夫が出て行く散らかり部屋。毎日カレーの片づいた家。

片づけ上手

料理上手

片づけ下手

料理下手

片づけ下手と料理上手

片づけ上手と料理下手

私は夫婦関係を専門に扱うカウンセラーではないけれど、実に多くの夫婦問題のお悩み相談も受けてきた。それは、片づかない家で悩む妻たちが、同時に片づけられない夫婦問題を抱えている例がとても多いからに他ならない。つまり、家が片づかないという訴えに耳を傾けていると、いつの間にかその訴えが夫への不平不満愚痴、あるいは強烈な批判怒りにすり替わっていくのですね。

いえ、すり替わっていくと言うよりは、もともと、家の荒み具合と夫婦関係の荒み具合はリンクしているもの。相談者は心のどこか奥底で、夫婦の問題が横たわっていることに気づいているようで、でも、それに向き合うことを避けているふしがある。だからなのか、家の片づけ問題という人に相談しやすい部分から入ってこようとするのかもしれない。

ところで、片づけに限らず掃除洗濯料理といった家事全般を夫婦でどのように担っていくかという問題は、ひとまず脇に置いておくとして。家事をもとにジェンダー論議をする機会はいずれあるとして。夫が妻に期待する家事、いったいどちらに軍配が上がるのかは、確かめてみたいと思う。

料理上手

片づけ上手

もちろん、どちらも上手であれば、それは自慢の奥さんを持つ夫として冥利がある。男性は社会的な地位もさることながら、家事上手な妻の存在は大いに自分の評価を上げるものだと見なしている。逆に、どちらも下手な妻であれば、恥ずかしさを自分に覚えるものでもあるらしい。そう、妻に対してではなく夫である自分自身に。

そして、残念ながら、この両方ともが上手という妻が稀であるとしたら、夫は料理上手と片づけ上手、どちらの妻が喜ばしい存在だと思うものなのだろう。

片づけ下手

料理下手

あるいは、片づけと料理どちらが下手な妻を、夫はより残念に思うのだろう。

さてさて、こんな事をつらつらと書き綴っているのは、以前相談を受けた女性の姿が忘れられないから。高校教師をしているこの女性は、当初、自分自身のモノの溜め込み癖と捨てられない性分をそれなりに嘆いていたのだけれど、実は、夫が自分を置いて家を出て行ってしまったことにとんでもない怒りを溜めていた。しかも、その夫の最後の言葉が、「こんなモノで溢れかえった荒れた家に、もうこれ以上はいられない」だったと言うのだ。

けれど、この女性教師は、夫が家を出ていった理由が「片づいていない荒れた家」ということを認められないでいた。もしもそれを認めたとしたら、自分自身も危惧している溜め込み癖片づけ下手で、もっと悩み苛(さいな)まれることになるだろうから。

この女性が料理上手であったかは、今となっては確かめようもない。けれど、たとえ料理上手であったとしても、それで夫を繋ぎ止めることができないほどに家は溜め込みハウスと化し、夫はそこに自分の居場所を見出せなくなった、失ったと思ったのだろう。

また、こんな例もある。片づけられない娘を持つ母。娘はすでに結婚して独立した所帯を構えてはいるのだけれど、そのあまりに散らかった家の状態に怖れをなした母親が、「いつかこの娘は、旦那さんから離婚を言い渡されるに違いない」と、娘を伴って私の元へ訪れた。

この娘さん、慣れない孤独な育児に必死で、どの部屋も片づけられない上に台所もくちゃくちゃ、自分も買い溜めてあるレトルトカレーが毎日やっとの食事だという。そして、夫は仕事が理由の深夜帰宅か、出張で家を空けることが多いのだそう。当然、夫は家庭を大切にしない存在として恨まれてもいる。

そうか、私の仕事ゆえなのか、片づいていない家、モノでいっぱいの荒れた家のせいで、夫が家に帰りたがらず仕事ばかり、あるいは、夫の家出騒動が持ち上がっているのは、よくよく遭遇するケース。ところが、妻が毎日カレーしか作らないという理由で夫が家を出て行ったケースには、お目にかかったことはない。

さて、話を冒頭に戻そう。私は片づけの悩み問題とともに、なかなか家に帰ってこない仕事三昧の夫、家を空けてばかりの家庭を顧みない夫を持つ妻の不平不満愚痴と怒りを聞いてきた。私も同じ主婦の立場として、孤独な状態で家事と育児を担う妻たちの心情は理解ができる。

けれど、夫と妻、どちらに非があるかを判定しても仕方がない。責任の所在が、夫と妻どちらなのかを追及しても、それは解決につながる道ではない。なぜなら、私たちは素直に自分の非を認めることは得手ではなく、これらの判定や追及がかえって諍いの度を深め、関係をもっとこじらせることになるのだから。

つまり、妻である自分が夫婦関係の再構築を目指すのであるならば、目の前に展開している家の状態をよくよく見渡してみること。そして、自分に尋ねてみること。この散らかった空間に夫が早く帰りたいという気持ちになるかどうか。このモノが溜め込まれた空間に夫が居たいと思うかどうか。

そして、もしも自分が料理下手の妻ならば、まずは、レトルトカレーを片づいた部屋で食べるのか、散らかった部屋で食べるのか、どちらを望むかを夫に尋ねてみることが、夫婦関係改善のスタートとなるのです。

いかがでしょう?