

 子どものいる人と再婚して、血のつながりのない子どもを育てる親御さんも、児童相談所に相談にいらっしゃいました。親が必死に努力をしても、子どもが努力してくれない。しつけのために叱ると「本当の親じゃないくせに。」と言われてしまう。

 子どもが反発心を抱くのも当然です。親が再婚したと言っても、新しいお父さん、お母さんになった人は自分にとって他人です。再婚は大人の都合でしかなく、子どもにとってみれば、自分が望んだことではないからです。他人から、色々口うるさく言われれば、反抗もしますし、「なんでこの人にこんなこと言われなきゃいけないんだ。」と子どもは思うのです。子どもの年齢が高ければ高いほど、親を挑発して怒らせるようなことを言います。

 

それでも、愛情を注げる親もいる

 ですが、子どもがなかなかなつかなくても、反抗されても努力を続け、血のつながらない子どもを育てられる親はいます。毎日のように叩かれたり、噛みつかれたりしても、「まだ信頼してくれていないんだと思います。それも当然です。」と耐え続けてくれた里親さんもいました。数か月で、子どもは暴力を振るわなくなりました。その報告をしてくれた時、里母さんは涙を流していました。

 子どものいる女性と結婚して、血のつながらない男の子の父親となった男性は「自分の子どもじゃないんだから、可愛いと思えない時があって当然だと思っています。」と子どもの反抗に耐え続けました。時間はかかりましたが、子どもとの関係はとても良いものになりました。

血のつながらない子どもを愛情を持って育てることが出来る親は確実にいるのです。

耐えるのが辛ければ、相談を

 ですが、子どもが新しいお父さん、お母さんを信頼出来るようになるには、時間がかかります。子どもの「本当の親じゃないくせに」というのは試し行動です。この人は、本当に自分の親になってくれるのか。親でい続けてくれるのか。突然、自分を捨てたりはしないか。本当は愛してなどいないのではないか。子どもは確認したいのです。子どもの方も、不安だからこそ、必死で試しているのです。

 だから大人は耐えるしかありません。時間はかかりますが、試されているんだ、ということを頭で理解し、子どもの挑発に乗らず、動揺せず、「本当の親じゃないくせに。」と言われたら、「それは事実だけど、これからは親子なんだよ。」と伝え、愛情を注ぎ続けるしかないのです。

 でも、それは本当に大変なことです。実の親でも、子どもを愛せない、可愛いと思えない親はいます。血がつながっていなければ、可愛いと思えない、腹が立つ時があるのは当然のことです。自分の努力だけでは、どうにもならない時もあります。

 ですので、血のつながらない子どもを育てることになり、子どもを可愛いと思えない、腹が立って仕方がない、という方は児童相談所などの公的機関にぜひ相談して下さい。児童相談所で働いている時、子どもを愛せないというお母さんやお父さんの相談にたくさん乗って来ましたが、皆さん、相談に来るのにとても悩んだ、とおっしゃっていました。親なのに、子どもを愛せない、なんて言ったら、絶対に叱られるだろうと思った、とおっしゃいました。親なんだから子どもを愛するのは当然だろう、と言われると思っていた、と。

 相談したら叱られるなんてことは絶対にありません。児童相談所などの相談機関は親子関係をサポートするのが仕事です。子どもにどう関わればいいか、親御さんにアドバイスもしますし、子どもの行動の意味を理解するためのアドバイスもします。そして子どもにもアドバイスします。「本当の親子になりたいから、お父さんは頑張っているんだよ。だからここに相談に来ているんだよ。」と、

親の努力を、第三者が伝えることには意味があります。

 とても悲しい事件です。同じような事件が起こらない為にも、今、子育てに悩んでいる親御さんは、すぐに相談に行って下さい。専門家の力を借りて下さい。そして、血のつながりがない親は子どもを愛せない訳ではなく、血がつながっていなくても、素敵な親子関係を作り、子どもに愛情を注いでいる親御さんもたくさんいるのです。

*見出しと本文冒頭を加筆・修正しました。