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大粒のぶどうによる窒息を予防する その15 -シール利活用の促進-

山中龍宏小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長
Safe Kids Japanが制作したミニトマトとぶどうのシール。筆者撮影。

 前回の記事でも触れたが、今からちょうど1年前の2020年9月7日、東京都八王子市の私立幼稚園で、4歳男児が給食に出されたぶどうをのどに詰まらせて死亡した。「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン【事故防止のための取組み】」に「給食での使用を避ける食材」と明記されているにもかかわらず、ピオーネが出されて死亡した。この事実によって、ガイドラインは、教育・保育の現場には伝わっていないことが明らかになり、さらに一般の人も、大粒のぶどうやミニトマトの危険性について知らないことがわかった。

 そこで、Safe Kids Japanで、ぶどうやミニトマトの包装に貼ることができるシールを作ることを思いついた。ミニトマトやぶどうを4分割にしたイラストと「4才までは4つに切って」と書かれたシールを作成し、啓発活動を開始した。新聞記事などで取り上げていただき、また実際の商品の包装にも貼りつけてもらうことができた。

 2021年7月、Safe Kids Japanの会員を通して、ある子育て支援団体の方からこのシールを活用したいとの相談があった。「おやこ農業&収穫体験NORA(ノーラ)」というこの団体は、「育てる・食べる・学ぶ」をコンセプトに、滋賀県守山市を中心に活動している非営利団体である。ミニトマトの収穫体験なども行なっており、その際にこのシールを活用したい、できればシールにNORAのロゴを入れたオリジナル版を作りたい、という話だった。

NORAとのコラボレーション版シール。筆者撮影。
NORAとのコラボレーション版シール。筆者撮影。

 そこで、この件についてSafe Kids Japanメンバーとデザイナーで検討した。このシールは「4つに切って与える」ということを周知することが目的なので、このような依頼には積極的に協力しようということになった。

 Safe Kids Japanが作成したオリジナルのイラストに、それぞれの団体のロゴマークを入れてもらうこと、デザイナーに支払うデザイン料が必要になることなどを定め、ロゴマークのデータ提供方法については「ガイドライン」としてまとめた。

ロゴマークのデータ提供方法についてまとめた「ガイドライン」。筆者撮影。
ロゴマークのデータ提供方法についてまとめた「ガイドライン」。筆者撮影。

 詳しくは、Safe Kids Japanのホームページを参照していただきたい。いろいろな場で、このシールが活用されることを期待している。

 今年も、大粒のぶどうが出回る時期になった。乳幼児に大粒のぶどうを与えるときは「4つに切って与える」ことを忘れないでいただきたい。そして、周りの人にも、その情報を提供していただきたい。できれば、ぶどうの包装袋にSafe Kids Japanが作成したシールを貼っていただきたい。

 今年は、昨年のような大粒のぶどうによる子どもの窒息死が起こりませんように・・・心から願う次第である。

小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長

1974年東京大学医学部卒業。1987年同大学医学部小児科講師。1989年焼津市立総合病院小児科科長。1995年こどもの城小児保健部長を経て、1999年緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。1985年、プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことから事故予防に取り組み始めた。現在、NPO法人Safe Kids Japan理事長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員、国民生活センター商品テスト分析・評価委員会委員、日本スポーツ振興センター学校災害防止調査研究委員会委員。

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