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祇園祭 いよいよ最終章へ

山村純也京都の魅力を発信する「らくたび」代表
屏風飾りの吉田家 (写真は以後全て著者が撮影)

祇園祭は疫神怨霊を鎮める例祭「御霊会(ごりょうえ)」が起源で、もともと「祇園御霊会」、「祇園会(ぎおんえ)」などと呼ばれていました。貞観11(869)年、全国的に疫病が流行した際、平安京の庭園である「神泉苑」に66本の矛(ほこ)を立て、八坂神社から素戔嗚尊ら三柱を神輿に乗せて送り、疫病退散を祈ったのが、祇園祭の始まりとされています。

 現在33基の山鉾が都大路を絢爛豪華な姿で巡行し、祇園祭の1つのハイライトを演出しますが、前祭として17日に23基が巡行して「神幸祭」で神輿を四条寺町のお旅所に迎え、後祭として24日に10基が巡行して「還幸祭」にて八坂神社に送ります。つまり山鉾巡行とはこの神輿が動く前の露払いであり、町を清める大切な行事ということになります。2014年から24日の後祭が復活し、本来の形に戻ったわけですが、今年の後祭の見所は2022年に完全復興が決まった鷹山の唐櫃巡行。さらに2014年に復興を遂げた大船鉾も艫の高欄が今年は朱塗りとなるなど、年々美しく豪華に発展しています。24日の巡行の際には、あとに続く「花傘巡行」も楽しみのひとつ。かつて17日に合同で33基全てが巡行していた際に、24日に何もないのは、、ということで始まった行事で、花街の方を中心とした花傘をかぶった女性がずらりと並んで歩き、なんとも涼しげな情緒を感じさせてくれます。

 後祭は本日の宵山も、前祭と違って出店も出ず、訪れる観光客の姿も少なく、昔ながらの提灯の明かりを中心とした光の中で幻想的に山鉾や町会所が照らし出され、そこにどこからともなく祇園囃子が聞こえてくるという、昔ながらの祇園祭の雰囲気を味わえる絶好の機会です。冒頭の写真にもある家宝の屏風などを飾る家も数軒出ますので、ぜひ訪れてみてください。お薦めは鯉山の会所飾り、ご神体の左甚五郎作の鯉も雄大で素晴らしいですが、なんといっても必見は16世紀に制作されたベルギー製のタペストリーで、重要文化財に指定されています。同じく絵画では八幡山の海北友雪作の「祇園会後祭山鉾巡行図」も色鮮やかで後祭の様子が生き生きと描かれています。ご神体では浄妙山がお薦め。24日の巡行当日は、筒井浄妙の頭に一来法師が手をついて前に躍り出る瞬間の姿が再現されますが、宵山期間は二人仲良く並んで見ることができます。本番当日では遠目になって見にくいご神体を間近でゆっくりとご覧ください!

京都の魅力を発信する「らくたび」代表

1973年、京都生まれ。立命館大学在学中にプロの観光ガイドとして京都・奈良を案内。卒業後は大手旅行会社に勤務。2006年4月、京都観光を総合的にプロデュースする「(株)らくたび」を創立。以後、ツアープロデューサー、ツアー講師として活躍。2007年3月に「らくたび文庫」を創刊。現在、NHK文化センター、大阪シティーアカデミー、ウェーブ産経、サンケイリビング新聞社の講師、京都商工会議所の京都検定講師も務める。著書・執筆に『幕末 龍馬の京都案内』、『京都・国宝の美』、『見る 歩く 学ぶ 京都御所』(コトコト)など。京都検定1級取得。

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