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『秋篠宮』は苗字か

山下晋司皇室解説者
秋篠宮殿下と眞子内親王殿下 ハンガリーをご旅行 写真:AP/アフロ

9月3日の驚き

 眞子内親王殿下の婚約内定当日、秋篠宮同妃両殿下のご感想が宮内庁から発表された。

「私たちの長女、秋篠宮眞子と小室圭さんとの婚約が内定いたしました」というくだりがある。筆者はこの"秋篠宮眞子"という表記を見て、えっ!と思った。その直後の記者会見でも眞子内親王殿下が「両親が『秋篠宮眞子の父です』、『母です』と自己紹介をしていた」と仰ったので、再度、えっ!

宮号は苗字ではない

『秋篠宮』というのは、文仁親王殿下(礼宮殿下)が結婚による独立の際、天皇陛下から賜った宮号であり、秋篠宮は文仁親王とイコールである。よって『秋篠宮眞子』だと『文仁親王眞子』ということになる。

 皇族には苗字はなく、紀子妃殿下は『秋篠宮紀子』ではなく、正式には文仁親王の妃である紀子殿下ということで『文仁親王妃紀子殿下』となる。報道などでは『秋篠宮妃紀子さま』、『紀子妃殿下』などといった表記になる。眞子内親王殿下も同様に『秋篠宮眞子』ではなく、『秋篠宮家の長女眞子さま』、『秋篠宮家の眞子さま』などと表記される。

 ただ、学校などで苗字があったほうがいい場合も当然あり、その場合は便宜上『秋篠宮眞子』と呼ばれることはある。ただし、あくまでも便宜上であり、国や皇室の正式な文書では使わない。

今後は苗字として使う?

 今回のご感想の内容は当然、宮家を担当する宮内庁の宮務課長、宮務主管(部局長級)、宮内庁次長、宮内庁長官も承知のことだろう。宮内庁は今後、正式な文書でも宮号を苗字のようにして使うことにしたようである。

 筆者は書籍、テレビ番組などの監修も行っているが、『秋篠宮眞子』といった表記はすべてNGにしてきた。これは秋篠宮家に限ったことではない。三笠宮家のご長男で平成24年に薨去された寛仁親王が生前"三笠宮寛仁"といわれ「私は三笠宮ではない」と怒ったという話をされていたが、今後は、この表記でもOKとせざるを得ない。『常陸宮華子さま』、『三笠宮百合子さま』、『高円宮久子さま』、『三笠宮彬子さま』などもすべてOKだろう。もっとも、筆者自身はこういう表記を使うつもりはないが。

意図するものは

 仮に宮号を苗字として使うとしても、自分の娘をフルネームで表記するだろうか。『私たちの長女、秋篠宮眞子』ではなく、『私たちの長女、眞子』ではないだろうか。小室さんに宮邸で自己紹介するときも『秋篠宮眞子の父』ではなく『眞子の父』ではないだろうか。

 恐らく秋篠宮殿下、宮内庁に何か意図するところがあるのだろう。「知りませんでした」、「間違いました」、「ちゃんと見ていませんでした」ということは考えられない。

皇室解説者

昭和31年 大阪市生まれ、関西大学卒。20数年の宮内庁勤務後、平成13年に退職。宮内庁では昭和63年~平成7年まで長官官房総務課で報道を担当。昭和天皇の崩御・大喪の礼、平成の即位の礼・大嘗祭、秋篠宮殿下の結婚、皇太子(現在の天皇陛下)の結婚などの諸行事を報道担当として経験。平成時代の天皇皇后の中国訪問、米国訪問及び皇太子(現在の天皇陛下)のモロッコ・英国訪問に報道担当として同行。宮内庁退職後は出版社役員を経たのち独立。独立後は、BSテレ東・テレビ東京「皇室の窓スペシャル」の監修のほか、週刊誌・テレビなど各メディアでの解説、記者勉強会の講師、書籍・テレビ番組の監修、執筆、講演などを行っている。

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