Amazon「やらせレビュー」からマスク高額転売まで、事件が浮き彫りにするネットの課題

(写真:ロイター/アフロ)

 相変わらずネット通販、とくにAmazonのユーザーレビューにおける不正行為が改善されません。さすがにひどすぎるので、どういう形で不正が行われているのかについて細かくレポートするようなメディア報道もこのところ増えてきました。

潜入取材!中国やらせレビュー工場(NHKニュース 19/10/2)

アマゾン「やらせレビュー」の首謀者を直撃、楽天も餌食に(日経ビジネス 20/1/20)

Amazon.co.jpに蔓延る不正レビュー問題。結局のところ損する人は誰?(Engadget日本版 20/1/28)

 これだけ広く報じられればユーザーももう少し慎重にネット通販を利用するようになることを願いたいところです。しかし、それでもなお、あまりにも見え透いた情弱商法の類にひっかかってしまう人は昔もいまも絶えないということを考えると、問題の根源は人々の消費行動そのものにあって、不正レビューを仕掛けてくるような輩はそうした人々の欲求にうまく寄り添っているだけなのかもしれないというちょっとした諦観を覚えなくもありません。

 ジャーナリストの本田雅一さんも、先日YouTubeでAmazonマーケットプレイスの問題を取り上げて解説を加えており、Amazon側も対策を強めている割に一向に解決する傾向にないのは気になるところです。

【危険がいっぱい?】Amazonマーケットプレイスの闇が深い【火事で自宅全焼、幼児誤飲で死亡事故も】(YouTube 本田雅一 20/2/7)

 また不正レビューなどしなくても、需要が極端に高まればぼったくり商売が成立するという事例はいくらでも目の当たりにするわけですが、今もこういう事態が起きております。

マスク1箱4万円超え ネット通販で高騰 新型肺炎影響(産経新聞 20/1/30)

通販大手のアマゾンジャパンでは、通常は数百円から千円程度で売られている箱入りのマスクが、数千円程度の値段が付けられている。中でもアイリスオーヤマのサージカルマスク60枚入りは、7事業者が出品しているが最低価格でも4万2千円前後の値が付いている。楽天市場やヤフーショッピングなど他の大手通販サイトでも同様の事態が生じている。

出典:産経新聞

 さすがに業を煮やしたメルカリなども、高額出品されるマスクは陳列自体を削除するなどの対策を打ち出すようになりました。ヤフオク!でもきめ細やかな対応を発表し、まずはこれでいくらか事態が改善することを願うばかりです。

ヤフオク!ガイドライン細則の改定について(マスクの出品について)(ヤフオク!)

B.出品禁止物

 44. 災害などの緊急事態において、供給不足により人の身体・生命に影響がある物品を不当な利益を得る目的で入手し、出品していると当社が判断する出品

出典:フオク!

マスク1箱「5万円超」も…高額販売が後絶たず、メルカリが出品削除(読売新聞オンライン 20/2/6)

 実際には、これらの高額転売そのものは背どりの一種で、需要に供給が追い付かないときには俗に「転売ヤー」と呼ばれる行為が増えるのも資本主義の特徴です。個人でやっている限り、実際には適法以外の何者でもないので、本来は「そういう高額転売はマナー違反です」ぐらいのものであったはずが、緊急時になると削除やアカウント停止で強制排除する方向に行くのは仕方のないことかもしれません。

 上記記事で取り上げられているサージカルマスクというのはあくまでもマスク装着者が発する飛沫の拡散を防ぐために用いるものであって、マスクそのものにはウイルスの侵入・感染を防止できるような機能はありません。つまりこの手のマスクをしていてもウイルスから逃れることはほぼ不可能ということです。

帰国の3人感染 新型肺炎“マスクで感染予防”は正しい?――医師がツッコむ「6つの誤解」(文春オンライン 90/1/30)

2010年にフランス、2011年にタイの研究者が、家庭内でのインフルエンザの感染を減らすため、マスク着用を推奨したが、効果はなかったと報告している。

(中略)

一般人のマスク着用については、まだ十分なエビデンスがあるとは言えないが、多くの医師は、ほとんど効果はないと考えている。

出典:文春オンライン

 ネット上ではこうしたマスクの予防効果に関する情報が比較的容易に見つけられるはずなんですが、なぜかこういう情報はあまり広く拡散・共有されないような気がします。むしろ、ウィルス対策としてマスクをしていなければ安心できないというレベルにまで来ている可能性もありますし、また、満員電車などの密接な接触が不可避な状況でマスクをしていない人の咳払いが一斉に乗客の目玉を集める現象を考えると感染拡大を防ぐ効果が借りに乏しいとしてもマスクを求める心情もまた分からないでもないと言ったところでしょうか。悩ましいところです。

 この数日でマスクの買い占めという事態が各所で起きているようですが、まさに社会的パニックで人々が正確な判断を出来なくなっているという兆候なのでしょうか。通常のマスクは「自らの口から唾液を飛散させるのを妨げ、周囲にうつさないようにするためだ。つまり、エチケットということ」(文春オンライン)でしかないので、店頭などで他人を押しのけて確保したり法外なプレミアム価格を支払ってまでして入手したりする必要はないということを認識すべきだと感じます。もちろん、ご自身に発熱など何らかの自覚症状があって、それがコロナウイルスでなくともインフルエンザウイルスやマイコプラズマ肺炎など飛沫感染の疑いがあるようであれば、大事な人や周囲を守るためにもマスクをする、というのは必要だとも言えます。

 現状での新型コロナウイルスに関しては、まずは冷静に厚生労働省のウェブサイトにある情報に目を通してみるのが良いのではないかと思います。

 また、厚生労働副大臣の橋本岳さんもご自身のホームページでも最新の状況を説明されています。いまやメディア経由だけでなく、官公庁や政治家本人がしっかりと情報開示をしていく時代になってきたのだなあという感慨も深くなります。

新型コロナウイルスに関するQ&A(厚生労働省)

新型コロナウイルス感染症の現状と見通しについて(2/6晩現在) http://ga9.cocolog-nifty.com/blog/2020/02/post-38ea26.html

 確かに「感染症が急拡大して、中国では死者が続出している」と報じられれば、誰もが不安に思い、身構えることは当然です。しかしながら、そういう不安に思う状況でも正しいと思われる情報もまた、然るべき場所から大量に発信されており、そういう情報に辿り着けるのかが本来のリテラシーだとも言えます。

「「新型肺炎」日本の対策は大間違い」、は大間違い(楽園のむこう側 岩田健太郎 20/2/5)

「どんどん亡くなる印象ない」「一見、無症状でも症状ある可能性」 新型肺炎専門医語る(毎日新聞 20/2/5)

 感染症を含めた公衆衛生の現場では、今回の中国・武漢発のコロナウイルス禍は、現段階では仮に感染が拡大したとしても適切な処置を取っている限りそこまで重大な事態には陥らないのではないか、という見解が広がってきているのもまた事実です。

 一方で、中国からの旅行者を入国させない措置を取る国や地域が拡大、さらに中国だけでなくアジア全体からの入国の制限に踏み切る国も出ています。そればかりか、人権先進国であったはずの欧州・フランスではアジア系住民に対して差別が広がるなど、単純に感染症問題とは別に私たちの社会や理性を揺さぶるような事態に陥っているのは特筆するべき点ではないかと思うのです。

新型肺炎 アジア系住民への差別的な言動が問題に フランス(NHKニュース 20/2/1)

 実際のところ、私たちも福島第一原発事故で、福島県民や福島の産品などに対する根拠のない差別や風評被害を広げてしまった教訓があります。確かにコロナウイルスの発症は中国・武漢であったかもしれませんが、感染症の拡大を抑える対策をきちんと講じながらも、武漢から来た人たちや、中国人などへの直接の差別、排除に繋がらないよう行動していかなければならないのではないか、と改めて思います。