携帯電話料金を「最大4割値下げ」した負担を解消するためにショップのサポート業務が有料化される話

(写真:長田洋平/アフロ)

 官房長官・菅義偉さんの口から飛び出した「携帯電話料金は最大4割程度値下げできる余地がある」発言をはじめとしたここ数年の政府による強い働きかけのおかげで、国内携帯キャリア各社の料金プランや携帯SIMロック運用、端末販売方法などに関して大きな変化がもたらされました。菅さんはいったい誰に吹き込まれて、このような携帯電話料金を引き下げることで世帯の可処分所得の増大につながると信じてしまったのかは良く分かりません。ただ、この変化が本当に国民のメリットにつながっているのかどうか、その評価についてはどの視点から判断するかで微妙に変わってきそうで、少なくとも携帯キャリア各社にとっては経営的にネガティブなインパクトが生じたのは間違いないでしょう。

 とくに総務省が推し進めた通信料と端末代金の切り離しを求める「分離プラン」の影響は、携帯キャリアビジネスの川下となる販売代理店の経営を直撃することが避けられそうもなく、こうした状況を補填するため、これまで無償で提供されてきたケータイショップにおけるサポート業務の一部を有償化しようという動きがあります。もちろん、いままで無償だったことが当たり前になってしまった弊害があるのもまた事実で、是非の判断はなかなかむつかしいものがあります。日本の「サポートは無料」文化って、ある意味でタダで当たり前だからサポートでは何を言ってもいいのだとなりやすい傾向が強いようにも思うんですよね。

ケータイショップ店員はボランティアではない、ドコモが一部サポート有償化へ(日経xTECH 19/10/9)

NTTドコモが検討しているのは、他店舗で購入した「持ち込み端末」に関するサポートの有償化である。

(中略)

サポートの有償化についてはソフトバンクも前向きに検討している。

出典:日経xTECH

 ドコモとソフトバンクが導入することになれば、これまでの携帯キャリア業界の常として、KDDIも後追いする可能性はかなり高そうです。ドコモは今年の12月から導入を検討しているとあるので、来年には各社が横並びでサポート有償化を開始しつつ、新規契約やMNP利用時には期間限定でサポート無償キャンペーンなどを始めたりするのかもしれませんね。

 今後有償化が想定されるサポート業務には、サードパーティのアプリ・ウェブサービス・SNSなどのアカウント登録や使い方の相談対応みたいなものも含まれており、このあたりをこれまで無償でやってきたのが却って良くなかったのではないかと思わなくもありません。もちろん、スマホ扱いの慣れない高齢者などに売るために、あえて無償サービスにすることで客寄せとして機能していた部分もあるでしょうから、そこが有償になったらはたして顧客は離れてしまわないのかどうかは店舗ごとで事情がかなり変わってきそうに思えます。

 日経xTECHの記事では「シニアには酷かもしれないが、有償化で自ら学ぶようになれば、リテラシーの向上にもつながってよいのではないか」というかなり強気の論考が披露されていますが、過疎化が進みお年寄りばかりが住むような地域にとってこれはかなり酷な話に見えます。なんせ、銀行のATMの利用すらも「対人サービスでないと銀行と取引している気になれない」と反対する高齢の預金者の問題が続発するぐらいですから、ましてやスマホをやという気も致します。で、そういう地域では一見無償であるかのような美味しい話で客を釣っておいて蟻地獄のような有償サポートに囲い込む商売が登場する可能性も想像できます。以前にもどこかでそういう話がありましたよね。

PCデポ 高額解除料問題 大炎上の経緯とその背景(ヤフーニュース個人 ヨッピー 16/8/23)

 気になるのは、サードパーティ製アプリやサービスの使い方が分からないのを有償サポートで補うのは仕方ないとして、現在政府はキャッシュレス決済やさらにはマイナンバーに付随した施策(主にマイナンバーカード関連)のスマホ展開を推進しているわけでして、そのあたりの使い方が分からないというユーザー層へのサポートがすべて有償化されてしまうと、低価格や無料を謳いつつ個人情報や金銭データの詐取を目論む輩も出てきそうでそこがなかなか怖いなと感じるわけです。もちろん、これまでもそうした悪質なことをやっているケータイショップはあったことでしょうから何を今さら心配しても仕方ないだろうと言われればそれまでですが、今後はさらに落とし穴が増えてしまいそうな嫌な予感がしてしまいます。

 昔も情弱を狙った悪質な詐欺行為はいくらでもありましたが、スマホは個人情報の山でしかもダイレクトかつデジタルにデータをそのままぶっこ抜くことが可能であるあたり、昔と同じだから仕方ないとは言えないと思うんですよね。

 日本の社会をキャッシュレスにする、データドリブンの経済へ移行すると言いつつ、その足元ではまだスマホ操作が万全ではないユーザーの置き去り論が出ていることは通信業界の喫緊の課題です。ぶっちゃけ、菅さんが言う「家計における携帯電話料金など通信費の削減」よりも手前にある重大な問題じゃないかと思うのですが。