チャイルドシート使用率の報道姿勢を比較する

(写真:アフロ)

 6歳未満の子どもを自動車に乗せる場合には、2000年以降、チャイルドシートの使用が義務付けられている。警察庁と日本自動車連盟(JAF)は合同で、毎年チャイルドシートの使用率と取り付け状況の調査を行っている。

 2019年6月に行われた調査結果が8月21日に発表された。その結果、全国平均の使用率は前年比で+4.3%の70.5%となった。適切な取り付け割合は47.6%、適切な着座割合は42.2%であった。その報道記事の地方版を読んだ。

使用状況を伝える2つの記事

県内 チャイルドシート3割が使わず/富山

 2019年9月3日19:11配信 チューリップテレビ

 県内のチャイルドシートの使用状況について、使用が義務付けられている6歳未満の子どものうち3割近くがチャイルドシートを使用していなかったことがJAFと県警の調査でわかりました。

 この調査はJAFと県警が今年6月に富山市ファミリーパークと魚津総合公園で、6歳未満の子の保護者244人を対象に実施したものです。

 その結果、県内のチャイルドシートの使用率は72.5%で、全国平均を2ポイント上回ったものの3割近くの人が使用していなかったことがわかりました。

 具体的には、大人が子どもを抱きかかえて乗車していたり、大人用のシートベルトを子どもにつけているケースが多かったということです。

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もう一つの報道記事を見てみよう。

チャイルドシート使用率、全国3位

 2019年9月2日10:36配信 山形新聞 

 本県のチャイルドシート使用率は全国3位で、10年前の1.7倍―。日本自動車連盟(JAF)などが今年行った調査で、本県は6歳未満児の使用率が84.4%と全国でも高水準だったことがわかった。一方、年齢が上がるにつれて使用率が低下するのも実情。

(途中略)

 使用率に関する県内の調査は今年6月、山形市と三川町の大型ショッピングセンター2カ所で行った。対象は、乳児から6歳未満までの212人。使用率は2009年の同じ調査で48.5%にとどまっていたが、今回は大幅に上昇して8割を超える結果となった。着用促進の啓発活動や講習会を継続してきたJAF、県警などの努力が実を結んだといえる。

(以下略)

                         

 警察の発表データの紹介という、誰もあまり注目することのない地方版の記事を2つ並べてみた。文章のすべてを読めば、おおよそ伝えたいことは同じ内容であるが、表題のつけ方と、それから受ける印象が違うと私は感じた。

 1番目の記事は、チャイルドシートを使用していない子どもがいることに注目し、2番目の記事は、自分のいる県は全国的に見て使用率が高い、すなわち子どもの安全に配慮している保護者が多い、と伝えているように感じた。

記事で伝えるべきことは何か?

 本来、チャイルドシートの使用率は100%であるべきである。1番目の記事は、そこに着目して記事を書いている。文面では「3割いる」と書かれているが、チャイルドシートを使用していない子どもが「3割もいる」という意味に読める。「も」という一字を入れるだけで意味が異なってくる。「も」が入ると危機意識を強調することになる。「も」が入らないと、淡々と事実を事実として伝えていることになり、危機意識はあまり感じない。

 2番目の記事は、「全国3位」と順位に注目している。本来、安全を確保するために使用する器具の使用率は100%であるべきであり、前年に比べて、平均で4%上昇して70%に達したと言っても不十分である。100%は無理としても、アメリカのカリフォルニア州ではチャイルドシートの使用率は95%であり、それと比べれば、わが国の状況はなお不十分である。

 報道は、事実を事実として国民に伝えるという重要な役割があるが、少なくとも安全のための法規制が行われていることに関しては、危機意識を高める「3割もいる」と報道する方が、社会正義、安全のために必要だと私は考えている。